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旧刑法(明治13年刑法)の全文

刑法(通称「旧刑法」)

(明治13717日太政官布告36号)【註 明治13年は西暦1880年】

施行 明治1511

改正 明治31年法11(民法施行法。(削除)を付した条文の全部または一部を削除した)

廃止 明治41101日 明治40年法45

 
 第一編 総則

  第一章 法例

第一条 凡(およそ)法律ニ於テ罰ス可キ罪別(わかち)テ三種ト為ス
一 重罪(じゅうざい)
二 軽罪(けいざい)
三 違警罪(いけいざい)
第二条 法律ニ正条ナキ者ハ何等ノ所為(しょい)ト雖(いえど)モ之ヲ罰スルコトヲ得ス

第三条 ①法律ハ頒布以前ニ係ル犯罪ニ及ホスコトヲ得ス

②若(も)シ所犯(しょはん)頒布以前ニ在テ未タ判決ヲ経サル者ハ新旧ノ法ヲ比照シ軽キニ従テ処断ス

第四条 此刑法ハ陸海軍ニ関スル法律ヲ以テ論ス可キ者ニ通用スルコトヲ得ス

第五条 ①此刑法ニ正条ナクシテ他ノ法律規則ニ刑名(けいめい)アル者ハ各(おのおの)其法律規則ニ従フ

②若シ他ノ法律規則ニ於テ別ニ総則ヲ掲ケサル者ハ此刑法ノ総則ニ従フ

 第二章 刑例

   第一節 刑名

第六条 ①刑ハ主刑及ヒ附加刑ト為ス

②主刑ハ之ヲ宣告ス

③附加刑ハ法律ニ於テ其宣告スル者ト宣告セサル者トヲ定ム

第七条 左ニ記載シタル者ヲ以テ重罪ノ主刑ト為ス

一 死刑

二 無期徒刑(とけい)
三 有期徒刑
四 無期流刑(りゅうけい)

五 有期流刑

六 重懲役

七 軽懲役

八 重禁獄(きんごく)

九 軽禁獄

第八条 左ニ記載シタル者ヲ以テ軽罪ノ主刑ト為ス

一 重禁錮

二 軽禁錮

三 罰金

第九条 左ニ記載シタル者ヲ以テ違警罪ノ主刑ト為ス

一 拘留

二 科料

第十条 左ニ記載シタル者ヲ以テ附加刑ト為ス

一 剥奪公権

二 停止公権

三 禁治産(きんちさん)(削除)

四 監視

五 罰金

六 没収

第十一条 刑ヲ執行シ及ヒ犯人ヲ検束スル方法細目ハ別ニ規則ヲ以テ之ヲ定ム

   第二節 主刑処分

第十二条 死刑ハ絞首ス但規則ニ定ムル所ノ官吏臨検シ獄内ニ於テ之ヲ行フ

第十三条 死刑ハ司法卿(きょう)ノ命令アルニ非サレハ之ヲ行フヲ得ス
第十四条 大祀(たいし)令節国祭ノ日ハ死刑ヲ行フコトヲ禁ス

第十五条 死刑ノ宣告ヲ受ケタル婦女懐胎ナル時ハ其執行ヲ停メ分娩後一百日ヲ経ルニ非サレハ刑ヲ行ハス

第十六条 死刑ノ遺骸ハ親属(しんぞく)故旧(こきゅう)請フ者アレハ之ヲ下付ス但式ヲ用ヒテ葬ルコトヲ許サス
第十七条 ①徒刑ハ無期有期ヲ分タス島地(とうち)ニ発遣シ定役(ていえき)ニ服ス

②有期徒刑ハ十二年以上十五年以下ト為ス

第十八条 徒刑ノ婦女ハ島地ニ発遣セス内地ノ懲役場ニ於テ定役ニ服ス

第十九条 徒刑ノ囚六十歳ニ満ル者ハ通常ノ定役ヲ免シ其体力相当ノ定役ニ服ス

第二十条 ①流刑ハ無期有期ヲ分タス島地ノ獄ニ幽閉(ゆうへい)シ定役ニ服セス

②有期流刑ハ十二年以上十五年以下ト為ス

第二十一条 ①無期流刑ノ囚五年ヲ経過スレハ行政ノ処分ヲ以テ幽閉ヲ免シ島地ニ於テ地ヲ限リ居住セシムルコトヲ得

②有期流刑ノ囚三年ヲ経過スル者亦(また)同シ
第二十二条 ①懲役ハ内地ノ懲役場ニ入レ定役ニ服ス但六十歳ニ満(みつ)ル者ハ第十九条ノ例ニ従フ
②重懲役ハ九年以上十一年以下軽懲役ハ六年以上八年以下ト為(な)

第二十三条 ①禁獄ハ内地ノ獄ニ入レ定役ニ服セス

③重禁獄ハ九年以上十一年以下軽禁獄ハ六年以上八年以下ト為ス

第二十四条 ①禁錮ハ禁錮場ニ留置シ重禁錮ハ定役ニ服シ軽禁錮ハ定役ニ服セス

②禁錮ハ重軽ヲ分タス十一日以上五年以下ト為シ仍ホ各本条ニ於テ其長短ヲ区別ス

第二十五条 定役ニ服スル囚人ノ工銭ハ監獄ノ規則ニ従ヒ其幾分ヲ獄舎ノ費用ニ供シ其幾分ヲ囚人ニ給与ス但現役百日以内ハ給与ノ限ニ在ラス

第二十六条 罰金ハ二円以上ト為シ仍(な)ホ各本条ニ於テ其多寡(たか)ヲ区別ス
第二十七条 ①罰金ハ裁判確定ノ日ヨリ一月内ニ納完セシム若シ限内納完セサル者ハ一円ヲ一日ニ折算(せっさん)シ之ヲ軽禁錮ニ換フ其ノ一円ニ満サル者ト雖モ仍一日ニ計算ス
②罰金ヲ禁錮ニ換フル者ハ更ニ裁判ヲ用ヒス検察官ノ求ニ因(よ)リ裁判官之ヲ命ス但禁錮ノ期限ハ二年ニ過クルコトヲ得ス

③若シ禁錮限内罰金ヲ納メタル時ハ其経過シタル日数ヲ控除シテ禁錮ヲ免ス親属其他ノ者代テ罰金ヲ納メタル時亦同シ

第二十八条 拘留ハ拘留所ニ留置シ定役ニ服セス其刑期ハ一日以上十日以下ト為シ仍ホ各本条ニ於テ其長短ヲ区別ス

第二十九条 科料ハ五銭以上一円九十五銭以下ト為シ仍ホ各本条ニ於テ其多寡ヲ区別ス

第三十条 科料ハ裁判確定ノ日ヨリ十日内ニ納完セシム若シ限内納完セサル者ハ第二十七条ノ例ニ照シ之ヲ拘留ニ換フ

  第三節 附加刑処分

第三十一条 剥奪(はくだつ)公権ハ左ノ権ヲ剥奪ス

一 国民ノ特権

二 官吏ト為ルノ権

三 勲章年金位記貴号恩給ヲ有スルノ権

四 外国ノ勲章ヲ侃用(はいよう)スルノ権

五 兵籍ニ入ルノ権

六 裁判所ニ於テ証人ト為ルノ権但単ニ事実ヲ陳述スルハ此限ニ在ラス

七 後見人ト為ルノ権但親属ノ許可ヲ得テ子孫ノ為メニスルハ此限ニ在ラス

八 分散者(ぶんさんしゃ)ノ管財人ト為リ又ハ全社及ヒ共有財産ヲ管理スルノ権

九 学校長及ヒ教師学監ト為ルノ権

第三十二条 重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス終身公権ヲ剥奪ス

第三十三条 禁錮ニ処セラレタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス現任ノ官職ヲ失ヒ及ヒ其刑期間公権ヲ行フコトヲ停止ス

第三十四条①軽罪ノ刑ニ於テ監視ニ付シタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス監視ノ期限間公権ヲ行フコトヲ停止ス

②主刑ヲ免シテ止タ(ただ)監視ニ付シタル者亦同シ
第三十五条 重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス其主刑ノ終ルマテ自ラ財産ヲ治ムルコトヲ禁ス(削除)
第三十六条 流刑ノ囚幽閉ヲ免セラレタル時ハ行政ノ処分ヲ以テ治産ノ禁ノ幾分ヲ免スルコトヲ得(削除)

第三十七条 重罪ノ刑ニ処セラレタル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス各本刑ノ短期三分ノ一ニ等シキ時間監視ニ付ス

第三十八条 軽罪ノ刑ニ附加スル監視ハ之ヲ宣告ス但各本条ニ記載スルノ外監視ニ付スルコトヲ得ス

第三十九条 死刑及ヒ無期刑ノ期満(きまん)免除ヲ得タル者ハ別ニ宣告ヲ用ヒス五年間監視ニ付ス

第四十条 ①監視ノ期限ハ主刑ノ終リタル日ヨリ起算ス主刑ノ期満免除ヲ得タル時ハ其捕ニ就キタル日ヨリ起算ス

②若シ主刑ヲ免シテ止タ監視ニ付シタル時ハ裁判確定ノ日ヨリ起算ス

第四十一条 監視ニ付セラレタル者其情状ニ因リ行政ノ処分ヲ以テ仮ニ監視ヲ免スルコトヲ得

第四十二条 附加ノ罰金ハ之ヲ宣告ス若シ一月内ニ納完セサル時ハ第二十七条ノ例ニ照シ軽禁錮ニ換ヘ主刑満限ノ後之ヲ執行ス

第四十三条 左ニ記載シタル物件ハ宣告シテ官ニ没収ス但法律規則ニ於テ別ニ没収ノ例ヲ定メタル者ハ各其法律規則ニ従フ

一 法律ニ於テ禁制シタル物件

二 犯罪ノ用ニ供シタル物件

三 犯罪ニ因テ得タル物件

第四十四条 法律ニ於テ禁制シタル物件ハ何人ノ所有ヲ問ハス之ヲ没収ス犯罪ノ用ニ供シ及ヒ犯罪ニ因テ得タル物件ハ犯人ノ所有ニ係リ又ハ所有主ナキ時ノ外之ヲ没収スルコトヲ得ス

  第四節 懲償処分

第四十五条 刑事ノ裁判費用ハ其全部又ハ幾分ヲ犯人ニ科ス但費用ノ額ハ別ニ規則ヲ以テ之ヲ定ム

第四十六条 犯人刑ニ処セラレ又ハ放免セラルヽト雖モ被害者ノ請求ニ対シ贓物(ぞうぶつ)ノ還給損害ノ賠償ヲ免カルヽコトヲ得ス

第四十七条 数人共犯ニ係ル裁判費用贓物ノ還給損害ノ賠償ハ共犯人ヲシテ之ヲ連帯セシム

第四十八条 裁判費用贓物ノ還給損害ノ賠償ハ被害者ノ請求ニ因リ刑事裁判所ニ於テ之ヲ審判スルコトヲ得若シ贓物犯人ノ手ニアル時ハ請求ナシト雖モ直チニ之ヲ被害者ニ還付ス

  第五節 刑期計算

第四十九条 ①刑期ヲ計算スルニ一日ト称スルハ二十四時ヲ以テシ一月ト称スルハ三十日ヲ以テシ一年ト称スルハ暦ニ従フ

②受刑ノ初日ハ時間ヲ論セス一日ニ算入シ放免ノ日ハ刑期ニ算入セス

第五十条 刑ハ裁判確定シタル後ニ非サレハ之ヲ執行スルコトヲ得ス

第五十一条 刑期ハ刑名宣告ノ日ヨリ算ス若シ上訴ヲ為シタル者ハ左ノ例ニ従フ

 一 犯人自ラ上訴シテ其ノ上訴正当ナル時ハ前判宣告ノ日ヨリ起算ス若シ其上訴不当ナル時ハ後判宣告ノ日ヨリ起算ス

 二 検察官ノ上訴ニ係ル者ハ其上訴正当ナルト否トヲ分タス前判宣告ノ日ヨリ起算ス

 三 上訴中保釈ヲ得又ハ責付セラレタル者ハ其日数ヲ刑期ニ算入スルコトヲ得ス

第五十二条 刑期限内逃走シ再ヒ捕ニ就キタル者ハ其逃走ノ日数ヲ除キ前後受刑ノ日ヲ計算ス

  第六節 仮出獄

第五十三条 ①重罪軽罪ノ刑ニ処セラレタル者獄則ヲ謹守シ悛改(しゅんかい)ノ状アル時ハ其刑期四分ノ三ヲ経過スルノ後行政ノ処分ヲ以テ仮ニ出獄ヲ許スコトヲ得

②無期徒刑ノ囚ハ十五年ヲ経過スルノ後亦同シ

③流刑ノ囚ハ第二十一条ニ照シ幽閉ヲ免スルノ外仮出獄ノ例ヲ用ヒス

第五十四条 徒刑ノ囚ハ仮出獄ヲ許サル丶ト雖モ仍ホ島地ニ居住セシム

第五十五条 仮出獄ヲ許サレタル者ハ「行政ノ処分ヲ以テ治産ノ禁ノ幾分ヲ免スルコトヲ得但」本刑期限内特別ニ定メタル監視ニ付ス(「」内削除)

第五十六条 仮出獄中更ニ重罪軽罪ヲ犯シタル者ハ直チニ出獄ヲ停止シ出獄中ノ日数ハ刑期ニ算入スルコトヲ得ス

第五十七条 刑期限内更ニ重罪軽罪ヲ犯シタル者ハ仮出獄ヲ許サス

  第七節 期満免除

第五十八条 刑ノ執行ヲ遁(のが)レタル者法律ニ定メタル期限ヲ経過スルニ因リテ期満免除ヲ得

第五十九条 主刑ハ左ノ年限ニ従テ期満免除ヲ得

一 死刑ハ三十年

二 無期徒流刑ハ二十五年

三 有期徒流刑ハ二十年

四 重懲役重禁款ハ十五年

五 軽懲役軽禁獄ハ十年

六 禁錮罰金ハ七年

七 拘留科料ハ一年

第六十条 ①剥奪公権停止公権及ヒ監視ハ期満免除ヲ得ス

②附加ノ罰金ハ主刑ト共ニ期満免除ヲ得

③没収ハ五年ヲ経テ期満免除ヲ得但禁制物ハ期満免除ノ限ニ在ラス

第六十一条 期満免除ハ刑ノ執行ヲ遁レタル日ヨリ起算ス若シ捕ニ就キ再ヒ逃走シタル時ハ其逃走ノ日ヨリ起算シ闕席裁判ニ係ル時ハ其宣告ノ日ヨリ起算ス

第六十二条 刑ノ執行ヲ遁レタル者ニ対シ逮捕ヲ命シタル時ハ最終ノ令状ヲ出シタル日ヨリ期満免除ヲ起算ス

   第八節 復権

第六十三条 ①公権ヲ剥奪セラレタル者ハ主刑ノ終リタル日ヨリ五年ヲ経過スルノ後其情状ニ因リ将来ノ公権ヲ復スルコトヲ得

②主刑ノ期満免除ヲ得タル者ハ監視ニ付シタル日ヨリ五年ヲ経過スルノ後亦同シ

第六十四条 ①大赦ニ因テ免罪ヲ得タル者ハ直チニ復権ヲ得特赦ニ因テ免罪ヲ得タル者ハ赦状中記載スルニ非サレハ復権ヲ得ス

②赦ニ因テ復権ヲ得タル者ハ自ラ監視ヲ免シタル者トス

第六十五条 復権ハ勅裁ニ非サレハ之ヲ得可カラス

 第三章 加減例

第六十六条 法律ニ於テ刑ヲ加重減軽ス可キ時ハ後ノ数条ニ記載シタル例ニ照シテ加減ス但加ヘテ死刑ニ入ルコトヲ得ス

第六十七条 重罪ノ刑ハ左ノ等級ニ照シテ加減ス

一 死刑

二 無期徒刑

三 有期徒刑

四 重懲役

五 軽懲役

第六十八条 国事ニ関スル重罪ノ刑ハ左ノ等級ニ照シテ加減ス

一 死刑

二 無期流刑

三 有期流刑

四 重禁獄

五 軽禁獄

第六十九条 ①軽懲役ニ該(あた)ル者減軽ス可キ時ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ処スルヲ以テ一等ト為ス

②軽禁獄ニ該ル者減軽ス可キ時ハ二年以上五年以下ノ軽禁錮ニ処スルヲ以テ一等ト為ス

第七十条 ①禁錮罰金ニ該ル者減軽ス可キ時ハ各本条ニ記載シタル刑期金額ノ四分ノ一ヲ減スルヲ以テ一等ト為シ其加重ス可キ時ハ亦四分ノ一ヲ加フルヲ以テ一等ト為ス

②軽罪ノ刑ハ加ヘテ重罪ニ入ルコトヲ得ス但禁錮ハ加ヘテ七年ニ至ルコトヲ得

第七十一条 禁錮ヲ減尽(げんじん)シタル時ハ拘留ニ処シ罰金ヲ減尽シタル時ハ科料ニ処ス禁錮罰金ヲ減シテ其短期十日以下寡数一円九十五銭以下ニ及フ時ハ亦拘留科料ニ処スルコトヲ得

第七十二条 ①拘留科料ニ該ル者加減ス可キ時ハ禁錮罰金ノ例ニ照シ其四分ノ一ヲ加減スルヲ以テ一等ト為ス

②違警罪ノ刑ハ加ヘテ軽罪ニ入ルコトヲ得ス但拘留ハ加ヘテ十二日ニ至ルコトヲ得減シテ一日以下ニ降スコトヲ得ス科料ハ加ヘテ二円四十銭ニ至ルコトヲ得滅シテ五銭以下ニ降スコトヲ得ス

第七十三条 禁錮拘留ヲ加減スルニ因テ其期限ニ零数ヲ生シ一日ニ満サル時ハ之ヲ除棄ス

第七十四条 附加ノ罰金ハ主刑ニ従テ加減シ其金額ノ四分ノ一ヲ加減スルヲ以テ一等ト為ス若シ減尽シタル時ハ止タ主刑ヲ科ス

 第四章 不論罪(ふろんざい)及ヒ減軽
  第一節 不論罪及ヒ宥恕(ゆうじょ)減軽
第七十五条 ①抗拒ス可カラサル強制ニ遇(あ)ヒ其意ニ非(あら)サルノ所為ハ其罪ヲ論セス

②天災又ハ意外ノ変ニ因リ避ク可カラサル危難ニ遇ヒ自己若クハ親属ノ身体ヲ防衛スルニ出タル所為亦同シ

第七十六条 本属長官ノ命令ニ従ヒ其職務ヲ以テ為シタル者ハ其罪ヲ論セス

第七十七条 ①罪ヲ犯ス意ナキノ所為ハ其罪ヲ論セス但法律規則ニ於テ別ニ罪ヲ定メタル者ハ此限ニアラス

②罪トナルヘキ事実ヲ知ラスシテ犯シタル者ハ其罪ヲ論セス

③罪本重カル可クシテ犯ス時知ラサル者ハ其重キニ従テ論スルコトヲ得ス

④法律規則ヲ知ラサルヲ以テ犯スノ意ナシト為スコトヲ得ス

第七十八条 罪ヲ犯ス時知覚精神ノ喪失ニヨリテ是非ヲ弁別セサル者ハ其罪ヲ論セス

第七十九条 罪ヲ犯ス時十二歳ニ満サル者ハ其罪ヲ論セス但満八歳以上ノ者ハ情状ニ因リ満十六歳ニ過キサル時間之ヲ懲治場ニ留置スルコトヲ得

第八十条①罪ヲ犯ス時満十二歳以上十六歳ニ満サル者ハ其所為是非ヲ弁別シタルト否トヲ審案シ弁別ナクシテ犯シタル時ハ其罪ヲ論セス但情状ニ因リ満二十歳ニ過キサル時間之ヲ懲治場ニ留置スルコトヲ得

②若シ弁別アリテ犯シタル時ハ其罪ヲ宥恕シテ本刑ニ二等ヲ減ス

第八十一条 罪ヲ犯ス時満十六歳以上二十歳ニ満サル者ハ其罪ヲ宥恕シテ本刑ニ一等ヲ減ス

第八十二条 瘖唖(いんあ)者罪ヲ犯シタル時ハ其罪ヲ論セス但情状ニ因リ五年ニ過キサル時間之ヲ懲治場ニ留置スルコトヲ得
第八十三条 ①達警罪ハ満十六歳以上二十歳ニ満サル者ト雖モ其罪ヲ宥恕スルコトヲ得ス

②満十二歳以上十六歳ニ満サル者ハ其罪ヲ宥恕シテ本刑ニ一等ヲ減ス十二歳ニ満サル者及ヒ瘖唖者ハ其罪ヲ論セス

第八十四条 此節ニ記載スルノ外特別ノ不論罪宥恕減軽ハ各本条ニ於テ之ヲ記載ス

   第二節 自首減軽

第八十五条 罪ヲ犯シ事未タ(いまだ)発覚セサル前ニ於テ官ニ自首シタル者ハ本刑ニ一等ヲ減ス但謀殺故殺ニ係ル者ハ自首減軽ノ限ニ在ラス

第八十六条 財産ニ対スル罪ヲ犯シタル者自首シテ其贓物ヲ還給シ損害ヲ賠償シタル時ハ自首減等ノ外仍ホ本刑ニ二等ヲ滅ス其全部ヲ還償セスト雖モ半数以上ヲ還償シタル時ハ一等ヲ減ス

第八十七条 財産ニ対スル罪ヲ犯シ被害者ニ首服シタル者ハ官ニ自首スルト同ク前二条ノ例ニ照シテ処断ス

第八十八条 此節ニ記載スルノ外本条別ニ自首ノ例ヲ掲ケタル者ハ各其本条ニ従フ

   第三節 酌量減軽

第八十九条 ①重罪軽罪違警罪ヲ分タス所犯情状原諒(げんりょう)ス可キ者ハ酌量シテ本刑ヲ減軽スルコトヲ得

②法律ニ於テ本刑ヲ加重シ又ハ減軽ス可キ者ト雖モ其酌量ス可キ時ハ仍ホ之ヲ減軽スルコトヲ得

第九十条 酌量減軽ス可キ者ハ本刑ニ一等又ハ二等ヲ減ス

 第五章 再犯加重

第九十一条 先ニ重罪ノ刑ニ処セラレタル者再犯重罪ニ該ル時ハ本刑ニ一等ヲ加フ

第九十二条 先ニ重罪軽罪ノ刑ニ処セラレタル者再犯軽罪ニ該ル時ハ本刑ニ一等ヲ加フ

第九十三条 先ニ違警罪ノ刑ニ処セラレタル者再犯違警罪ニ該ル時ハ本刑ニ一等ヲ加フ但一年内再ヒ其違警罪裁判所ノ管轄地内ニ於テ犯シタル時ニ非サレハ再犯ヲ以テ論スルコトヲ得ス

第九十四条 再犯加重ハ初犯ノ裁判確定ノ後ニ非サレハ之ヲ論スルコトヲ得ス

第九十五条 ①刑期限内再ヒ罪ヲ犯スニ因リ刑ヲ宣告シタル時ハ先ツ其定役ニ服ス可キ者ヲ執行シ定役ニ服セサル者ヲ後ニス若シ初犯再犯共ニ定役ニ服スル刑ニ該ル時又ハ共ニ定役ニ服セサル刑ニ該ル時ハ先ツ其重キ者ヲ執行ス

②罰金科料ニ該ル者ハ順序ニ拘ハラス各之ヲ徴収ス

第九十六条 陸海軍裁判所ニ於テ判決ヲ経タル者再ヒ重罪軽罪ヲ犯シタル時ハ初犯ノ罪常律ニ従ヒ処断シタル者ニ非サレハ再犯ヲ以テ論スルコトヲ得ス

第九十七条 大赦ニ因テ免罪ヲ得タル者ハ再ヒ罪ヲ犯スト雖モ再犯ヲ以テ論スルコトヲ得ス

第九十八条 三犯以上ノ者ト雖モ其加重ノ法ハ再犯ノ例ニ同シ

 第六章 加減順序

第九十九条 犯罪ノ情状ニ因リ総則ニ照シ同時ニ本刑ヲ加重減軽ス可キ時ハ左ノ順序ニ従テ其刑名ヲ定ム但従犯及ヒ未遂犯罪ノ減等其他各本条ニ記載スル特別ノ加重減軽ハ其加減シタル者ヲ以テ本刑ト為ス

一 再犯加重

二 宥恕減軽

三 自首滅軽

四 酌量減軽

 第七章 数罪倶発(ぐはつ)
第百条①重罪軽罪ヲ犯シ未タ判決ヲ経ス二罪以上倶(とも)ニ発シタル時ハ一ノ重キニ従テ処断ス

②重罪ノ刑ハ刑期ノ長キ者ヲ以テ重ト為シ刑期ノ等シキ者ハ定役アル者ヲ以テ重ト為ス

③軽罪ノ刑ハ其所犯情状最重キ者ニ従テ処断ス

第百一条 違警罪二罪以上倶ニ発シタル時ハ各其刑ヲ科ス若シ重罪又ハ軽罪ト倶ニ発シタル時ハ其重キニ従フ

第百二条 ①一罪前ニ発シ已ニ判決ヲ経テ余罪後ニ発シ其軽ク若クハ等シキ者ハ之ヲ論セス其重キ者ハ更ニ之ヲ論シ前発ノ刑ヲ以テ後発ノ刑ニ通算ス但前発ノ刑罰金科料ニ該リ已ニ納完シタル者ハ第二十七条ノ例ニ照シ折算シテ後発ノ刑期ニ通算ス

②若シ前発ノ罪ヲ判決スル時未タ発セサル罪再犯ノ罪ト倶ニ準シタル者ハ其再犯ト比較シ一ノ重キニ従ヒ前発ノ刑ヲ通算セス

第百三条 数罪倶ニ発シ一ノ重キニ従フ時ト雖モ其没収及ヒ徴償ノ処分ハ各本法ニ従フ

 第八章 数人共犯

  第一節 正犯

第百四条 二人以上現ニ罪ヲ犯シタル者ハ皆正犯ト為シ各自ニ其刑ヲ科ス

第百五条 人ヲ教唆シテ重罪軽罪ヲ犯サシメタル者ハ亦正犯ト為ス

第百六条 正犯ノ身分ニ因リ別ニ刑ヲ加重ス可キ時ハ他ノ正犯従犯及ヒ教唆者ニ及ホスコトヲ得ス

第百七条 犯人ノ多数ニ因リ刑ヲ加重ス可キ時ハ教唆者ヲ算入シテ多数ト為スコトヲ得ス

第百八条 事ヲ指示シテ犯罪ヲ教唆スルニ当リ犯人教唆ニ乗シ其指定シタル以外ノ罪ヲ犯シ又ハ其現ニ行フ所ノ方法教唆者ノ指示シタル所ト殊ナル時ハ左ノ例ニ照ラシテ教唆者ヲ処断ス

一 所犯教唆シタル罪ヨリ重キ時ハ止タ其指定シタル罪ニ従テ刑ヲ科ス

二 所犯教唆シタル罪ヨリ軽キ時ハ現ニ行フ所ノ罪ニ従テ刑ヲ科ス

   第二節 従犯

第百九条 重罪軽罪ヲ犯スコトヲ知テ器具ヲ給与シ又ハ誘導指示シ其他予備ノ所為ヲ以テ正犯ヲ幇助シ犯罪ヲ容易ナラシメタル者ハ従犯ト為シ正犯ノ刑ニ一等ヲ減ス但正犯現ニ行フ所ノ罪従犯ノ知ル所ヨリ重キ時ハ止タ其知ル所ノ罪ニ照ラシ一等ヲ減ス

第百十条 ①身分ニ因リ刑ヲ加重ス可キ者従犯ト為ル時ハ其重キニ従テ一等ヲ減ズ

②正犯ノ身分ニ因リ刑ヲ減免ス可キ時ト雖モ従犯ノ刑ハ其軽キニ従テ減免スルコトヲ得ス

 第九章 未遂犯罪

第百十一条 罪ヲ犯サンコトヲ謀リ又ハ其予備ヲ為スト雖モ未タ其事ヲ行ハサル者ハ本条別ニ刑名ヲ記載スルニ非サレハ其刑ヲ科セス

第百十二条 罪ヲ犯サントシテ已(すで)ニ其事ヲ行フト雖モ犯人意外ノ障礙(しようがい)若クハ舛錯(せんさく)ニ因リ未タ遂ケサル時ハ已ニ遂ケタル者ノ刑ニ一等又ハ二等ヲ減ス

第百十三条 ①重罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ前条ノ例ニ照ラシテ処断ス

②軽罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ本条別ニ記載スルニ非サレハ前条ノ例ニ照シテ処断スルコトヲ得ス

③違警罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ其罪ヲ論セス

 第十章 親属例

第百十四条 此刑法ニ於テ親属ト称スルハ左ニ記載シタル者ヲ云フ

一 祖父母父母夫妻

二 子孫及ヒ其配偶者

三 兄弟柿妹及ヒ其配偶者

四 兄弟柿妹ノ子及ヒ其配偶者

五 父母ノ兄弟姉妹及ヒ其配偶者

六 父母ノ兄弟姉妹ノ子

七 配偶者ノ祖父母父母

八 配偶者ノ兄弟姉妹及ヒ其配偶者

九 配偶者ノ兄弟姉妹ノ子

十 配偶者ノ父母ノ兄弟姉妹

第百十五条 ①祖父母ト称スルハ高曾祖父母外祖父母同シ父母ト称スルハ継父母嫡母同シ子孫ト称スルハ庶子曾玄孫外孫同シ兄弟姉妹ト称スルハ異父異母ノ兄弟姉妹同シ

②養子其養家ニ於ル親属ノ例ハ実子ニ同シ

 

 第二編 公益ニ関スル重罪軽罪

 第一章 皇室ニ対スル罪

第百十六条 天皇三后(さんこう)皇太子ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス

第百十七条 ①天皇三后皇太子ニ対シ不敬ノ所為アル者ハ三月以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ二十円以上二百円以下ノ罰金ヲ附加ス

②皇陵ニ対シ不敬ノ所為アル者亦同シ

第百十八条 皇族ニ対シ危害ヲ加ヘタル者ハ死刑ニ処ス其危害ヲ加ヘントシタル者ハ無期徒刑ニ処ス

第百十九条 皇族ニ対シ不敬ノ所為アル者ハ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ処シ十円以上百円以下ノ罰金ヲ附加ス

第百二十条 此章ニ記載シタル罪ヲ犯シ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

 第二章 国事ニ関スル罪

   第一節 内乱ニ関スル罪

第百二十一条 政府ヲ顚覆(てんぷく)シ又ハ邦土ヲ僭窃(せんせつ)シ其他朝憲ヲ紊乱(びんらん)スルコトヲ目的ト為シ内乱ヲ起シタル者ハ左ノ区別ニ従テ処断ス
一 首魁(しゅかい)及ヒ教唆者ハ死刑ニ処ス

二 群衆ノ指揮ヲ為シ其他枢要ノ職務ヲ為シタル者ハ無期流刑ニ処シ其情軽キ者ハ有期流刑ニ処ス

三 兵器金穀ヲ資給シ又ハ諸般ノ職務ヲ為シタル者ハ重禁獄ニ処シ其情軽キ者ハ軽禁獄ニ処ス

 四 教唆ニ乗シテ附和随行シ又ハ指揮ヲ受ケテ雑役ニ供シタル者ハ二年以上五年以下ノ軽禁錮ニ処ス

第百二十二条 内乱ヲ起スノ目的ヲ以テ兵器弾薬船舶金穀其他軍備ノ物品ヲ劫掠(ごうりゃく)シタル者ハ已ニ内乱ヲ起シタル者ノ刑ニ同シ

第百二十三条 政府ヲ変乱スルノ目的ヲ以テ人ヲ謀殺シタル者ハ兵ヲ拳ルニ至ラスト雖モ内乱ト同ク論シ其教唆者及ヒ下手者ヲ死刑ニ処ス

第百二十四条 前三条ノ罪ハ未遂犯罪ノ時ニ於テ乃チ本刑ヲ科ス

第百二十五条 ①兵隊ヲ招募シ又ハ兵器金穀ヲ準備シ其他内乱ノ予備ヲ為シタル者ハ第百二十一条ノ例ニ照シ各一等ヲ減ス

②内乱ノ陰謀ヲ為シ未タ予備ニ至ラサル者ハ各二等ヲ減ス

第百二十六条 内乱ノ予備又ハ陰謀ヲ為スト雖モ未タ其事ヲ行ハサル前ニ於テ官ニ自首シタル者ハ本刑ヲ免シ六月以上三年以下ノ監視ニ付ス

第百二十七条 内乱ノ情ヲ知テ犯人ニ集会所ヲ給与シタル者ハ二年以上五年以下ノ軽禁錮ニ処ス

第百二十八条 内乱二乗シテ人ノ身体財産ニ対シ内乱ノ目的ニ関セサル重罪軽罪ヲ犯シタル者ハ通常ノ刑ニ照シ重キニ従テ処断ス

   第二節 外患ニ関スル罪

第百二十九条 外国ニ与シテ本国ニ抗敵シ又ハ外国ト交戦中同盟国ニ抗敵シ其他本国ニ背叛(はいはん)シテ敵兵ニ付属シタル者ハ死刑ニ処ス
第百三十条 交戦中敵兵ヲ誘導シテ本国管内ニ入ラシメ若クハ本国及ヒ同盟国ノ都府城塞(じょうさい)又ハ兵器弾薬船艦其他軍事ニ関スル土地家屋物件ヲ敵国ニ交付シタル者ハ死刑ニ処ス
第百三十一条 ①本国及ヒ同盟国ノ軍情機密ヲ敵国ニ漏泄シ若クハ兵隊屯集ノ要地又ハ通路ノ険夷(けんい)ヲ敵国ニ通知シタル者ハ無期流刑ニ処ス
②敵国ノ間諜ヲ誘導シテ本国管内ニ入ラシメ若クハ之ヲ蔵匿(ぞうとく)シタル者亦同シ

第百三十二条 陸海軍ヨリ委任ヲ受ケ物品ヲ供給シ及ヒ工作ヲ為ス者交戦ノ際敵国ニ通謀シ又ハ其賂遺ヲ収受シテ命令ニ違背シ軍備ノ欠乏ヲ致シタル時ハ有期流刑ニ処ス

第百三十三条 外国ニ対シ私(ひそか)ニ戦端ヲ開キタル者ハ有期流刑ニ処ス其予備ニ止ル者ハ一等又ハ二等ヲ減ス

第百三十四条 外国交戦ノ際本国ニ於テ局外中立ヲ布告シタル時其布告ニ違背シタル者ハ六月以上三年以下ノ軽禁錮ニ処シ拾円以上首円以下ノ罰金ヲ附加ス

第百三十五条 此章ニ記載シタル罪ヲ犯シ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

 第三章 静謐(せいひつ)ヲ害スル罪
   第一節 兇徒聚衆(しゅうしゅう)ノ罪
第百三十六条 兇徒多衆ヲ嘯聚(しょうしゅう)シテ暴動ヲ謀リ官吏ノ説諭ヲ受クルト雖モ仍ホ解散セサル者首魁及ヒ教唆者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ処ス附和随行シタル者ハ二円以上五円以下ノ罰金ニ処ス
第百三十七条 兇徒多衆ヲ嘯聚シテ官庁ニ喧鬧(けんどう)シ官吏ニ強逼シ又ハ村市ヲ騒擾(そうじょう)シ其他暴動ヲ為シタル者首魁及ヒ教唆者ハ重懲役ニ処ス其嘯聚ニ応シ煽動シテ勢ヲ助ケタル者ハ軽懲役ニ処シ其情軽キ者ハ一等ヲ減ス附和随行シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

第百三十八条 ①暴動ノ際人ヲ殺死シ若クハ家屋船舶倉庫等ヲ焼燬シタル時ハ現ニ手ヲ下シ及ヒ火ヲ放ツ者ヲ死刑ニ処ス

②首魁及ヒ教唆者情ヲ知テ制セサル者亦同シ

   第二節 官吏ノ職務ヲ行フヲ妨害スル罪

第百三十九条①官吏其職務ヲ以テ法律規則ヲ執行シ又ハ行政司法官署ノ命令ヲ執行スルニ当リ暴行脅迫ヲ以テ其官吏ニ抗拒シタル者ハ四月以上四年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②暴行脅迫ヲ以テ其官吏ノ為ス可カラサル事件ヲ行ハシメタル者亦同シ

第百四十条 前条ノ罪ヲ犯シ因テ官吏ヲ殴傷シタル者ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ一等ヲ加ヘ重キニ従テ処断ス

第百四十一条 ①官吏ノ職務ニ対シ其目前ニ於テ形容若クハ言語ヲ以テ侮辱シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②其目前ニ非スト雖モ刊行ノ文書図画又ハ公然ノ演説ヲ以テ侮辱シタル者亦同シ

   第三節 囚徒逃走ノ罪及ヒ罪人ヲ蔵匿スル罪

第百四十二条 ①已決(いけつ)ノ囚徒逃走シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処ス
②若シ獄舎獄具ヲ毀壊(きかい)シ又ハ暴行脅迫ヲ為シテ逃走シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ処ス

第百四十三条 已決ノ囚徒逃走ノ罪ヲ犯スト雖モ再犯ヲ以テ論セス其刑期限内再ヒ逃走シタル者ハ再犯ヲ以テ論ス

第百四十四条 未決ノ囚徒入監中逃走シタル者ハ第百四十二条ノ例ニ同シ但原犯ノ罪ヲ判決スル時ニ於テ数罪倶発ノ例ニ照シテ処断ス

第百四十五条 囚徒三人以上通謀シテ逃走シタル時ハ第百四十二条ノ例ニ準シ各一等ヲ加フ

第百四十六条 囚徒ヲ逃走セシムル為メ兇器其他ノ器具ヲ給与シ又ハ逃走ノ方法ヲ指示シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス因テ囚徒ノ逃走ヲ致シタル時ハ一等ヲ加フ

第百四十七条 ①囚徒ヲ劫奪シ又ハ暴行脅迫ヲ以テ囚徒ノ逃走ヲ助ケタル者ハ一年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②若シ重罪ノ刑ニ処セラレタル囚徒ニ係ル時ハ軽懲役ニ処ス

第百四十八条 囚徒ヲ看守シ又ハ護送スル者囚徒ヲ逃走セシメタル時ハ亦前条ノ例ニ同シ

第百四十九条 前数条ニ記載シタル軽罪ヲ犯サントシテ未タ逐サル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス

第百五十条 ①看守又ハ護送者其懈怠(かいたい)ニ因リ囚徒ノ逃走ヲ覚ラサル時ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

②若重罪ノ刑ニ処セラレタル囚徒ニ係ル時ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス

第百五十一条 ①犯罪人又ハ逃走ノ囚徒及ヒ監視ニ付セラレタル者ナルコトヲ知テ之ヲ蔵匿シ若クハ隠避セシメタル者ハ十一日以上一年以下ノ軽禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②若シ重罪ノ刑ニ処セラレタル囚徒ニ係ル時ハ一等ヲ加フ

第百五十二条 他人ノ罪ヲ免カレシメンコトヲ図リ其罪証ト為ル可キ物件ヲ隠蔽シタル者ハ十一日以上六月以下ノ軽禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第百五十三条 前二条ノ罪ヲ犯シタル者犯人ノ親属ニ係ル時ハ其罪ヲ論セス

 

  第四節 附加刑ノ執行ヲ遁ル丶罪

第百五十四条 公権ヲ剥奪セラレ又ハ公権ヲ停止セラレタル者私ニ其権ヲ行ヒタル時ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第百五十五条 監視ニ付セラレタル者其規則ニ違背シタル時ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ処ス

第百五十六条 前二条ノ罪ハ其刑期限内再ヒ犯シタル時ニ非サレハ再犯ヲ以テ論スルコトヲ得ス

  第五節 私ニ軍用ノ銃礟(ほう)弾薬ヲ製造シ及ヒ所有スル罪

第百五十七条 ①官命ヲ受ス又ハ官許ヲ得スシテ陸海軍ノ用ニ供スル銃礟弾薬其他破裂質ノ物品ヲ製造シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ二十円以上二百円以下ノ罰金ヲ附加ス其之ヲ輸入シタル者亦同シ

②前項ノ物品ヲ私ニ販売シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ十円以上百円以下ノ罰金ヲ附加ス

第百五十八条 前条ノ罪ヲ犯スト雖モ職工又ハ雇人ニシテ止タ正犯ノ使令ニ供シタル者ハ各本刑ニ照シ二等ヲ減ス

第百五十九条 前二条ノ罪ヲ犯サントシテ未タ遂サル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス

第百六十条 第百五十七条ニ記載シタル物品ヲ私ニ所有シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

第百六十一条 第百五十七条ニ記載シタル物品ノ製造ニ供シタル器械ニシテ単ニ其用ニ供ス可キ者ハ何人ノ所有ヲ問ハス之ヲ没収ス

 第六節 往来通信ヲ妨害スル罪

第百六十二条 道路橋梁(きょうりょう)河溝港埠(ふ)ヲ損壊シテ往来ヲ妨害シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第百六十三条 偽計又ハ威力ヲ以テ郵便ヲ妨害シ若クハ之ヲ阻止シタル者ハ亦前条ニ同シ

第第百六十四条 ①電信ノ器械柱木ヲ損壊シテ又ハ条線ヲ切断シテ電気ヲ不通ニ致シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②若シ器械柱木条線ヲ損壊シテ電信ノ妨害ヲ為スト雖モ不通ニ至ラサル時ハ一等ヲ減ス

第百六十五条 汽車ノ往来ヲ妨害スル為メ鉄道及ヒ標識ヲ損壊シ其他危険ナル障礙ヲ為シタル者ハ重懲役ニ処ス

第第百六十六条 船舶ノ往来ヲ妨害スル為メ灯台浮標其他航海ノ安寧ヲ保護スル標識ヲ損壊シ又ハ詐偽ノ標識ヲ点示シタル者ハ亦前条ニ如シ

第百六十七条  前数条ニ記載シタル罪其事務ニ関スル官吏及ヒ雇人職工自ラ犯シタル時ハ各本刑ニ照シ一等ヲ加フ

第百六十八条 第百六十二条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ殺傷シタル者ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

第百六十九条 第百六十五条第百六十六条ノ罪ヲ犯シ因テ汽車ヲ顚覆シ又ハ船舶ヲ覆没シタル時ハ無期徒刑ニ処シ人ヲ死ニ至シタル時ハ死刑ニ処ス

第百七十条 此節ニ記載シタル軽罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス

  第七節 人ノ住所ヲ侵ス罪

第百七十一条 ①昼間故ナク人ノ住居シタル邸宅又ハ人ノ看守シタル建造物ニ入リタル者ハ十一日以上六月以下ノ重禁錮ニ処ス

②若シ左ニ記載シタル所為アル時ハ一等ヲ加フ

 一 門戸牆壁(しょうへき)ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰(さやく)ヲ開キテ入リタル時

二 兇器其他犯罪ノ用ニ供ス可キ物品ヲ携帯シテ入リタル時

 三 暴行ヲ為シテ入リタル時

 四 二人以上ニテ入リタル時

第百七十二条 ①夜間故ナク人ノ住居シタル邸宅又ハ人ノ看守シタル建造物ニ入リタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処ス

②若シ前条ニ記載シタル加重ス可キ所為アル時ハ一等ヲ加フ

第百七十三条 故ナク皇居禁苑離宮行在所(あんざいしょ)及ヒ皇陵内ニ人リタル者ハ前二条ノ例ニ照シ各一等ヲ加フ

  第八節 官ノ封印ヲ破棄スル罪

第百七十四条 ①官署ノ処分ニ因リ特別ニ家屋其他ノ物件ニ施シタル封印ヲ破棄シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処ス

②若シ看守者自ラ犯シタル時ハ一等ヲ加フ

第百七十五条 官ノ封印ヲ破棄シテ其物件ヲ盗取シ又ハ毀壊シタル者ハ盗罪及ヒ毀壊ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

第百七十六条 看守者其懈怠ニ因リ封印ヲ破棄シ又ハ其ノ物件ヲ盗取毀壊スル犯人アルコトヲ覚ラサル時ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

 

  第九節 公務ヲ行フヲ拒ム罪

第百七十七条 陸海軍ノ将校タル者出兵ヲ要求スル権アル官署ヨリ其ノ要求ヲ受ケ故ナクシテ之ヲ肯(がえん)セサル時ハ二月以上二年以下ノ軽禁錮ニ処シ五円以上十円以下ノ罰金ヲ附加ス
第百七十八条 ①陸海軍ノ徴兵ニ編入セラル可キ者身体ヲ毀傷シテ疾病ヲ作為シ其他詐偽(さぎ)ノ所為ヲ以テ免役ヲ図リタル時ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②若シ他人ニ嘱託シ其氏名ヲ詐称シ代テ徴募ニ応セシメタル者亦同シ其嘱託ヲ受ケテ徴募ニ応シタル者ハ第ニ百三十一条ノ例ニ照シテ処断ス

第百七十九条 医師化学家其他職業ニ因リ官署ヨリ解剖分析又ハ鑑定ヲ命セラレタル者故ナクシテ之ヲ肯セサル時ハ四円以上四十円以下ノ罰金ニ処ス

第百八十条 裁判所ヨリ証人トシテ証拠ヲ陳述スルコトヲ命セラレタル者故ナクシテ之ヲ肯セサル時ハ亦前条ニ同シ

第百八十一条 ①伝染病流行ノ際又ハ伝染病ノ疑アル船舶入港スルニ当リ医師其病患ヲ検査シ又ハ消滅ノ方法ヲ陳述スルコトヲ命セラレタル者故ナクシテ之ヲ肯セサル時ハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス

②獣類伝染病流行ノ際獣医此条ノ罪ヲ犯シタル時ハ一等ヲ減ス

 第四章 信用ヲ害スル罪

  第一節 貨幣ヲ偽造スル罪

第百八十二条 ①内国通用ノ金銀貸及ヒ紙幣ヲ偽造シテ行使シタル者ハ無期徒刑ニ処ス

②若シ変造シテ行使シタル者ハ軽懲役ニ処ス

第百八十三条 ①内国ニ於テ通用スル外国ノ金銀貸ヲ偽造シテ行使シタル者ハ有期徒刑ニ処ス

②若シ変造シテ行使シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ処ス

第百八十四条 官許ヲ得テ発行スル銀行ノ紙幣ヲ偽造シ若クハ変造シテ行使シタル者ハ内外国ノ区別ニ従ヒ前二条ノ例ニ照シテ処断ス

第百八十五条 ①内国通用ノ銅貨ヲ偽造シテ行使シタル者ハ軽懲役ニ処ス

②若シ変造シテ行使シタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ処ス

第百八十六条 ①前数条ニ記載シタル貨幣ノ偽造変造已ニ成テ未タ行使セサル者ハ各本刑ニ照シ一等ヲ減シ其未タ成ラサル者ハ二等ヲ減ス

②若シ偽造ノ器械ヲ予備シテ未タ着手セサル者ハ各三等ヲ減ス

第百八十七条 ①貨幣ヲ偽造変造スルノ情ヲ知テ雇ヲ受ケタル職工ハ前数条ニ記載シタル犯人ノ受ク可キ刑ニ照シ各一等ヲ減ス

②若シ職工ノ補助ヲ為シテ雑役ニ供シタル者ハ職工ノ刑ニ照シ一等又ハ二等ヲ減ス

第百八十八条 貨幣ヲ偽造変造スルノ情ヲ知テ房屋ヲ給与シタル者ハ偽造変造ノ各本刑ニ照シ二等ヲ減ス

第百八十九条 偽造変造ノ貨幣ヲ内国ニ輸入シタル者ハ偽造変造ノ刑ニ同シ

第百九十条 ①偽造変造ノ情ヲ知テ其貨幣ヲ取受シ之ヲ行使シタル者ハ偽造変造シテ行使シタル者ノ刑ニ照シ各二等ヲ減ス

②其未タ行使セサル者ハ各三等ヲ減ス

第百九十一条 前数条ニ記載シタル罪ヲ犯シ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

第百九十二条 ①貨幣ヲ偽造変造シ及ヒ輸入取受シタル者未タ行使セサル前ニ於テ官ニ自首シタル時ハ本刑ヲ免シ六月以上三年以下ノ監視ニ付ス

②若シ職工雑役及ヒ房屋ヲ給与シタル者未タ行使セサル前ニ於テ自首シタル時ハ本刑ヲ免ス

第百九十三条 貨幣ヲ取受スルノ後ニ於テ偽造又ハ変造ナルコトヲ知リ之ヲ行使シタル者ハ其価額二倍ノ罰金ニ処ス但其罰金ハ二円以下ニ降スコトヲ得ス

   第二節 官印ヲ偽造スル罪

第百九十四条 御璽国璽ヲ偽造シ又ハ其偽璽ヲ使用シタル者ハ無期徒刑ニ処ス

第百九十五条 各官署ノ印ヲ偽造シ又ハ其偽印ヲ使用シタル者ハ重懲役ニ処ス

第百九十六条 ①生産物商品等ニ押用スル官ノ記号印章ヲ偽造シ又ハ其偽印ヲ使用シタル者ハ軽懲役ニ処ス

②書籍什物等ニ押用スル官ノ記号印章ヲ偽造シ又ハ其偽印ヲ使用シタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ処ス

第百九十七条 ①御璽国璽官印記号印章ノ影蹟ヲ盗用シタル者ハ前数条ニ記載シタル偽造ノ刑ニ照シ各一等ヲ減ス

②若シ監守者自ラ犯シタル時ハ偽造ノ刑ニ同シ

第第百九十八条 官ヨリ発行スル各種ノ印紙界紙及ヒ郵便切手ヲ偽造変造シ又ハ其情ヲ知テ之ヲ便用シタル者ハ一年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第百九十九条 已ニ貼用シタル各種ノ印紙及ヒ郵便切手ヲ再ヒ貼用シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

第二百条 此節ニ記載シタル軽罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス

第二百一条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

   第三節 官ノ文害ヲ偽造スル罪

第二百二条 ①詔害ヲ偽造シ又ハ増減変換シタル者ハ無期徒刑ニ処ス

②其詔害ヲ毀棄シタル者亦同シ

第二百三条 ①官ノ文害ヲ偽造シ又ハ増減変換シテ行使シタル者ハ軽懲役ニ処ス

②其官ノ文害ヲ毀棄シタル者亦同シ

第二百四条 ①公債証書地券其他官吏ノ公証シタル文害ヲ偽造シ又ハ増減変換シテ行使シタル者ハ軽懲役ニ処ス

②若シ無記名ノ公債証書ニ係ル時ハ一等ヲ加フ

第二百五条 ①官吏其管掌ニ係ル文害ヲ偽造シ又ハ増減変換シテ行使シタル者ハ前二条ノ例ニ照シ各一等ヲ加フ

②其文害ヲ毀棄シタル者亦同シ

第二百六条 官ノ文害ヲ偽造スルニ因テ官印ヲ偽造シ又ハ盗用シタル者ハ偽造官印ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

第二百七条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ減刑ニ因テ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

  第四節 私印私害ヲ偽造スル罪

第二百八条 ①他人ノ私印ヲ偽造シテ使用シタル者ハ六月以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②若シ他人ノ印影ヲ盗用シタル者ハ一等ヲ減ス

第二百九条 ①為替手形其他裏害ヲ以テ売買ス可キ証書若クハ金額ト交換ス可キ約定手形ヲ偽造シ又ハ増減変換シテ行使シタル者ハ軽懲役ニ処ス

②其手形証書ニ詐偽ノ裏害ヲ為シテ行使シタル者亦同シ

第二百十条 ①売買貸借贈遺交換其他権利義務ニ関スル証害ヲ偽造シ又ハ増減変換シテ行使シタル者ハ四月以上四年以下ノ重禁錮ニ処シ四円以上四十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②其余ノ私害ヲ偽造シ又ハ増減変換シテ行使シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百十一条 此節ニ記載シタル軽罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス

第二百十二条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

  第五節 免状鑑札及ヒ疾病証害ヲ偽造スル罪

第二百十三条 官ノ免状又ハ鑑札ヲ偽造シテ行使シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ四円以上四十円以下ノ罰金ヲ附加ス但官印ヲ偽造シ又ハ盗用シタル時ハ偽造官印ノ各本条ニ照シテ処断ス

第二百十四条 ①属籍身分氏名ヲ詐称シ其他詐偽ノ所為ヲ以テ免状鑑札ヲ受ケタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②官吏情ヲ知テ其免状鑑札ヲ下付シタル者ハ一等ヲ加フ

第二百十五条 公務ヲ免カル可キ為メ医師ノ氏名ヲ用ヒ疾病ノ証ヲ偽造シテ行使シタル者ハ自己ノ為メニシ他人ノ為メニスルヲ分タス一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②医師嘱託ヲ受ケテ其詐偽ノ証害ヲ造リタル者ハ一等ヲ加フ

第二百十六条 陸海軍ノ徴兵ヲ免カル可キ為メ疾病ノ証害ヲ偽造シテ行使シタル者及ヒ嘱託ヲ受ケテ其詐偽ノ証害ヲ造リタル医師ハ前条ノ例ニ照シ各一等ヲ加フ

第二百十七条 免状鑑札及ヒ疾病ノ証害ヲ増減変換シテ行使シタル者ハ亦偽造ノ刑ニ同シ

   第六節 偽証ノ罪

第二百十八条 刑事ニ関スル証人トシテ裁判所ニ呼出サレタル者被告人ヲ曲庇スル為メ事実ヲ掩蔽シテ偽証ヲ為シタル時ハ左ノ例ニ照シテ処断ス

一 重罪ヲ曲庇スル為メ偽証シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ四円以上四十円以下ノ罰金ヲ附加ス

 二 軽罪ヲ曲庇スル為メ偽証シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

三 違警罪ヲ曲庇スル為メ偽証シタル者ハ違警罪ノ本条ニ依テ処断ス

第二百十九条 偽証ノ為メ被告人正当ノ刑ヲ免カレタル時ハ偽証者ノ刑前条ノ例ニ照シ各一等ヲ加フ

第二百二十条 被告人ヲ陥害スル為メ偽証ヲ為シタル者ハ左ノ例ニ照シテ処断ス

一 重罪ニ陥ラシムル為メ偽証シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ十円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

二 軽罪ニ陥ラシムル為メ偽証シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ四円以上四十円以下ノ罰金ヲ附加ス

三 違警罪ニ陥ラシムル為メ偽証シタル者ハ一月以上三月以下ノ十禁錮ニ処シ二円以上十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百二十一条 ①偽証ノ為メ被告人刑ニ処セラレタル後ニ於テ偽証ノ罪発覚シタル時ハ偽証者ヲ其刑ニ反坐ス若シ反坐ノ刑前条ニ記載シタル偽証ノ刑ヨリ軽キ時ハ前条ノ例ニ照シテ処断ス

②其刑期限内ニ於テ偽証ノ罪発覚シタル時ハ現ニ経過シタル日数ニ照シテ反坐ノ刑期ヲ減スルコトヲ得但減シテ前条偽証ノ刑ヨリ降スコトヲ得ス

第二百二十二条 ①偽証ノ為メ被告人死刑ニ処セラレタル時ハ反坐ノ刑一等ヲ減ス其未タ刑ヲ執行セサル前ニ於テ発覚シタル時ハ二等ヲ減ス

②若シ被告人ヲ死ニ陥ル丶ノ目的ヲ以テ偽証ヲ為シタル時ハ死刑ニ反坐ス其未タ刑ヲ執行セサル前ニ於テ発覚シタル時ハ一等ヲ減ス

第二百二十三条 民事商事又ハ行政裁判ニ関シテ偽証ヲ為シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百二十四条 鑑定又ハ通事ノ為メ裁判所ニ呼出サレタル者詐偽ノ陳述ヲ為シタル時ハ前数条ニ記載シタル偽証ノ例ニ照シテ処断ス

第二百二十五条 賄賂其他ノ方法ヲ以テ人ニ嘱託シテ偽証又ハ詐偽ノ鑑定通事ヲ為サシメタル者ハ亦偽証ノ例ニ同シ

第二百二十六条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者其事件ノ裁判宣告ニ至ラサル前ニ於テ自首シタル時ハ本刑ヲ免ス

   第七節 度量衡ヲ偽造スル罪

第二百二十七条 度量衡ヲ偽造シ又ハ変造シテ販売シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ十円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

但官ノ記号印章ヲ偽造シ又ハ盗用シタル時ハ偽造官印ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

第二百二十八条 偽造変造ノ情ヲ知テ其度量衡ヲ販売シタル者ハ前条ノ刑三等ヲ減ス

第二百二十九条 ①商賈農工定規ヲ増減シタル度量衡ヲ所有シタル者ハ一月以上三月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②若シ其度量衡ヲ使用シテ利ヲ得タル者ハ詐欺取財ヲ以テ論ス

第二百三十条 人ノ嘱託ヲ受ケテ度量衡ヲ偽造シ又ハ変造シタル者ハ其嘱託シタル犯人ノ刑ニ照シ各一等ヲ減ス

  第八節 身分ヲ詐称スル罪

第二百三十一条 官署ニ対シ文書又ハ言語ヲ以テ其属籍身分氏名年齢職業ヲ詐称シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

第二百三十二条 官職位階ヲ詐称シ又ハ官ノ服飾徽章若クハ内外国ノ勲章ヲ僭用シタル者ハ十五日以上二月以下ノ軽禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

   第九節 公選ノ投棄ヲ偽造スル罪

第二百三十三条 公選ノ投票ヲ偽造シ又ハ其数ヲ増減シタル者ハ一月以上一年以下ノ軽禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百三十四条 賄賂ヲ以テ投票ヲ為サシメ又ハ賄賂ヲ受ケテ投票ヲ為シタル者ハ二月以上二年以下ノ軽禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百三十五条 投票ヲ検査シ及ヒ其数ヲ計算スル者其投票ヲ偽造シ又ハ増減シタル時ハ六月以上三年以下ノ軽禁錮ニ処シ四円以上四十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百三十六条 調害ヲ造リ投票ノ結局ヲ報告スル者其数ヲ増減シ其他詐偽ノ所為アル時ハ一年以上五年以下ノ軽禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

 第五章 健康ヲ害スル罪

   第一節 阿片烟ニ関スル罪

第二百三十七条 阿片烟ヲ輸入シ及ヒ製造シ又ハ之ヲ販売シタル者ハ有期徒刑ニ処ス

第二百三十八条 阿片烟ヲ吸食スルノ器具ヲ輸入シ及ヒ製造シ又ハ之ヲ販売シタル者ハ軽懲役ニ処ス

第二百三十九条 税関官吏情ヲ知テ阿片烟及ヒ其器具ヲ輸入セシメタル者ハ前二条ノ刑ニ照シ各一等ヲ加フ

第二百四十条 ①阿片烟ヲ吸食スル為メ房屋ヲ給与シテ利ヲ図ル者ハ軽懲役ニ処ス

②人ヲ引誘シテ阿片烟ヲ吸食セシメタル者亦同シ

第二百四十一条 阿片烟ヲ吸食シタル者ハ二年以上三年以下ノ重禁錮ニ処ス

第二百四十二条 阿片烟及ヒ吸食ノ器具ヲ所有シ又ハ受寄シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処ス

   第二節 飲料ノ浄水ヲ汚穢スル罪

第二百四十三条 人ノ飲料ニ供スル浄水ヲ汚穢シ因テ之ヲ用フルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ十一日以上一月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上五円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百四十四条 人ノ健康ヲ害ス可キ物品ヲ用ヒテ水質ヲ変シ又ハ腐敗セシメタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百四十五条 前条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ疾病又ハ死ニ致シタル者ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

   第三節 伝染病予防規則ニ関スル罪

第二百四十六条 伝染病予防ノ為メ設ケタル規則ニ違背シテ入港ノ船舶ヨリ上陸シ又ハ物品ヲ陸地ニ運搬シタル者ハ一月以上一年以下ノ軽禁錮ニ処シ又ハ二十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス

第二百四十七条 船長自ラ前条ノ罪ヲ犯シ又ハ人ノ犯スコトヲ知テ制セサル者ハ前条ノ刑三等ヲ加フ

第二百四十八条 伝染病流行ノ際予防規則ニ違背シテ流行地方ヨリ他処ニ出タル者ハ十五日以上六月以下ノ軽禁錮ニ処シ又ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス

第二百四十九条 獣類ノ伝染病流行ノ際予防規則ニ違背シテ獣類ヲ他処ニ出シタル者ハ十一日以上二月以下ノ軽禁錮ニ処シ又ハ五円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス

  第四節 危害品及ヒ健康ヲ害ス可キ物品製造ノ規則ニ関スル罪

第二百五十条 ①官許ヲ得スシテ危害ヲ生ス可キ物品ノ製造所ヲ創設シタル者ハ二十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス

②若シ健康ヲ害ス可キ物品ノ製造所ヲ創設シタル者ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス

第二百五十一条 官許ヲ得テ前条ニ記載シタル製造所ヲ創設スト雖モ危害ヲ予防シ健康ヲ保護スル規則ニ違背シタル者ハ前条ノ例ニ照シ各一等ヲ減ス

第二百五十二条 前二条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ疾病死傷ニ致シタル時ハ過失殺傷ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

   第五節 健康ヲ害ス可キ飲食物及ヒ薬剤ヲ販売スル罪

第二百五十三条 人ノ健康ヲ害ス可キ物品ヲ飲食物ニ混和シテ販売シタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス

第二百五十四条 規則ニ違背シテ毒薬劇薬ヲ販売シタル者ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス

第二百五十五条 前二条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ疾病又ハ死ニ致シタル者ハ過失殺傷ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

   第六節 私ニ医業ヲ為ス罪

第二百五十六条 官許ヲ得スシテ医業ヲ為シタル者ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス

第二百五十七条 前条ノ犯人治療ノ方法ヲ誤リ因テ人ヲ死傷ニ致シタル時ハ過失殺傷ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

 第六章 風俗ヲ害スル罪

第二百五十八条 公然猥褻ノ所行ヲ為シタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス

第二百五十九条 風俗ヲ害スル冊子図画其他猥褻ノ物品ヲ公然陳列シ又ハ販売シタル者ハ四円以上四十円以下ノ罰金ニ処ス

第二百六十条 賭場ヲ開張シテ利ヲ図リ又ハ博徒ヲ招結シタル者ハ三月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ十円以上百円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百六十一条 ①財物ヲ賭シテ現ニ博奕ヲ為シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス其情ヲ知テ房屋ヲ給与シタル者亦同シ但飲食物ヲ賭スル者ハ此限ニ在ラス

②賭博ノ器具財物其現場ニ在ル者ハ之ヲ没収ス

第二百六十二条 財物ヲ醵集シ富籤ヲ以テ利益ヲ僥倖スルノ業ヲ興行シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百六十三条 ①神祠仏堂墓所其他礼拝所ニ対シ公然不敬ノ所為アル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

②若シ説教又ハ礼拝ヲ妨害シタル者ハ四円以上四十円以下ノ罰金ニ処ス

 第七章 死屍ヲ毀棄シ及ヒ墳墓ヲ発掘スル罪

第二百六十四条 埋葬ス可キ死屍ヲ毀棄シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百六十五条 ①墳墓ヲ発掘シテ棺槨又ハ死屍ヲ見ハシタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②因テ死屍ヲ毀棄シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百六十六条 此章ニ記載シタル罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス

 第八章 商業及ヒ農工ノ業ヲ妨害スル罪

第二百六十七条 ①偽計又ハ威力ヲ以テ穀類其他衆人ノ需用ニ欠ク可カラサル食用物ノ売買ヲ妨害シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②前項ニ記載シタル以外ノ物品ノ売買ヲ妨害シタル者二等ヲ減ス

第二百六十八条 偽計又ハ威力ヲ以テ糶売又ハ入札ヲ妨害シタル者ハ十五日以上三月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百六十九条 偽計又ハ威力ヲ以テ農工ノ業ヲ妨害シタル者ハ亦前条ニ同シ

第二百七十条 農工ノ雇人其雇賃ヲ増サシメ又ハ農工業ノ景況ヲ変セシムル為メ雇主及ヒ他ノ雇人ニ対シ偽計威力ヲ以テ妨害ヲ為シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百七十一条 雇主其雇賃ヲ減シ又ハ農工業ノ景況ヲ変スル為メ雇人及ヒ他ノ雇主ニ対シ偽計威力ヲ以テ妨害ヲ為シタル者ハ亦前条ニ同シ

第二百七十二条 虚偽ノ風説ヲ流布シテ穀類其他衆人需用物品ノ価直ヲ昂低セシメタル者ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス

 第九章 官吏瀆職ノ罪

   第一節 官吏公益ヲ害スル罪

第二百七十三条 官吏其管掌ニ係ル法律規則ヲ公布施行セス又ハ他ノ官吏ノ公布施行ヲ妨害シタル者ハ二月以上六月以下ノ軽禁錮ニ処シ十円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百七十四条 兵隊ヲ要求シ及ヒ之ヲ使用スル権アル官吏地方ノ騒擾其他兵権ヲ以テ鎮撫ス可キ時ニ当リ其処分ヲ為サ丶ル者ハ三月以上三年以下ノ軽祭錮ニ処シ二十円以上百円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百七十五条 官吏規則ニ違背シテ商業ヲ為シタル者ハ二十円以上五百円以下ノ罰金ニ処ス

   第二節 官吏人民ニ対スル罪

第二百七十六条 官吏擅ニ威権ヲ用ヒ人ヲシテ其権利ナキ事ヲ行ハシメ又ハ其為ス可キ権利ヲ妨害シタル者ハ十一日以上二月以下ノ軽禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百七十七条 人ノ身体財産ヲ妨害スルノ犯人アルニ当リ予審判事検事警察官吏其報告ヲ受ケテ速ニ保護ノ処分ヲ為サ丶ル者ハ十五日以上三月以下ノ軽禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第二百七十八条 逮捕官吏法律ニ定メタル程式規則ヲ遵守セスシテ人ヲ逮捕シ又ハ不正ニ人ヲ監禁シタル者ハ十五日以上三月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス但監禁日数十日ヲ過クル毎ニ一等ヲ加フ

第二百七十九条 司獄官吏程式規則ヲ遵守セスシテ囚人ヲ監禁シ若クハ囚人ヲ出獄セシム可キノ時ニ至リ之ヲ放免セサル者ハ亦前条ノ例ニ同シ

第二百八十条 ①前二条ニ記載シタル官吏又ハ護送者囚人ニ対シ飲食衣服ヲ屏去シ其他苛刻ノ所為ヲ施シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ処シ四円以上四十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②因テ囚人ヲ死傷ニ致シタル時ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ一等ヲ加ヘ重キニ従テ処断ス

第二百八十一条 水火震災ノ際官吏囚人ノ監禁ヲ解クコトヲ怠リ因テ死傷ニ致シタル者ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ一等ヲ加フ

第二百八十二条 ①裁判官検事及ヒ警察官吏被告人ニ対シ罪状ヲ陳述セシムル為メ暴行ヲ加ヘ又ハ陵虐ノ所為アル者ハ四月以上四年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②因テ被告人ヲ死傷ニ致シタル時ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ一等ヲ加ヘ重キニ従テ処断ス

第二百八十三条 ①裁判官検察官故ナタシテ刑事ノ訴ヲ受理セス又ハ遷延シテ審理セサル者ハ十五日以上三月以下ノ軽禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②其民事ノ訴ニ係ル者亦同シ

第二百八十四条 ①官吏人ノ嘱託ヲ受ケ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ聴許シタル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処シ四円以上四十円以下ノ罰金ヲ附加ス

④因テ不正ノ処分ヲナシタル時ハ一等ヲ加フ

第二百八十五条 ①裁判官民事ノ裁判ニ関シテ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ聴許シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②因テ不正ノ裁判ヲ為シタル時ハ一等ヲ加フ

第二百八十六条 ①裁判官検事警察官吏刑事ノ裁判ニ関シテ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ聴許シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②因テ被告人ヲ曲庇シタル者ハ三月以上三年以下ノ重禁錮ニ処シ十円以上百円以下ノ罰金ヲ附加ス

③其被告人ヲ陥害シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ二十円以上二百円以下ノ罰金ヲ附加ス若シ枉断シタル所ノ刑此刑ヨリ重キ時ハ第二百二十一条第二百二十二条ノ例ニ照シテ反坐 ス

第二百八十七条 裁判官検事警察官吏賄賂ヲ収受聴許セスト雖モ情ニ徇カヒ又ハ恕ヲ挟サミ被告人ヲ曲庇陥害シタル者ハ亦前条ノ例ニ同シ

第二百八十八条 前数条ニ記載シタル賄賂已二収受シタル者ハ之ヲ没収シ費用シタル者ハ其価ヲ追徴ス

   第三節 官吏財産ニ対スル罪

第二百八十九条 ①官吏自ラ監守スル所ノ金穀物件ヲ窃取シタル者ハ軽懲役ニ処ス

②因テ官ノ文書簿冊ヲ増減変換シ又ハ毀棄シタル時ハ第二百五条ノ例ニ照シテ処断ス

第二百九十条 租税其他諸般ノ入額ヲ徴収スル官吏正数外ノ金穀ヲ徴収シタル者ハ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ズ

第二百九十一条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

 第三編 身体財産ニ対スル重罪軽罪

 第一章 身体ニ対スル罪

   第一節 謀殺故殺ノ罪

第二百九十二条 予メ謀テ人ヲ殺シタル者ハ謀殺ノ罪ト為シ死刑ニ処ス

第二百九十三条 毒物ヲ施用シテ人ヲ殺シタル者ハ謀殺ヲ以テ論シ死刑ニ処ス

第二百九十四条 故意ヲ以テ人ヲ殺シタル者ハ故殺ノ罪ト為シ無期徒刑ニ処ス

第二百九十五条 支解折割其他惨刻ノ所為ヲ以テ人ヲ故殺シタル者ハ死刑ニ処ス

第二百九十六条 重罪軽罪ヲ犯スニ便利ナル為メ又ハ已ニ犯シテ其罪ヲ免カル丶為メ人ヲ故殺シタル者ハ死刑ニ処ス

第二百九十七条 人ヲ殺スノ意ニ出テ詐称誘導シテ危害ニ陥レ死ニ致シタル者ハ故殺ヲ以テ論シ其予メ謀ル者ハ謀殺ヲ以テ論ス

第二百九十八条 謀殺故殺ヲ行ヒ誤テ他人ヲ殺シタル者ハ仍ホ諜故殺ヲ以テ論ス

   第二節 殴打創傷ノ罪

第二百九十九条 人ヲ殴打創傷シ因テ死ニ致シタル者ハ重懲役ニ処ス

第三百条 ①人ヲ殴打創傷シ其両目ヲ瞎シ両耳ヲ聾シ又ハ両肢ヲ折リ及ヒ舌ヲ断チ陰陽ヲ毀敗シ若クハ知覚精神ヲ喪失セシメ篤疾ニ致シタル者ハ軽懲役ニ処ス

②其一目ヲ瞎シ一耳ヲ聾シ又ハ一肢ヲ折リ其他身体ヲ残虧シ廃疾ニ致シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百一条 ①人ヲ殴打創傷シ二十日以上ノ時間疾病ニ罷リ又ハ職業ヲ営ムコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ処ス

②其疾病休業ノ時間二十日ニ至ラサル者ハ一月以上一年以下ノ重禁錮ニ処ス

③疾病休業ニ至ラスト雖モ身体ニ創傷ヲ成シタル者ハ十一日以上一月以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百二条 予メ謀テ人ヲ殴打創傷シ休業癈篤疾又ハ死ニ致シタル者ハ前数条ニ記載シタル刑ニ照シ各一等ヲ加フ

第三百三条 重罪軽罪ヲ犯スニ便利ナル為メ又ハ已二犯シテ其罪ヲ免カル丶為メ人ヲ殴打創傷シタル者ハ亦前条ノ例ニ同シ

第三百四条 殴打ニ因リ誤テ他人ヲ創傷シタル者ハ仍ホ殴打創傷ノ本刑ヲ科ス

第三百五条 二人以上共ニ人ヲ殴打創傷シタル者ハ現ニ手ヲ下シ傷ヲ成スノ軽重ニ従テ各自ニ其刑ヲ科ス若シ共殴シテ傷ヲ成スノ軽重ヲ知ルコト能ハサル時ハ其重傷ノ刑ニ照シ一等ヲ減ス但教唆者ハ減等ノ限ニ在ラス

第三百六条 二人以上共ニ人ヲ殴打スルニ当リ自ラ人ヲ傷セスト雖モ幇助シテ傷ヲ成サシメタル者ハ現ニ傷ヲ成シタル者ノ刑ニ一等ヲ減ス

第三百七条 健康ヲ害ス可キ物品ヲ施用シテ人ヲ疾苦セシメタル者ハ予メ謀テ殴打創傷スルノ例ニ照シテ処断ス

第三百八条 人ヲ殺スノ意ニ非スト雖モ詐称誘導シテ危害ニ陥レ因テ疾病死傷ニ致シタル者ハ殴打創傷ヲ以テ論ス

   第三節 殺傷ニ関スル宥恕及ヒ不論罪

第三百九条 自己ノ身体ニ暴行ヲ受クルニ因リ直チニ怒ヲ發シ暴行人ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス但不正ノ所為ニ因リ自ラ暴行ヲ招キタル者ハ此限ニ在ラス

第三百十条 殴打シテ互ニ創傷シ其手ヲ下スノ先後ヲ知ルコト能ハサル者ハ各其罪ヲ宥恕スルコトヲ得

第三百十一条 本夫其妻ノ姦通ヲ覚知シ姦所ニ於テ直チニ姦夫又ハ姦婦ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス但本夫先ニ姦通ヲ従容シタル者ハ此限ニ在ラス

第三百十二条 昼間故ナク人ノ住居シタル邸宅ニ入リ若クハ門戸牆壁ヲ踰越損壊セントスル者ヲ防止スル為メ之ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ宥恕ス

第三百十三条 前数条ニ記載シタル宥恕ス可キ罪ハ各本刑ニ照シ二等又ハ三等ヲ減ス

第三百十四条 身体生命ヲ正当ニ防衛シ已ムコトヲ得サルニ出テ暴行人ヲ殺傷シタル者ハ自己ノ為メニシ他人ノ為メニスルヲ分タス其罪ヲ論セス但不正ノ所為ニ因リ自ラ暴行ヲ招キタル者ハ此限ニ在ラス

第三百十五条 左ノ諸件ニ於テ已ムコトヲ得サルニ出テ人ヲ殺傷シタル者ハ其罪ヲ論セス

一 財産ニ対シ放火其他暴行ヲ為ス者ヲ防止スルニ出タル時

 二 盗犯ヲ防止シ又ハ盗贓ヲ取還スルニ出タル時

三 夜間故ナク人ノ住居シタル邸宅ニ入リ若クハ門戸牆壁ヲ踰越損壊スル者ヲ防止スルニ出タル時

第三百十六条 身体財産ヲ防衝スルニ出ルト雖モ己ムコトヲ得サルニ非スシテ害ヲ暴行人ニ加ヘ又ハ危害已ニ去リタル後ニ於テ勢ニ乗シ仍ホ害ヲ暴行人ニ加ヘタル者ハ不論罪ノ限ニ在ラス但情状ニ因リ第三百十三条ノ例ニ照シ其罪ヲ宥恕スルコトヲ得

   第四節 過失殺傷ノ罪

第三百十七条 疎虞懈怠又ハ規則慣習ヲ遵守セス過失ニ因テ人ヲ死ニ致シタル者ハ二十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス

第三百十八条 過失ニ因テ人ヲ創傷シ疾病休業ニ致シタル者ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス

第三百十九条 過失ニ因テ人ヲ創傷シ疾病休業二室ラシメタル者ハ二円以上五十円以下ノ罰金ニ処ス

   第五節 自殺ニ関スル罪

第三百二十条 人ヲ教唆シテ自殺セシメ又ハ嘱託ヲ受ケテ自殺人ノ為メニ手ヲ下シタル者ハ六月以上三年以下ノ軽禁錮ニ処シ十円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス其他自殺ノ補助ヲ為シタル者ハ一等ヲ減ス

第三百二十一条 自己ノ利ヲ図リ人ヲ教唆シテ自殺セシメタル者ハ重懲役ニ処ス

   第六節 擅ニ人ヲ逮捕監禁スル罪

第三百二十二条 擅ニ人ヲ逮捕シ又ハ私家ニ監禁シタル者ハ十一日以上二月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス但監禁日数十日ヲ過クル毎ニ一等ヲ加フ

第三百二十三条 擅ニ人ヲ監禁制縛シテ殴打拷責シ又ハ飲食衣服ヲ屏去シ其他苛刻ノ所為ヲ施シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三百二十四条 前条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ疾病死傷ニ致シタル者ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

第三百二十五条 擅ニ人ヲ監禁シ水火震災ノ際其監禁ヲ解クコトヲ怠リ因テ死傷ニ致シタル者ハ亦前条ノ例ニ同シ

   第七節 脅迫ノ罪

第三百二十六条 ①人ヲ殺サント脅迫シ又ハ人ノ住居シタル家屋ニ放火セント脅迫シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②殴打創傷其他暴行ヲ加ヘント脅迫シ又ハ財産ニ放火シ及ヒ毀壊劫掠セント脅迫シタル者ハ十一日以上二月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三百二十七条 兇器ヲ持シテ前条ノ罪ヲ犯シタル者ハ各一等ヲ加フ

第三百二十八条 親属ニ害ヲ加フ可キ事ヲ以テ脅迫シタル者ハ亦前二条ノ例ニ同シ

第三百二十九条 此節ニ記載シタル罪ハ脅迫ヲ受ケタル者又ハ其親属ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス

   第八節 堕胎ノ罪

第三百三十条 懐胎ノ婦女薬物其他ノ方法ヲ以テ堕胎シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百三十一条 薬物其他ノ方法ヲ以テ堕胎セシメタル者ハ亦前条ニ同シ因テ婦女ヲ死ニ致シタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百三十二条 医師穏婆又ハ薬商前条ノ罪ヲ犯シタル者ハ各一等ヲ加フ

第三百三十三条 懐胎ノ婦女ヲ威逼シ又ハ誆騙シテ堕胎セシメタル者ハ一年以上四年以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百三十四条 懐胎ノ婦女ナルコトヲ知テ殴打其他暴行ヲ加ヘ因テ堕胎ニ至ラシメタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ処ス共其堕胎セシムルノ意ニ出タル者ハ軽懲役ニ処ス

第三百三十五条 前二条ノ罪ヲ犯シ因テ婦女ヲ癈篤疾又ハ死ニ致シタル者ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

   第九節 幼者又ハ老疾者ヲ遺棄スル罪

第三百三十六条 ①八歳ニ満サル幼者ヲ遺棄シタル者ハ一月以ト二年以下ノ重禁錮ニ処ス

②自ラ生活スルコト能ハサル老者疾病者ヲ遺棄シタル者亦同シ

第三百三十七条 八歳ニ満サル幼者又ハ老疾者ヲ寥闃無人ノ地ニ遺棄シタル者ハ四月以上四年以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百三十八条 給料ヲ得テ人ノ寄託ヲ受ケ保養ス可キ者前二条ノ罪ヲ犯シタル時ハ各一等ヲ加フ

第三百三十九条 幼者老疾者ヲ遺棄シ因テ癖疾ニ致シタル者ハ軽懲役ニ処シ篤疾ニ致シタル者ハ重懲役ニ処シ死ニ致シタル者ハ有期徒刑ニ処ス

第三百四十条 ①自己ノ所有地又ハ看守ス可キ地内ニ遺棄セラレタル幼者老疾者アルコトヲ知テ之ヲ扶助セス又ハ官署ニ申告セサル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ処ス

②若シ疾病ニ罹リ昏倒スル者アルコトヲ知テ扶助セス又ハ申告セサル者亦同シ

   第十節 幼者ヲ略取誘拐スル罪

第三百四十一条 十二歳ニ満サル幼者ヲ略取シ又ハ誘拐シテ自ラ蔵匿シ若クハ他人ニ交付シタル者ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ十円以上百円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三百四十二条 十二歳以上二十歳ニ満サル幼者ヲ略取シテ自ラ蔵匿シ若クハ他人ニ交付シタル者ハ一年以上三年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス其誘拐シテ自ラ蔵匿シ若クハ他人ニ交付シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三百四十三条 略取誘拐シタル幼者ナルコトヲ知テ自己ノ家属僕婢ト為シ又ハ其他ノ名称ヲ以テ之ヲ収受シタル者ハ前二条ノ例ニ照シ各一等ヲ減ス

第三百四十四条 前数条ニ記載シタル罪ハ被害者又ハ其親属ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス但略取誘拐セラレタル幼者式ニ従テ婚姻ヲ為シタル時ハ告訴ノ効ナシ

第三百四十五条 二十歳ニ満サル幼者ヲ略取誘拐シテ外国人ニ交付シタル者ハ軽懲役ニ処ス

   第十一節 猥褻姦淫重婚ノ罪

第三百四十六条 十二歳ニ満サル男女ニ対シ猥褻ノ所行ヲ為シ又ハ十二歳以上ノ男女ニ対シ暴行脅迫ヲ以テ猥褻ノ所行ヲ為シタル者ハ一月以ト二年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三百四十七条 十二歳ニ満サル男女ニ対シ暴行脅迫ヲ以テ猥褻ノ所行ヲ為シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ四円以上四十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三百四十八条 十二歳以上ノ婦女ヲ強姦シタル者ハ軽懲役ニ処ス薬酒等ヲ用ヒ人ヲ昏睡セシメ又ハ精神ヲ錯乱セシメテ姦淫シタル者ハ強姦ヲ以テ論ス

第三百四十九条 十二歳ニ満サル幼女ヲ姦淫シタル者ハ軽懲役ニ処ス若シ強姦シタル者ハ重懲役ニ処ス

第三百五十条 前数条ニ記載シタル罪ハ被害者又ハ其親属ノ告訴ヲ侍テ其罪ヲ論ス

第三百五十一条 前数条ニ記載シタル罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス但強姦ニ因テ癈篤疾ニ致シタル者ハ有期徒刑ニ処シ死ニ致シタル者ハ無期徒刑ニ処ス

第三百五十二条 十六歳ニ満サル男女ノ淫行ヲ勧誘シテ媒合シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三百五十三条 ①有夫ノ婦姦通シタル者ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ処ス其相姦スル者亦同シ

②此条ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス但本夫先ニ姦通ヲ縦容シタル者ハ告訴ノ効ナシ

第三百五十四条 配偶者アル者重子テ婚姻ヲ為シタル時ハ六月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

   第十二節 誣告口及ヒ誹毀ノ罪

第三百五十五条 不実ノ事ヲ以テ人ヲ誣告シタル者ハ第二百二十条ニ記載シタル偽証ノ例ニ照シテ処断ス

第三百五十六条 誣告ヲ為スト雖モ被告人ノ推問ヲ始メサル前ニ於テ誣告者自首シタル時ハ本刑ヲ免ス

第三百五十七条 誣告ニ因テ被告人刑ニ処セラレタル時ハ第二百二十一条第二百二十二条ニ記載シタル例ニ照シテ処断ス

第三百五十八条 悪事醜行ヲ摘発シテ人ヲ誹毀シタル者ハ事実ノ有無ヲ問ハス左ノ例ニ照シテ処断ス

一 公然ノ演説ヲ以テ人ヲ誹毀シタル者ハ十一日以上三月以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

 二 書類画図ヲ公布シ又ハ雑劇偶像ヲ作為シテ人ヲ誹毀シタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第三百五十九条 死者ヲ誹毀シタル者ハ誣罔ニ出タルニ非サレハ前条ノ例ニ照シテ処断スルコトヲ得ス

第三百六十条 医師薬商穏婆又ハ代言人弁護人代書人若クハ神官僧侶其身分職業ニ於テ委託ヲ受ケタル事ニ因リ知得タル陰私ヲ漏告シタル者ハ誹毀ヲ以テ論シ十一日以上三月以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス但裁判所ノ呼出ヲ受ケテ事実ヲ陳述スル者ハ此限ニ在ラス

第三百六十一条 此節ニ記載シタル誹毀ノ罪ハ被害者又ハ死者ノ親属ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス

   第十三節 祖父母父母ニ対スル罪

第三百六十二条 ①子孫其祖父母父母ヲ謀殺故殺シタル者ハ死刑ニ処ス

②其自殺ニ関スル罪ハ凡人ノ刑ニ照ン二等ヲ加フ

第三百六十三条 子孫其祖父母父母ニ対シ殴打創傷ノ罪其他監禁脅迫遺棄誣告誹毀ノ罪ヲ犯シタル者ハ各本条ニ記載シタル凡人ノ刑ニ照シ二等ヲ加フ但癈疾ニ致シタル者ハ有期徒刑ニ処シ篤疾二致シタル者ハ無期徒刑ニ処シ死ニ致シタル者ハ死刑ニ処ス

第三百六十四条 ①子孫其祖父母父母ニ対シ衣食ヲ供給セス其他必要ナル奉養ヲ欠キタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②因テ疾病又ハ死ニ致シタル者ハ亦前条ノ例ニ同シ

第三百六十五条 祖父母父母ニ対シタル殺傷ノ罪ハ特別ノ宥恕及ヒ不論罪ノ例ヲ用フルコトヲ得ス但其犯ス時知ラサル者ハ此限ニ在ラス

 第二章 財産ニ対スル罪

   第一節 窃盗ノ罪

第三百六十六条 人ノ所有物ヲ窃取シタル者ハ窃盗ノ罪ト為シ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百六十七条 水火震災其他ノ変ニ乗シテ窃盗ヲ犯シタル者ハ六月以上五年以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百六十八条 門戸牆壁ヲ踰越損壊シ若クハ鎖鑰ヲ開キ邸宅倉庫ニ入リ窃盗ヲ犯シタル者ハ亦前条ニ同シ

第三百六十九条 二人以上共ニ前三条ノ罪ヲ犯シタル者ハ各二等ヲ加フ

第三百七十条 兇器ヲ携帯シテ人ノ住居シタル邸宅ニ入リ窃盗ヲ犯シタル者ハ軽懲役ニ処ス

第三百七十一条 自己ノ所有物ト雖モ典物トシテ他人ニ交付シ又ハ官署ノ命令ニ因リ他人ノ看守シタル時之ヲ窃取シタル者ハ窃盗ヲ以テ論ス

第三百七十二条 田野ニ於テ穀類莱菓其他ノ産物ヲ窃取シタル者ハ一月以一年以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百七十三条 山林ニ於テ竹木礦物其他ノ産物ヲ窃取シ又ハ川沢池沼湖海ニ於テ人ノ生養シ若クハ営業ニ関スル産物ヲ窃取シタル者ハ亦前条ニ同シ

第三百七十四条 牧場ニ於テ牧育ノ獣類ヲ窃取シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処ス

第三百七十五条 此節ニ記載シタル軽罪ヲ犯サントシテ未タ逐ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス

第三百七十六条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

第三百七十七条 ①祖父母父母夫妻子孫及ヒ其配偶者又ハ同居ノ兄弟姉妹互ニ其財物ヲ窃取シタル者ハ窃盗ヲ以テ論スルノ限ニ在ラス

②若シ他人共ニ犯シテ財物ヲ分チタル者ハ窃盗ヲ以テ論ス

   第二節 強盗ノ罪

第三百七十八条 人ヲ脅迫シ又ハ暴行ヲ加ヘテ財物ヲ強取シタル者ハ強盗ノ罪ト為シ軽懲役ニ処ス

第三百七十九条 強盗左ニ記載シタル情状アル者ハ一個毎ニ一等ヲ加フ

一 二人以上共ニ犯シタル時

二 兇器ヲ携帯シテ犯シタル時

第三百八十条 強盗人ヲ傷シタル者ハ無期徒刑ニ処シ死ニ致シタル者ハ死刑ニ処ス

第三百八十一条 強盗婦女ヲ強姦シタル者ハ無期徒刑ニ処ス

第三百八十二条 窃盗財ヲ得其取還ヲ拒ク為メ臨時暴行脅迫ヲ為シタル者ハ強盗ヲ以テ論ス

第三百八十三条 薬酒等ヲ用ヒ人ヲ酔迷セシメ其財物ヲ盗取シタル者ハ強盗ヲ以テ論シ軽懲役ニ処ス

第三百八十四条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シ減刑ニ因テ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

   第三節 遺失物埋蔵物ニ関スル罪

第三百八十五条 遺失及ヒ漂流ノ物品ヲ拾得テ隠匿シ所有主ニ還付セス又ハ官署ニ申告セサル者ハ十一日以上三月以下ノ重禁錮ニ処シ又ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

第三百八十六条 他人ノ所有地内ニ於テ埋蔵ノ物品ヲ掘得テ隠匿シタル者ハ亦前条ニ同シ

第三百八十七条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者第三百七十七条ニ掲ケタル親属ニ係ル時ハ其罪ヲ論セス

   第四節 家資分散ニ関スル罪

第三百八十八条 ①家資分散ノ際其財産ヲ蔵匿脱漏シ又ハ虚偽ノ負債ヲ増加シタル者ハ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ処ス

②情ヲ知テ虚偽ノ契約ヲ承諾シ若クハ其媒介ヲ為シタル者ハ一等ヲ減ス

第三百八十九条 家資分散ノ際牃簿ノ類ヲ蔵匿毀棄シ若クハ分散決定ノ後債主中ノ一人又ハ数人ニ其負債ヲ私償シテ他ノ債主ヲ害シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ処ス

  第五節 詐欺取財ノ罪及ヒ受寄財物ニ関スル罪

第三百九十条 ①人ヲ欺罔シ又ハ恐喝シテ財物若クハ証書類ヲ騙取シタル者ハ詐欺取財ノ罪ト為シ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ処シ四円以上四十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②因テ官私ノ文書ヲ偽造シ又ハ増減変換シタル者ハ偽造ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

第三百九十一条 幼者ノ知慮浅薄又ハ人ノ精神錯乱シタルニ乗シテ其財物若クハ証書類ヲ授与セシメタル者ハ詐欺取財ヲ以テ論ス

第三百九十二条 物件ヲ販売シ又ハ交換スルニ当リ其物質ヲ変シ若クハ分量ヲ偽テ人ニ交付シタル者ハ詐欺取財ヲ以テ論ス

第三百九十三条 ①他人ノ動産不動産ヲ冒認シテ販売交換シ又ハ抵当典物ト為シタル者ハ詐欺取財ヲ以テ論ス

②自己ノ不動産ト雖モ已ニ抵当典物ト為シタルヲ欺隠シテ他人ニ売与シ又ハ重子テ抵当典物ト為シタル者亦同シ

第三百九十四条 前数条ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

第三百九十五条 受寄ノ財物借用物又ハ典物其他委託ヲ受ケタル金額物件ヲ費消シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ処ス若シ騙取拐帯其他詐欺ノ所為アル者ハ詐欺取財ヲ以テ論ス

第三百九十六条 自己ノ所有ニ係ルト雖モ官署ヨリ差押ヘタル物件ヲ蔵匿脱漏シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処ス但家資分散ノ際此罪ヲ犯シタル者ハ第三百八十八条ノ例ニ照シテ処断ス

第三百九十七条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯サントシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス

第三百九十八条 此節ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者第三百七十七条ニ掲ケタル親属ニ係ル時ハ其罪ヲ論セス

   第六節 贓物ニ関スル罪

第三百九十九条 強窃盗ノ贓物ナルコトヲ知テ之ヲ受ケ又ハ寄蔵故買シ若クハ牙保ヲ為シタル者ハ一月以上三年以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第四百条 前条ノ罪ヲ犯シタル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

第四百一条 詐欺取財其他ノ犯罪ニ関シタル物件ナルコトヲ知テ之ヲ受ケ又ハ寄蔵故買シ若クハ牙保ヲ為シタル者ハ十二日以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

   第七節 放火失火ノ罪

第四百二条 火ヲ放テ人ノ住居シタル家屋ヲ焼燬シタル者ハ死刑ニ処ス

第四百三条 火ヲ放テ人ノ住居セサル家屋其他ノ建造物ヲ焼燬シタル者ハ無期徒刑ニ処ス

第四百四条 火ヲ放テ廃屋及ヒ柴草肥料等ヲ貯フル屋舎ヲ焼燬シタル者ハ重懲役ニ処ス

第四百五条 ①火ヲ放テ人ヲ乗載シタル船舶汽車ヲ焼燬シタル者ハ死刑ニ処ス

②其人ヲ乗載セサル船舶汽車ニ係ル時ハ重懲役ニ処ス

第四百六条 火ヲ放テ山林ノ竹木田野ノ穀麦又ハ露積シタル柴草竹木其他ノ物件ヲ焼燬シタル者ハ軽懲役ニ処ス

第四百七条 火ヲ放テ自己ノ家屋ヲ焼燬シタル者ハ二月以上二年以下ノ重禁錮ニ処ス

第四百八条 放火ノ罪ヲ犯シ軽罪ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス

第四百九条 火ヲ失シテ人ノ家屋財産ヲ焼燬シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

第四百十条 火薬其他激発ス可キ物品又ハ煤気井蒸気罐ヲ破裂セシメテ人ノ家屋財産ヲ毀壊シタル者ハ其故意ニ出ルト過失トヲ分チ放火失火ノ例ニ照シテ処断ス

   第八節 決水ノ罪

第四百十一条 ①堤防ヲ決潰シ又ハ水閘ヲ毀壊シテ人ノ住居シタル家屋ヲ漂失シタル者ハ無期徒刑ニ処ス

②若シ人ノ住居セサル家屋其他ノ建造物ヲ漂失シタル者ハ重懲役ニ処ス

第四百十二条 堤防ヲ決壊シ水閘ヲ毀壊シテ田圃礦坑牧場等ヲ荒廃シタル者ハ軽懲役ニ処ス

第四百十三条 他人ノ便益ヲ損シ又ハ自己ノ便益ヲ図ル為メ堤防ヲ決壊シ水閘ヲ毀壊シ其他水利ヲ妨害シタル者ハ一月以上二年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第四百十四条 過失ニ因テ水害ヲ起シタル者ハ失火ノ例ニ照シテ処断ス

   第九節 船舶ヲ覆没スル罪

第四百十五条 衝突其他ノ所為ヲ以テ人ヲ乗載シタル船舶ヲ覆没シタル者ハ死刑ニ処ス但船中死亡ナキ時ハ無期徒刑ニ処ス

第四百十六条 前条ノ所為ヲ以テ人ヲ乗載セサル船舶ヲ覆没シタル者ハ軽懲役ニ処ス

  第十節 家屋物品ヲ毀壊シ及ヒ動植物ヲ害スル罪

第四百十七条 ①人ノ家屋其他ノ建造物ヲ毀壊シタル者ハ一月以上五年以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス

②因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ殴打創傷ノ各本条ニ照シ重キニ従テ処断ス

第四百十八条 人ノ家屋ニ属スル牆壁及ヒ園池ノ装飾又ハ田圃樊囲牧場ノ柵欄ヲ毀壊シタル者ハ十一日以上三月以下ノ重禁錮ニ処シ又ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス

第四百十九条 人ノ稼穡竹木其他需用ノ植物ヲ毀損シタル者ハ十一日以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ又ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス

第四百二十条 土地ノ経界ヲ表シタル物件ヲ毀壊シ又ハ移転シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第四百二十一条 人ノ器物ヲ毀棄シタル者ハ十一日以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ又ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス

第四百二十二条 人ノ牛馬ヲ殺シタル者ハ一月以上六月以下ノ重禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス

第四百二十三条 前条ニ記載シタル以外ノ家畜ヲ殺シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス但被害者ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス

第四百二十四条 人ノ権利義務ニ関スル証書頬ヲ毀棄滅尽シタル者ハ二月以上四年以下ノ重禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス

 第四編 違警罪

第四百二十五条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ三日以上十日以下ノ拘留ニ処シ又ハ一円以上一円九十五銭以下ノ科料ニ処ス

一 規則ヲ遵守セスシテ火薬其他破裂ス可キ物品ヲ市街ニ運搬シタル者

 二 規則ヲ遵守セスシテ火薬其他破裂ス可キ物品又ハ自ラ火ヲ発ス可キ物品ヲ貯蔵シタル者

 三 官許ヲ得スシテ烟火ヲ製造シ又ハ販売シタル者

 四 人家稠密ノ場所ニ於テ濫リニ烟火其他火器ヲ玩ヒタル者

 五 蒸気器械其他烟筒火竈ヲ建造修理シ及ヒ掃除スル規則ニ違背シタル者

 六 官署ノ督促ヲ受ケテ崩壊セントスル家屋牆壁ノ修理ヲ為サ丶ル者

 七 官許ヲ得スシテ死屍ヲ解剖シタル者

 八 自己ノ所有地内ニ死屍アルコトヲ知テ官署ニ申告セス又ハ他所ニ移シタル者

 九 人ヲ殴打シテ創傷疾病ニ至ラサル者

 十 密ニ売淫ヲ為シ又ハ其媒合容止ヲ為シタル者

 十一 人ノ住居セサル家屋内ニ潜伏シタル者

 十二 定リタル住居ナク平常営生ノ産業ナクシテ諸方ニ徘徊スル者

 十三 官許ノ墓地外ニ於テ私ニ埋葬シタル者

 十四 違警罪ノ犯人ヲ曲庇スル為メ偽証シタル者但被告人偽証ノ為メ刑ヲ免カレタル時ハ第二百十九条ノ例ニ従フ

第四百二十六条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ二日以上五日以下ノ拘留ニ処シ又ハ五十銭以上一円五十銭以下ノ科料ニ処ス

一 人家ノ近傍又ハ山林田野ニ於テ濫リニ火ヲ焚ク者

 二 水火其他ノ変ニ際シ官吏ヨリ防禦ス可キノ求メヲ受ケ傍観シテ之ヲ肯セサル者

 三 不熟ノ菓物又ハ腐敗シタル飲食物ヲ販売シタル者

 四 健康ヲ保護スル為メ設ケタル規則又ハ伝染病予防規則ニ違背シタル者

 五 人ノ通行ス可キ場所ニアル危険ノ井溝其他凹所ニ蓋又ハ防囲ヲ為サ丶ル者

 六 路上ニ於テ犬其他ノ獣類ヲ嗾シ又ハ驚逸セシメタル者

 七 発狂人ノ看守ヲ怠リ路上ニ徘徊セシメタル者

 八 狂犬猛獣等ノ繋鎖ヲ怠リ路上ニ放チタル者

 九 変死人ノ検視ヲ受ケスシテ埋葬シタル者

 十 墓碑及ヒ路上ノ神仏ヲ毀損シ又ハ汚瀆シタル者

 十一 神祠仏堂其他公ノ建造物ヲ汚損シタル者

 十二 公然人ヲ罵詈嘲弄シタル者但訴ヲ待テ其罪ヲ論ス

第四百二十七条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ一日以上三日以下ノ拘留ニ処シ又ハ二十銭以上一円二十五銭以下ノ科料ニ処ス

一 濫リニ車馬ヲ疾駆シテ行人ノ妨害ヲ為シタル者

 二 制止ヲ肯セスシテ人ノ群集シタル場所ニ車馬ヲ牽キタル者

 三 夜中燈火ナクシテ車馬ヲ疾駆スル者

 四 木石等ヲ道路ニ堆積シテ防囲ヲ設ケス又ハ標識ノ点燈ヲ怠リタル者

五 瓦礫ヲ道路家屋園囿ニ投擲シタル者

 六 禽獣ノ死屍ヲ道路ニ棄擲シ又ハ取除カサル者

 七 汚穢物ヲ道路家屋園囿ニ投擲シタル者

 八 警察ノ規則ニ違背シテ工商ノ業ヲ為シタル者

九 医師穏婆事故ナクシテ急病人ノ招キニ応セサル者

十 死亡ノ申告ヲ為サスシテ埋葬シタル者

十一 流言浮説ヲ為シテ人ヲ誑惑シタル者

十二 妄ニ吉凶禍福ヲ説キ又ハ祈禱符咒等ヲ為シ人ヲ惑ハシテ利ヲ図ル者

十三 私有地外ヘ濫リニ家屋牆壁ヲ設ケ又ハ軒楹ヲ出シタル者

十四 官許ヲ待スシテ路傍又ハ河岸ニ床店等ヲ開キタル者

 十五 路上ノ植木市街ノ常燈及ヒ厠場等ヲ毀損シタル者

 十六 道路橋梁其他ノ場所ニ掲示シタル通行禁止及ヒ指道標ノ類ヲ毀棄汚損シタル者

第四百二十八条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ一日ノ拘留ニ処シ又ハ十銭以上一円以下ノ科料ニ処ス

一 官署ヨリ価額ヲ定メタル物品ヲ定価以上ニ販売シタル者

 二 渡船橋梁其他ノ場所ニ於テ定価以上ノ通行銭ヲ取リ又ハ故ナク通行ヲ妨ケタル者

 三 渡船橋梁其他通行銭ヲ払フ可キ場所ニ於テ其定価ヲ出サスシテ通行シタル者

 四 路上ニ於テ賭博ニ類スル商業ヲ為シタル者

 五 官許ヲ得スシテ劇場其他観物場ヲ開キ及ヒ其規則ニ違背シタル者

 六 溝渠下水ヲ毀損シ又ハ官署ノ督促ヲ受ケテ溝渠下水ヲ浚ハサル者

 七 制止ヲ肯セスシテ路傍ニ食物其他ノ商品ヲ羅列シタル者

 八 官許ヲ待スシテ獣類ヲ官有地ニ放チ又ハ牧畜シタル者

 九 身体ニ刺文ヲ為シ及ヒ之ヲ業トスル者

 十 他人ノ繋キタル牛馬其他ノ獣類ヲ解放シタル者

十一 他人ノ繋キタル舟筏ヲ解放シタル者

第四百二十九条 左ノ諸件ヲ犯シタル者ハ五銭以上五十銭以下ノ科料ニ処ス

一 橋梁又ハ堤防ノ害ト為ル可キ場所ニ舟筏ヲ繋キタル者

二 牛馬諸車其他物件ヲ通路ニ横タヘ又ハ木石薪炭等ヲ堆積シテ行人ノ妨害ヲ為シタル者

三 車馬ヲ並ヘ牽テ行人ノ妨害ヲ為シタル者

四 水路ニ於テ舟ヲ並ヘ通船ノ妨害ヲ為シタル者

五 氷雪塵芥等ヲ路上ニ投棄シタル者

六 官署ノ督促ヲ受ケテ道路ノ掃除ヲ為サ丶ル者

七 制止ヲ肯セスシテ路上ニ遊戯ヲ為シ行人ノ妨害ヲ為シタル者

八 牛馬ヲ牽キ又ハ繋クコトヲ忽カセニシテ行人ノ妨害ヲ為シタル者

九 出入ヲ禁止シタル場所ニ濫リニ出入シタル者

十 通行禁止ノ榜示ヲ犯シテ通行シタル者

十一 通路ニ於テ放歌高声ヲ発シテ制止ヲ肯セサル者

十二 酩酊シテ路上ニ喧騒シ又ハ酔臥シタル者

 十三 路上ノ常燈ヲ消シタル者

 十四 人家ノ牆壁ニ貼紙及ヒ楽書シタル者

十五 邸宅ノ番号標札招牌又ハ貸家売家ノ貼紙其他報告ノ榜標等ヲ毀損シタル者

 十六 他人ノ田野園囿ニ於テ莱菓ヲ採食シ又ハ花卉ヲ採折シタル者

 十七 公園ノ規則ヲ犯シタル者

十八 通路ナキ他人ノ田圃ヲ通行シ又ハ牛馬ヲ牽入レタル者

第四百三十条 前数条ニ記載スルノ外各地方ノ便宜ニヨリ定ムル所ノ違警罪ヲ犯シタル者ハ其罰則ニ従テ処断ス

 

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