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明治民法原規定(第1~第3編)

明治民法 第一・二・三編 原規定

 

(注 明治民法原規定を追加しました。このテキストは、公布当時そのままの姿の規定であって、漢字は旧字体で、仮名はカタカナで表現されている。なお、原文は縦書きであることを付言しておく。)

 

明治民法第一・二・三編

朕帝国議會ノ協賛ヲ経タル民法中修正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

  御 名 御 璽

    明治二十九年四月二十三日        内閣總理大臣 侯爵 伊藤博文

  侯爵 西郷從道

臣 侯爵 大山 巖

農商務大臣  子爵 榎本武揚

  伯爵 板垣退助

  伯爵 陸奥宗光

  子爵 渡邊國武

       芳川顯正

臣侯爵 西園寺公望

       白根専一

拓殖務大臣 子爵 高島鞆之助

 

法律第八十九号(官報 四月二十七日)

民法第一編第二編第三編別冊ノ通定ム

此法律施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム

明治二十三年法律第二十八号民法財産編財産取得編債權擔保編證拠編ハ此法律發布ノ日ヨリ廢止ス

(別冊)

民法

第一編 總 則
 
  第一章 人 
第一節 私權ノ享有(第一條)
第二節 能力(第二條 ~ 第二十條)
第三節 住所(第二十一條 ~ 第二十四條)
第四節 失踪(第二十五條 ~ 第三十二條) 
  第二章 法人 
第一節 法人ノ設立(第三十三條 ~ 第五十一條) 
 第二節 法人ノ管理(第五十二條 ~ 第六十七條)
第三節 法人ノ解散(第六十八條 ~ 第八十三條)
第四節 罰則(第八十四條)
  第三章 物(第八十五條 ~ 第八十九條)
  第四章 法律行為
第一節 總則(第九十條 ~ 第九十二條)
第二節 意思表示(第九十三條 ~ 第九十八條)
第三節 代理(第九十九條 ~ 第百十八條)
第四節 無効及ヒ取消(第百十九條 ~ 第百二十六條)
第五節 條件及ヒ期限(第百二十七條 ~ 第百三十七條)
  第五章 期間(第百三十八條 ~ 第百四十三條)
  第六章 時効
第一節 總則(第百四十四條 ~ 第百六十一條)
第二節 取得時効(第百六十二條 ~ 第百六十五條)
第三節 消滅時効(第百六十六條 ~ 第百七十四條)
 
    第二編 物 權
  第一章 總則(第百七十五條 ~ 第百七十九條)
  第二章 占有權
第一節 占有權ノ取得(第百八十條 ~ 第百八十七條)
第二節 占有權ノ効力(第百八十八條 ~ 第二百二條)
第三節 占有權ノ消滅(第二百三條 ~ 第二百四條)
第四節 準占有(第二百五條)
  第三章 所有權
第一節 所有權ノ限界(第二百六條 ~ 第二百三十八)
第二節 所有權ノ取得(第二百三十九條 ~ 第二百四十八條)
第三節 共有(第二百四十九條 ~ 第二百六十四條)
  第四章 地上權(第二百六十五條 ~ 第二百六十九條)
  第五章 永小作權(第二百七十條 ~ 第二百七十九條)
  第六章 地役權(第二百八十條 ~ 第二百九十四條)
  第七章 留置權(第二百九十五條 ~ 第三百二條)
  第八章 先取特權
第一節 總則(第三百三條 ~ 第三百五條)
第二節 先取特權ノ種類
  第一款 一般ノ先取特權(第三百六條 ~ 第三百十條)
  第二款 動産ノ先取特權(第三百十一條 ~ 第三百二十四條)
  第三款 不動産ノ先取特權(第三百二十五條 ~ 第三百二十八條)
第三節 先取特權ノ順位(第三百二十九條 ~ 第三百三十二條)
第四節 先取特權ノ効力(第三百三十三條 ~ 第三百四十一條)
  第九章 質權
第一節 總則(第三百四十二條 ~ 第三百五十一條)
第二節 動産質(第三百五十二條 ~ 第三百五十五條)
第三節 不動産質(第三百五十六條 ~ 第三百六十一條)
第四節 權利質(第三百六十二條 ~ 第三百六十八條)
  第十章 抵當權
第一節 總則(第三百六十九條 ~ 第三百七十二條)
第二節 抵當權ノ効力(第三百七十三條 ~ 第三百九十五條)
第三節 抵當權ノ消滅(第三百九十六條 ~ 第三百九十八條)
    第三編 債 權
  第一章 總則
第一節 債權ノ目的(第三百九十九條 ~ 第四百十一條)
第二節 債權ノ効力(第四百十二條 ~ 第四百二十六條)
第三節 多數當事者ノ債權
  第一款 總則(第四百二十七條)
  第二款 不可分債務(第四百二十八條 ~ 第四百三十一條)
  第三款 連帯債務(第四百三十二條 ~ 第四百四十五條)
  第四款 保證債務(第四百四十六條 ~ 第四百六十五條)
第四節 債權ノ譲渡(第四百六十六條 ~ 第四百七十三條)
第五節 債權ノ消滅
  第一款 辨濟(第四百七十四條 ~ 第五百四條)
  第二款 相殺(第五百五條 ~ 第五百十二條)
  第三款 更改(第五百十三條 ~ 第五百十八條)
  第四款 免除(第五百十九條)
  第五款 混同(第五百二十條)
  第二章 契約
第一節 總則
  第一款 契約ノ成立(第五百二十一條 ~ 第五百二十二條)
  第二款 契約ノ効力(第五百三十三條 ~ 第五百三十九條)
  第三款 契約ノ解除(第五百四十條 ~ 第五百四十八條)
第二節 贈與(第五百四十九條 ~ 第五百五十四條)
第三節 賣買
  第一款 總則(第五百五十五條 ~ 第五百五十九條)
  第二款 賣買ノ効力(第五百六十條 ~ 第五百七十八條)
  第三款 買戻(第五百七十九條 ~ 第五百八十五條)
第四節 交換(第五百八十六條)
第五節 消費貸借(第五百八十七條 ~ 第五百九十二條)
第六節 使用貸借(第五百九十三條 ~ 第六百條)
第七節 賃貸借
  第一款 總則(第六百十一條 ~ 第六百十四條)
  第二款 賃貸借ノ効力(第六百五條 ~ 第六百十六條)
  第三款 賃貸借ノ終了(第六百十七條 ~ 第六百二十二條)
第八節 雇傭(第六百二十三條 ~ 第六百三十一條)
第九節 請負(第六百三十二條 ~ 第六百四十二條)
第十節 委任(第六百四十三條 ~ 第六百五十六條)
第十一節 寄託(第六百五十七條 ~ 第六百六十六條)
第十二節 組合(第六百六十七條 ~ 第六百八十八條)
第十三節 終身定期金(第六百八十九條 ~ 第六百九十四條)
第十四節 和解(第六百九十五條 ~ 第六百九十六條)
  第三章 事務管理(第六百九十七條 ~ 第七百二條)
  第四章 不當利得(第七百三條 ~ 第七百八條)
  第五章 不法行為(第七百九條 ~ 第七百二十四條)

 

   第一編 總 則
  第一章 人
第一節 私權ノ享有

第一條 私權ノ享有ハ出生ニ始マル

第二條 外国人ハ法令又ハ條約ニ禁止アル場合ヲ除ク外私權ヲ享有ス

第二節 能力

第三條 滿二十年ヲ以テ成年トス

第四條 未成年者カ法律行為ヲ為スニハ其法定代理人ノ同意ヲ得ルコトヲ要
 ス但単ニ權利ヲ得又ハ義務ヲ免ルヘキ行為ハ此限ニ在ラス

 前項ノ規定ニ反スル行為ハ之ヲ取消スコトヲ得

第五條 法定代理人カ目的ヲ定メテ處分ヲ許シタル財産ハ其目的ノ範囲内ニ
 於テ未成年者随意ニ之ヲ處分スルコトヲ得目的ヲ定メスシテ處分ヲ許シタ
 ル財産ヲ處分スル亦同シ
第六條 一種又ハ數種ノ營業ヲ許サレタル未成年者ハ其營業ニ關シテハ成年
 者ト同一ノ能力ヲ有ス
 前項ノ場合ニ於テ未成年者カ未タ其營業ニ堪エサル事跡アルトキハ其法定
 代理人ハ親族編ノ規定ニ從ヒ其許可ヲ取消シ又ハ之ヲ制限スルコトヲ得
第七條 心神喪失ノ常況ニ在ル者ニ附テハ裁判所ハ本人、配偶者、四親等内
 ノ親族、戸主、 後見人、保佐人又ハ検事ノ請求ニ因リ禁治産ノ宣告ヲ為
 スコトヲ得

第八條 禁治産者ハ之ヲ後見ニ附ス

第九條 禁治産者ノ行為ハ之ヲ取消スコトヲ得ル

第十條 禁治産ノ原因止ミタルトキハ裁判所ハ第七條ニ掲ケタル者ノ請求ニ
 因リ其宣告ヲ取消スコトヲ要ス
第十一條 心身耗弱者、聾者、唖者、盲者及ヒ浪費者ハ準禁治産者トシテ之
 ニ保佐人ヲ附スルコトヲ得
第十二條 準禁治産者カ左ニ掲ケタル行為ヲ為スニハ其保佐人ノ同意ヲ得ル
 コトヲ要ス

  一 元本ヲ領収シ又ハ之ヲ利用スルコト

  二 借財又ハ保證ヲ為スコト

  三 不動産又ハ重要ナル動産ニ關スル權利ノ得喪ヲ目的トスル行為ヲ為
   スコト

  四 訴訟行為ヲ為スコト

  五 贈與、和解又ハ仲裁契約ヲ為スコト

  六 相續ヲ承認シ又ハ之ヲ抛棄スルコト

  七 贈與若クハ遺贈ヲ拒絶シ又ハ負擔附ノ贈與若クハ遺贈ヲ受諾スルコ
   ト

  八 新築、改築、増築又ハ大修繕ヲ為スコト 

  九 第六百二條定メタル期間ヲ超ユル賃貸借ヲ為スコト

 裁判所ハ場合ニ依リ準禁治産者カ前項ニ掲ケサル行為ヲ為スニモ亦其保佐人ノ同意アルコト要スル旨ヲ宣告スルコトヲ得

前二項ノ規定ニ反スル行為ハ之ヲ取消スコトヲ得

第十三條 第七條及ヒ第十條ノ規定ハ準禁治産ニ之ヲ準用ス

第十四條 妻カ左ニ掲ケタル行為ヲ為スニハ夫ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス

一 第十二條第一項第一号乃至第六号ニ掲ケタル行為ヲ為スコト

二 贈與若クハ遺贈ヲ受諾シ又ハ拒絶スルコト

三 身體ニ羈絆ヲ受クヘキ契約ヲ為スコト

 前項ノ規定ニ反スル行為ハ之ヲ取消スコトヲ得

第十五條 一種又ハ數種ノ營業ヲ許サレタル妻ハ其營業ニ關シテハ獨立人ト同一ノ能力ヲ有ス

第十六條 夫ハ其與ヘタル許可ヲ取消シ又ハ之ヲ制限スルコトヲ得但其取消又ハ制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス

第十七條 左ノ場合ニ於テハ妻ハ夫ノ許可ヲ受クルコトヲ要セス

  一 夫ノ生死分明ナラサルトキ

  二 夫カ妻ヲ遺棄為シタルトキ

  三 夫カ禁治産者又ハ準禁治産者ナルトキ

  四 夫カ瘋癲ノ為メ病院又ハ私宅ニ監置セラルトキ

  五 夫カ禁錮一年以上ノ刑ニ處セラレ其刑ノ執行中ニ在ルトキ

  六 夫婦ノ利益相反為ストキ

第十八條 夫カ未成年者ナルトキハ第四條ノ規定ニ依ルニ非サレハ妻ノ行為
 ヲ許可スルコトヲ得ス
第十九條 無能力者ノ相手方ハ其無能力者カ能力者トナリタル後之ニ對シテ
 一个月以上ノ期間内ニ其取消シ得ヘキ行為ヲ追認スルヤ否ヤヲ確答スヘキ
 旨ヲ催告スルコトヲ得若シ無能力者カ其期間内ニ確答ヲ發セサルトキハ其
 行為ヲ追認シタルモノト看做ス
 無能力者カ未タ能力者トナラサル時ニ於テ夫又ハ法定代理人ニ對シ前項ノ
 催告ヲ為スモ其期間内ニ確答ヲ發セサルトキ亦同シ但法定代理人ニ對シテ
 ハ其權限内ノ行為ニ附テノミ此催告ヲ為スコトヲ得
 特別ノ方式ヲ要スル行為ニ附イテハ右ノ期間内ニ其方式ヲ践ミタル通知ヲ 
 發セサルトキハ之ヲ取消シタルモノト看做ス
 準禁治産者及ヒ妻ニ對シテハ第一項ノ期間内ニ保佐人ノ同意又ハ夫ノ許可
 ヲ得テ其行為ヲ追認スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ得若シ準禁治産者又ハ妻カ 
 其期間内ニ右ノ同意又ハ許可ヲ得タル通知ヲ發セサルトキハ之ヲ取消シタ
 ルモノト看做ス 
第二十條 無能力者カ能力者タルコトヲ信セシムル為メ詐術ヲ用ヰタルトキ
 ハ其行為ヲ取消スコトヲ得ス
第三節 住所

第二十一條 各人ノ生活ノ本拠ヲ以テ其住所トス

第二十二條 住所ノ知レサル場合ニ於テハ居所ヲ以テ住所ト看做ス

第二十三條 日本ニ住所ヲ有セサル者ハ其日本人タルト外国人タルトヲ問ハ 
 ス日本ニ於ケル居所ヲ以テ其住所ト看做ス但法例ノ定ムル所ニ從ヒ其住所
 ノ法律ニ依ルヘキ場合ハ此限ニ在ラス
第二十四條 或行為ニ付キ假住所ヲ選定シタルトキハ其行為ニ關シテハ之ヲ
 住所ト看做ス
第四節 失踪
第二十五條 從來ノ住所又ハ居所ヲ去リタル者カ其財産ノ管理人ヲ置カサリ
 シトキハ裁判所ハ利害關係人又ハ検事ノ請求ニ因リ其財産ノ管理ニ付キ必
 要ナル處分ヲ命スルコトヲ得本人ノ不在中管理人ノ權限カ消滅シタルトキ
 亦同シ
 本人カ管理人ヲ置キタルトキハ裁判所ハ其管理人、利害關係人又ハ検事ノ
 請求ニ因リ其命令ヲ取消スコトヲ要ス
第二十六條 不在者カ管理人ヲ置キタル場合ニ於テ其不在者ノ生死分明ナラ
 サルトキハ裁判所ハ利害關係人又ハ検事ノ請求ニ因リ管理人ヲ改任スルコ
 トヲ得
第二十七條 前二條ノ規定ニ依リ裁判所ニ於テ選任シタル管理人ハ其管理ス
 ヘキ財産ノ目録ヲ調整スルコトヲ要ス但其費用ハ不在者ノ財産ヲ以テ之ヲ
 支辨ス
 不在者ノ生死カ分明ナラサル場合ニ於テ利害關係人又ハ検事ノ請求アルト
 キハ裁判所ハ不在者カ置キタル管理人ニモ前項ノ手續ヲ命スルコトヲ得
 右ノ外總テ裁判所カ不在者ノ財産ノ保存ニ必要ト認ムル處分ハ之ヲ管理人
 ニ命スルコトヲ得
第二十八條 管理人カ第百三條ニ定メタル權限ヲ超ユル行為ヲ必要ト為スト
 キハ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ為スコトヲ得不在者ノ生死分明ナラサル場合
 ニ於テ其管理人カ不在者ノ定メ置キタル權限ヲ超ユル行為ヲ必要ト為スト
 キ亦同シ
第二十九條 裁判所ハ管理人ヲシテ財産ノ管理及ヒ返還ニ付キ相當ノ擔保ヲ
 供セシムルコトヲ得
 裁判所ハ管理人ト不在者トノ關係其他ノ事情ニ依リ不在者ノ財産中ヨリ相
 當ノ報酬ヲ管理人ニ與フルコトヲ得
第三十條 不在者ノ生死カ七年間分明ナラサルトキハ裁判所ハ利害關係人ノ
 請求ニ因リ失踪ノ宣告ヲ為スコトヲ得
 戦地ニ臨ミタル者、沈没シタル船舶中ニ在リタル者其他死亡ノ原因タルヘ
 キ危難ニ遭遇シタル者ノ生死カ戦爭ノ止ミタル後船舶ノ沈没シタル後又ハ
 其他ノ危難ノ去リタル後三年間分明ナラサルトキ亦同シ
第三十一條 失踪ノ宣告ヲ受ケタル者ハ前條ノ期間滿了ノ時ニ死亡シタルモ
 ノト看做ス
第三十二條 失踪者ノ生存スルコト又ハ前條ニ定メタル時ト異ナリタル時ニ
 死亡シタルコトノ證明アルトキハ裁判所ハ本人又ハ利害關係人ノ請求ニ因
 リ失踪ノ宣告ヲ取消スコトヲ要ス但失踪ノ宣告後其取消前ニ善意ヲ以テ為
 シタル行為ハ其効力ヲ變セス
 失踪ノ宣告ニ因リテ財産ヲ得タル者ハ其取消ニ因リテ權利ヲ失フモ現ニ利
 益ヲ受クル限度ニ於テノミ其財産ヲ返還スル義務ヲ負フ
 
 第二章 法人

第一節 法人ノ設立

第三十三條 法人ハ本法其他ノ法律ノ規定ニ依ルニ依ルニ非サレハ成立スル
 コトヲ得ス
第三十四條 祭祀、宗教、慈善、学術、技藝其他公益ニ關スル社團又ハ財團
 ニシテ營利ヲ目的トセサルモノハ主務官廳ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト為スコ
 トヲ得
第三十五條 營利ヲ目的トスル社團ハ商事會社設立ノ條件ニ從ヒ法人ト為ス
 コトヲ得

 前項ノ社團法人ニハ總テ商事會社ニ關スル規定ヲ準用ス

第三十六條 外国法人ハ国、国ノ行政區画及ヒ商事會社ヲ除ク外其成立ヲ認
 許セス但法律又ハ條約ニ依リテ認許セラレタルモノハ此限ニ在ラス
 前項ノ規定ニ依リテ認許セラレタル外国法人ハ日本ニ於テ成立スル同種ノ
 者ト同一ノ私權ヲ有ス但外国人カ享有スルコトヲ得サル權利及ヒ法律又ハ
 條約中ニ特別ノ規定アルモノハ此限ニ在ラス
第三十七條 社團法人ノ設立者ハ定款ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ
  要ス

  一 目的

  二 名称

  三 事務所

  四 資産ニ關スル規定

  五 理事ノ任免ニ關スル規定

  六 社員タル資格ノ得喪ニ關スル規定

第三十八條 社團法人ノ定款ハ總社員ノ四分三以上ノ同意アルトキニ限リ之
 ヲ變更スルコトヲ得但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス

 定款ノ變更ハ主務官廳ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其効力ヲ生セス

第三十九條 財團法人ノ設立者ハ其設立ヲ目的トスル寄附行為ヲ以テ第三十
 七條第一号乃至第五号ニ掲ケタル事項ヲ定ムルコトヲ要ス
第四十條 財團法人ノ設立者カ其名称、事務所又ハ理事任免ノ方法ヲ定メス
 シテ死亡シタルトキハ裁判所ハ利害關係人又ハ検事ノ請求ニ因リ之ヲ定ム
 ルコトヲ要ス
第四十一條 生前處分ヲ以テ寄附行為ヲ為ストキハ贈與ニ關スル規定ヲ準用
 ス

 遺言ヲ以テ寄附行為ヲ為ストキハ遺贈ニ關スル規定ヲ準用ス

第四十二條 生前處分ヲ以テ寄附行為ヲ為シタルトキハ寄附財産ハ法人設立
 ノ許可アリタル時ヨリ法人ノ財産ヲ組成ス
 遺言ヲ以テ寄附行為ヲ為シタルトキハ寄附財産ハ遺言カ効力ヲ生シタル時
 ヨリ法人ニ歸屬シタルモノト看做ス
第四十三條 法人ハ法令ノ規定ニ從ヒ定款又ハ寄附行為ニ因リテ定マリタル
 目的ノ範囲内ニ於テ權利ヲ有シ義務ヲ負フ
第四十四條 法人ハ理事其他ノ代理人カ其職務ヲ行フニ付キ他人ニ加ヘタル
 損害ヲ賠償スル責ニ任ス
 法人ノ目的ノ範囲内ニ在ラサル行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキハ
 其事項ノ議決ヲ賛成シタル社員理事及ヒ之ヲ履行シタル理事其他ノ代理人
 連帯シテ其賠償ノ責ニ任ス
第四十五條 法人ハ其設立ノ日ヨリ二週間内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ登記
 ヲ為スコトヲ要ス
 法人ノ設立ハ其主タル事務所ノ所在地ニ於テ登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以
 テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス
 法人設立ノ後新ニ事務所ヲ設ケタルトキハ一週間内ニ登記ヲ為スコトヲ要
 ス

第四十六條 登記スヘキ事項左ノ如シ

  一 目的

  二 名称

  三 事務所

  四 設立許可ノ年月日

  五 存立時期ヲ定メタルトキハ其時期

  六 資産ノ總額

  七 出資ノ方法ヲ定メタルトキハ其方法

  八 理事ノ氏名、住所

 前項ニ掲ケタル事項中ニ變更ヲ生シタルトキハ一週間内ニ其登記ヲ為スコ
 トヲ要ス登記前ニ在リテハ其變更ヲ以テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス
第四十七條 第四十五條第一項及ヒ前條ノ規定ニヨリ登記スヘキ事項ニシテ
 官廳ノ許可ヲ要スルモノハ其許可書ノ到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算
 ス
第四十八條 法人カ其事務所ヲ移轉シタルトキハ舊所在地ニ於テハ一週間内
 ニ移轉ノ登記ヲ為シ新所在地ニ於テハ同期間内ニ第四十六條第一項各号ニ
 定メタル登記ヲ為スコトヲ要ス
 同一ノ登記所ノ管轄區域内ニ於テ事務所ヲ移轉シタルトキハ其移轉ノミノ
 登記ヲ為スコトヲ要ス
第四十九條 第四十五條第三項、第四十六條及ヒ前條ノ規定ハ外国法人カ日
 本ニ事務所ヲ設クル場合ニモ亦之ヲ準用ス但外国ニ於テ生シタル事項ニ附
 テハ其通知ノ到達シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
 外国法人カ初テ日本ニ事務所ヲ設ケタルトキハ其事務所ノ所在地ニ於テ登
 記ヲ為スマテハ他人ハ其法人ノ成立ヲ否認スルコトヲ得

第五十條 法人ノ住所ハ其主タル事務所ノ所在地ニアルモノトス

第五十一條 法人ハ設立ノ時及ヒ毎年初ノ三个月内ニ財産目録ヲ作リ常ニ之
 ヲ事務所ニ備ヘ置クコトヲ要ス但特ニ事業年度ヲ設クルモノハ設立ノ時及
 ヒ毎年度ノ終ニ於テ之ヲ作ルコトヲ要ス
 社團法人ハ社員名簿ヲ備ヘ置キ社員ノ變更アル毎ニ之ヲ訂正スルコトヲ要
 ス

    第二節 法人ノ管理

第五十二條 法人ニハ一人又ハ數人ノ理事ヲ置クコトヲ要ス

 理事數人アル場合ニ於テ定款又ハ寄附行為ニ別段ノ定メナキトキハ法人ノ
 事務ハ理事ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
第五十三條 理事ハ總テ法人ノ事務ニ付キ法人ヲ代表ス但定款ノ規定又ハ寄
 附行為ノ趣旨ニ違反スルコトヲ得ス社團法人ニ在リテハ總會ノ決議ニ從フ
 コトヲ要ス 
第五十四條 理事ノ代理權ニ加ヘタル制限ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗ス
 ルコトヲ得ス
第五十五條 理事ハ定款 寄附行為又ハ總會ノ決議ニ依リテ禁止セラレサル
 トキニ限リ特定ノ行為ノ代理ヲ他人ニ委任スルコトヲ得
第五十六條 理事ノ缺ケタル場合ニ於テ遅滯ノ為メ損害ヲ生スル虞アルトキ
 ハ裁判所ハ利害關係人又ハ検事ノ請求ニ因リ假理事ヲ選任ス
第五十七條 法人ト理事トノ利益相反スル事項ニ附テハ理事ハ代理權ヲ有セ
 サル此場合ニ於テハ前條ノ規定ニ依リテ特別代理人ヲ選任スルコトヲ要ス
第五十八條 法人ニハ定款、寄附行為又ハ總會ノ決議ヲ以テ一人又ハ數人ノ
 監事ヲ置クコトヲ得

第五十九條 監事ノ職務左ノ如シ

  一 法人ノ財産ノ状況ヲ監査スルコト

  二 理事ノ業務執行ノ状況ヲ監査スルコト

  三 財産ノ状況又ハ業務ノ執行ニ付キ不整ノ廉アルコトヲ發見シタルト
   キハ之ヲ總會又ハ主務官廳ニ報告スルコト

  四 前号ノ報告ヲ為ス為メ必要アルトキハ總會ヲ招集スルコト

第六十條 社團法人ノ理事ハ少ナクトモ毎年一囘社員ノ通常總會ヲ開クコト
 ヲ要ス
第六十一條 社團法人ノ理事ハ必要アリト認ムルトキハ何時ニテモ臨時總會
 ヲ招集スルコトヲ得
 總社員ノ五分ノ一以上ヨリ會議ノ目的タル事項ヲ示シテ請求ヲ為シタルト
 キハ理事ハ臨時總會ヲ招集スルコトヲ要ス但此定數ハ定款ヲ以テ之ヲ増減
 スルコトヲ得
第六十二條 總會ノ招集ハ少ナクトモ五日前ニ其會議ノ目的タル事項ヲ示シ
 定款ニ定メタル方法ニ從ヒテ之ヲ為スコトヲ要ス
第六十三條 社團法人ノ事務ハ定款ヲ以テ理事其他ノ役員ニ委任シタルモノ
 ヲ除ク外總テ總會ノ決議ニ依リテ之ヲ行フ
第六十四條 總會ニ於テハ第六十二條ノ規定ニ依リテ豫メ通知ヲ為シタル事
 項ニ附テノミ決議ヲ為スコトヲ得但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラ
 ス

第六十五條 各社員ノ表決權ハ平等ナルモノトス

 總會ニ出席セサル社員ハ書面ヲ以テ表決ヲ為シ又ハ代理人ヲ出スコトヲ得

 前二項ノ規定ハ定款ニ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス

第六十六條 社團法人ト或社員トノ關係ニ付キ議決ヲ為ス場合ニ於テハ其社
 員ハ表決權ヲ有セサル

第六十七條 法人ノ業務ハ圭務官廳ノ監督ニ屬ス

 主務官廳ハ何時ニテモ職權ヲ以テ法人ノ業務及ヒ財産ノ状況ヲ検査スルコ
 トヲ得

    第三節 法人ノ解散

第六十八條 法人ハ左ノ事由ニ因リテ解散ス

  一 定款又ハ寄附行為ヲ以テ定メタル解散事由ノ發生

  二 法人ノ目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不能

  三 破産

  四 設立許可ノ取消

 社團法人ハ前項ニ掲ケタル場合ノ外左ノ事由ニ因リテ解散ス

  一 總會ノ決議

  二 社員ノ缺亡

第六十九條 社團法人ハ總社員ノ四分ノ三以上ノ承諾アルニ非サレハ解散ノ
 決議ヲ為スコトヲ得ス但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
第七十條 法人カ其債務ヲ完濟スルコト能ハサルニ至リタルトキハ裁判所ハ
 理事若クハ債權者ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ破産ノ宣告ヲ為ス

 前項ノ場合ニ於テ理事ハ直チニ破産宣告ノ請求ヲ為スコトヲ要ス

第七十一條 法人カ其目的以外ノ事業ヲ為シ又ハ設立ノ許可ヲ得タル條件ニ
 違反シ其他公益ヲ害スヘキ行為ヲ為シタルトキハ主務官廳ハ其許可ヲ取消
 スコトヲ得
第七十二條 解散シタル法人ノ財産ハ定款又ハ寄附行為ヲ以テ指定シタル人
 ニ歸屬ス
 定款又ハ寄附行為ヲ以テ歸屬權利者ヲ指定セス又ハ之ヲ指定スル方法ヲ定
 メサリシトキハ理事ハ主務官廳ノ許可ヲ得テ其法人ノ目的ニ類似セル目的
 ノ為メニ其財産ヲ處分スルコトヲ得但社團法人ニ在リテハ總會ノ決議ヲ経
 ルコトヲ要ス

 前二項ノ規定ニ依リテ處分セラレサル財産ハ国庫ニ歸屬ス

第七十三條 解散シタル法人ハ清算ノ目的ノ範囲内ニ於テハ其清算ノ結了ニ
 至ルマテ尚ホ存續スルモノト看做ス
第七十四條 法人カ解散シタルトキハ破産ノ場合ヲ除ク外理事其清算人ト為
 ル但定款若クハ寄附行為ニ別段ノ定アルトキ又ハ總會ニ於テ他人ヲ選任シ
 タルトキハ此限ニ在ラス
第七十五條 前條ノ規定ニ依リテ清算人タル者ナキトキ又ハ清算人ノ缺ケタ
 ル為メ損害ヲ生スル虞アルトキハ裁判所ハ利害關係人若クハ検事ノ請求ニ
 ヨリ又ハ職權ヲ以テ清算人ヲ選任スルコトヲ得
第七十六條 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ利害關係人若クハ検事ノ請求
 ニ因リ又ハ職權ヲ以テ清算人ヲ解任スルコトヲ得
第七十七條 清算人ハ破産ノ場合ヲ除ク外解散後一週間内ニ其氏名、住所及
 ヒ解散ノ原因 年月日ノ登記ヲ為シ又何レノ場合ニ於テモ之ヲ主務官廳ニ
 届出ツルコトヲ要ス
 清算中ニ就職シタル清算人ハ就職後一週間内ニ其氏名、住所ノ登記ヲ為シ
 且ツ之ヲ主務官廳ニ届出ツルコトヲ要ス

第七十八條 清算人ノ職務左ノ如シ

  一 現務ノ結了

  二 債權ノ取立テ及ヒ債務ノ辨濟

  三 殘餘財産ノ引渡

 清算人ハ前項ノ職務ヲ行フ為メニ必要ナル一切ノ行為ヲ為スコトヲ得

第七十九條 清算人ハ其就職ノ日ヨリ二个月内ニ少クトモ三囘ノ公告ヲ以テ
 債權者ニ對シ一定ノ期間内ニ其請求ノ申出ヲ為スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ
 要ス但其期間ハ二个月ヲ下ルコトヲ得ス
 前項ノ公告ニハ債權者カ期間内ニ申出ヲ為ササルトキハ其債權ハ清算ヨリ
 除斥セラルヘキ旨ヲ附記スルコトヲ要ス但清算人ハ知レタル債權者ヲ除斥
 スルコトヲ得ス

 清算人ハ知レタル債權者ニハ各別ニ其申出ヲ催告スルコトヲ要ス

第八十條 前條ノ期間後ニ申出タル債權者ハ法人ノ債務完濟ノ後未タ歸屬權
 利者ニ引渡ササル財産ニ對シテノミ請求ヲ為スコトヲ得
第八十一條 清算中ニ法人ノ財産カ其債權ヲ完濟スルニ不足ナルコト分明ナ
 ルニ至リタルトキハ清算人ハ直チニ破産宣告ノ請求ヲ為シテ其旨ヲ公告ス
 ルコトヲ要ス
 清算人ハ破産管財人ニ其事務ヲ引渡シタルトキハ其任ヲ終ハリタルモノト
 ス
 本條ノ場合ニ於テ既ニ債權者ニ支拂ヒ又ハ歸屬權利者ニ引渡シタルモノア
 ルトキハ破産管財人ハ之ヲ取リ戻スコトヲ得

第八十二條 法人ノ解散及ヒ清算ハ裁判所ノ監督ニ屬ス

 裁判所ハ何時ニテモ職權ヲ以テ前項ノ監督ニ必要ナル検査ヲ為スコトヲ得

第八十三條 清算カ結了シタルトキハ清算人ハ之ヲ主務官廳ニ届出ツルコト
 ヲ要ス

    第四節 罰則

第八十四條 法人ノ理事、監事又ハ清算人ハ左ノ場合ニ於テハ五円以上二百
 円以下ノ過料ニ處セラレル

  一 本章ニ定メタル登記ヲ為スコトヲ怠リタルトキ

  二 第五十一條ノ規定ニ違反シ又ハ財産目録若クハ社員名簿ニ不正ノ記
   載ヲ為シタルトキ
  三 第六十七條又ハ第八十二條ノ場合ニ於テ主務官廳又ハ裁判所ノ検査
   ヲ妨ケタルトキ

  四 官廳又ハ總會ニ對シ不實ノ申立ヲ為シ又ハ事實ヲ隱蔽シタルトキ

  五 第七十條又ハ第八十一條ノ規定ニ反シ破産宣告ノ請求ヲ為スコトヲ
   怠リタルトキ
  六 第七十九條又ハ第八十一條ニ定メタル公告ヲ為スコトヲ怠リ又ハ不
   正ノ公告ヲ為シタルトキ

 

第三章 物

 

第八十五條 本法ニ於テ物トハ有體物ヲ謂フ

第八十六條 土地及ヒ其定着物ハ之ヲ不動産トス 

 此他ノ物ハ總テ之ヲ動産トス

 無記名債權ハ之ヲ動産ト看做ス

第八十七條 物ノ所有者カ其物ノ常用ニ供スル為メ自己ノ所有ニ屬スル他ノ
 物ヲ以テ之ニ附屬セシメタルトキハ其附屬セシメタル物ヲ從物トス

 從物ハ主物ノ處分ニ随フ

第八十八條 物ノ用方ニ從ヒ収取スル産出物ヲ天然果實トス

 物ノ使用ノ對價トシテ受クヘキ金錢其他ノ物ヲ法定果實トス

第八十九條 天然果實ハ其元物ヨリ分離スル時ニ之ヲ収取スル權利ヲ有スル
 者ニ屬ス

 法定果實ハ之ヲ収取スル權利ノ存續期間日割ヲ以テ之ヲ取得ス

 

第四章 法律行為
第一節 總則 
第九十條 公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無
 効トス
第九十一條 法律行為ノ當事者カ法令中ノ公ノ秩序ニ關セサル規定ニ異ナリ
 タル意思ヲ表示シタルトキハ其意思ニ從フ
第九十二條 法令中ノ公ノ秩序ニ關セサル規定ニ異ナリタル慣習アル場合ニ
 於テ法律行為ノ當事者カ之ニ依ル意思ヲ有セルモノト認ムルヘキトキハ其
 慣習ニ從フ
第二節 意思表示
第九十三條 意思表示ハ表意者カ其眞意ニ非サルコトヲ知リテ之ヲ為シタル
 為メ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ但相手方カ表意者ノ眞意ヲ知リ又ハ之ヲ
 知ルコトヲ得ヘカリシトキハ其意思表示ハ無効トス
第九十四條 相手方ト通シテ為シタル虚偽ノ意思表示ハ無効トス前項ノ意思
 表示ノ無効ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第九十五條 意思表示ハ法律行為ノ要素ニ錯誤アリタルトキハ無効トス但
 意者ニ重大ナル過失アリタルトキハ表意者自ラ其無効ヲ主張スルコトヲ得
 ス

第九十六條 詐欺又ハ強迫ニ因ル意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得

或ル人ニ對スル意思表示ニ付キ第三者カ詐欺ヲ行ヒタル場合ニ於テハ相手方カ其事實ヲ知リタルトキニ限リ其意思表示ヲ取消スコトヲ得

詐欺ニ因ル意思表示ノ取消ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス

第九十七條 隔地者ニ對スル意思表示ハ其通知ノ相手方ニ到達シタル時ヨリ
 其効力ヲ生ス
表意者カ通知ヲ發シタル後ニ死亡シ又ハ能力ヲ失フモ意思表示ハ之カ為メ
 ニ其効力ヲ妨ケラルルコトナシ
第九十八條 意思表示ノ相手方カ之ヲ受ケタル時ニ未成年者又ハ禁治産者ナ
 リシトキハ其意思表示ヲ以テ之ニ對抗スルコトヲ得ス但其法定代理人カ之
 ヲ知リタル後ハ此限ニ在ラス
第三節 代理
第九十九條 代理人カ其權限内ニ於テ本人ノ為メニスルコトヲ示シテ為シタ
 ル意思表示ハ直接ニ本人ニ對シテ其効力ヲ生ス前項ノ規定ハ第三者カ代理
 人ニ對シテ為シタル意思表示ニ之ヲ準用ス
第百條 代理人カ本人ノ為メニスルコトヲ示サスシテ為シタル意思表示ハ自
 己ノ為メニ為シタルモノト看做ス但相手方カ其本人ノ為メニスルコトヲ知
 リ又ハ之ヲ知ルコトヲ得ヘカリシトキハ前條第一項ノ規定ヲ準用ス
第百一條 意思表示ノ効力カ意思ノ欠缺、詐欺、強迫又ハ或事情ヲ知リタル
 コト若クハ之ヲ知ラサル過失アリタルコトニ因リテ影響ヲ受クヘキ場合ニ
 於テ其事實ノ有無ハ代理人ニ付キ之ヲ定ム

特定ノ法律行為ヲ為スコトヲ委託セラレタル場合ニ於テ代理人カ本人ノ指図ニ從ヒ其行為ヲ為シタルトキハ本人ハ其自ラ知リタル事情ニ付キ代理人ノ不知ヲ主張スルコトヲ得ス其過失ニ因リテ知ラサリシ事情ニ付キ亦同シ

第百二條 代理人ハ能力者タルコトヲ要セス

第百三條 權限ノ定ナキ代理人ハ左ノ行為ノミヲ為ス權限ヲ有ス
  一 保存行為
二 代理ノ目的タル物又ハ權利ノ性質ヲ變セサル範囲内ニ於テ其利用又
 ハ改良ヲ目的トスル行為
第百四條 委任ニ因ル代理人ハ本人ノ許諾ヲ得タルトキ又ハ已ムコトヲ得サ
 ル事由アルトキニ非サレハ復代理人ヲ選任スルコトヲ得ス
第百五條 代理人カ前條ノ場合ニ於テ復代理人ヲ選任シタルトキハ選任及
 監督ニ付キ本人ニ對シテ其責ニ任ス
代理人カ本人ノ指名ニ從ヒテ復代理人ヲ選任シタルトキハ其不適任又ハ不
 誠實タルコトヲ知リテ之ヲ本人ニ通知シ又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リタル
 ニ非サレハ其責ニ任セス
第百六條 法定代理人ハ其責任ヲ以テ復代理人ヲ選任スルコトヲ得但已ムコ
 トヲ得サル事由アリタルトキハ前條第一項ニ定メタル責任ノミヲ負フ
第百七條 復代理人ハ其權限内ノ行為ニ付キ本人ヲ代表ス
復代理人ハ本人及 ヒ第三者ニ對シテ代理人ト同一ノ權利義務ヲ有ス
第百八條 何人ト雖モ同一ノ法律行為ニ付キ其相手方ノ代理人ト為リ又ハ
 事者雙方ノ代理人トナルコトヲ得ス但債務ノ履行附テハ此限ニ在ラス
第百九條 第三者ニ對シテ他人ニ代理權ヲ與エタル旨ヲ表示為シタル者其代
 理權ノ範囲内ニ於テ其他人ト第三者トノ間ニ為シタル行為ニ附キ其責任ス
第百十條 代理人カ其權限外ノ行為ヲ為シタル場合ニ於テ第三者カ其權限ア
 リト信スヘキ正當ノ理由ヲ有セシトキハ前條ノ規定ヲ準用ス
第百十一條 代理權ハ左ノ事由ニ因リテ消滅ス
一 本人ノ死亡
二 代理人ノ死亡、禁治産又ハ破産此他委任ニ因ル代理權ハ委任ノ終了
   ニ因リテ消滅ス
第百十二條 代理權ノ消滅ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
 但第三者カ過失ニ因リテ其事實ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス
第百十三條 代理權ヲ有セサル者カ他人ノ代理人トシテ為シタル契約ハ本
 人カ其追認ヲ為スニ非サレハ之ニ對シテ其効力ヲ生セス
 追認又ハ其拒絶ハ相手方ニ對シテ之ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ其相手方ニ
 對抗スルコトヲ得ス但相手方カ其事實ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス
第百十四條 前條ノ場合ニ於テ相手方ハ相當ノ期間ヲ定メ其期間内ニ追認ヲ
 為スヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ本人ニ催告スルコトヲ得若シ本人カ其期間内
 ニ確答ヲ為ササルトキハ追認ヲ拒絶シタルモノト看做ス
第百十五條 代理權ヲ有セサル者ノ為シタル契約ハ本人ノ追認ナキ間ハ相手
 方ニ於テ之ヲ取消スコトヲ得但契約ノ當時相手方カ代理權ナキコトヲ知リ
 タルトキハ此限ニ在ラス
第百十六條 追認ハ別段ノ意思表示ナキトキハ契約ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生
 ス但第三者ノ權利ヲ害スルコトヲ得ス
第百十七條 他人ノ代理人トシテ契約ヲ為シタル者カ其代理權ヲ證明スルコ
 トヲ能ハス且本人ノ追認ヲ得サリシトキハ相手方ノ選擇ニ從ヒ之ニ對シテ
 履行又ハ損害賠償ノ責ニ任ス
 前項ノ規定ハ相手方カ代理權ナキコトヲ知リタルトキ若クハ過失ニ因リテ
 之ヲ知ラサリシトキ又ハ他人ノ代理人トシテ契約ヲ為シタル者カ其能力ヲ
 有セサリシトキハ之ヲ適用セス
第百十八條 単獨行為ニ附テハ其行為ノ當時相手方カ代理人ト称スル者ノ代
 理權ナクシテ之ヲ為スコトニ同意シ又ハ其代理權ヲ爭ハサリシトキニ限リ
 前五條ノ規定ヲ準用ス代理權ヲ有セサル者ニ對シ其同意ヲ得テ単獨行為ヲ
 為シタルトキ亦同シ
 
第四節 無効及ヒ取消
第百十九條 無効ノ行為ハ追認ニ因リテ其効力ヲ生セス但當事者カ其無効ナ
 ルコトヲ知リテ追認ヲ為シタルトキハ新ナル行為ヲ為シタルモノト看做ス
第百二十條 取消シ得ヘキ行為ハ無能力者若クハ瑕疵アル意思表示ヲ為シタ
 ル者、其代理人又ハ承繼人ニ限リ之ヲ取消スコトヲ得
 妻カ為シタル行為ハ夫モ亦之ヲ取消スコトヲ得
第百二十一條 取消シタル行為ハ初ヨリ無効ナリシモノト看做ス但無能力者
 ハ其行為ニ因リテ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テ償還ノ義務ヲ負
第百二十二條 取消シ得ヘキ行為ハ第百二十條ニ掲ケタル者カ之ヲ追認シタ
 ルトキハ初ヨリ有効ナリシモノト看做ス但第三者ノ權利ヲ害スルコトヲ得
 ス
第百二十三條 取消シ得ヘキ行為ノ相手方カ確定セル場合ニ於テ其取消又ハ
 追認ハ相手方ニ對スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス
第百二十四條 追認ハ取消ノ原因タル状況ノ止ミタル後之ヲ為スニ非サレハ
 其効ナシ禁治産者カ能力ヲ囘復シタル後其行為ヲ了知シタルトキハ其了知
 シタル後ニ非サレハ追認ヲ為スコトヲ得ス
前二項ノ規定ハ夫又ハ法定代理人カ追認ヲ為ス場合ニハ之ヲ適用セス
第百二十五條 前條ノ規定ニ依リ追認ヲ為スコトヲ得ル時ヨリ後取消シ得ヘ
 キ行為ニ付キ左ノ事實アリタルトキハ追認ヲ為シタルモノト看做ス但異議
 ヲ留メタルトキハ此限ニ在ラス
一 全部又ハ一部ノ履行
二 履行ノ請求
三 更改
四 擔保ノ供與
五 取消シ得ヘキ行為ニ因リテ取得シタル權利ノ全部又ハ一部ノ譲渡
六 強制執行
第百二十六條 取消權ハ追認ヲ為スコトヲ得ル時ワレ五年間之ヲ行ハサルト
 キハ時効ニ因リテ消滅ス行為ノ時ヨリ二十年ヲ経過シタルトキ亦同シ

 

第五節 條件及ヒ期限

 

第百二十七條 停止條件附法律行為ハ條件成就ノ時ヨリ其効力ヲ生ス解除條
 件附法律行為ハ條件成就ノ時ヨリ其効力ヲ失フ
當事者カ條件成就ノ効果ヲ其成就以前ニ遡ラシムル意思ヲ表示シタルトキ
 ハ其意思ニ從
第百二十八條 條件附法律行為ノ各當事者ハ條件ノ成否未定ノ間ニ於テ條件
 ノ成就為ニ因リ其行為ヨリ生スヘキ相手方ノ利益ヲ害スルコトヲ得ス
第百二十九條 條件ノ成否未定ノ間ニ於ケル當事者ノ權利義務ハ一般ノ規定
 ニ從ヒ之ヲ處分、相續、保存又ハ擔保スルコトヲ得
第百三十條 條件ノ成就ニ因リテ不利益ヲ受クヘキ當事者カ故意ニ其條件ノ
 成就ヲ妨ケタルトキハ相手方ハ其條件カ成就シタルモノト看做スコトヲ得
第百三十一條 條件カ法律行為ノ當時既ニ成就セル場合ニ於テ其條件カ停止
 條件テアルトキハ其法律行為ハ無條件トシ其條件カ解除條件テアルトキハ
 其法律行為ハ無効トス
 條件カ成就セスコトヲ法律行為ノ時ニ既ニ確定シテイタ場合ニ於テ其條件
 カ停止條件ナルトキハ其法律行為ハ無効トシ解除條件ナルトキハ無條件ト
 ス 
前二項ノ場合ニ於テ當事者カ條件ノ成就又ハ不成就ヲ知ラサル間ハ第百二
 十八條及ヒ第百二十九條ノ規定ヲ準用ス
第百三十二條 不法ノ條件ヲ附シタル法律行為ハ無効トス不法行為ヲ為ササ
 ルヲ以テ條件トスルモノ亦同シ

第百三十三條 不能ノ停止條件ヲ附シタル法律行為ハ無効トス

不能ノ解除條件ヲ附シタル法律行為ハ無條件トス

第百三十四條 停止條件附法律行為ハ其條件カ単ニ債務者ノ意思ノミニ係ル
 トキハ無効トス
第百三十五條 法律行為ニ始期ヲ附シタルトキハ其法律行為ノ履行ハ期限ノ
 到來スルマテ之ヲ請求スルコトヲ得ス
法律行為ニ終期ヲ附シタルトキハ其法律行為ノ効力ハ期限ノ到來シタル時
ニ於テ消滅ス

第百三十六條 期限ハ債務者ノ利益ノ為メニ定メタルモノト推定ス

期限ノ利益ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得但之カ為メニ相手方ノ利益ヲ害スルコ
トヲ得ス

第百三十七條 左ノ場合ニ於テハ債務者ハ期限ノ利益ヲ主張スルコトヲ得ス

一 債務者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキ

二 債務者カ擔保ヲ毀滅シ又ハ之ヲ減少シタルトキ

三 債務者カ擔保ヲ供スル義務ヲ負フ場合ニ於テ之ヲ供セサルトキ

 

 第六章 期間
第百三十八條 期間ノ計算法ハ法令、裁判上ノ命令又ハ法律行為ニ別段ノ定
 アル場合ヲ除ク外本章ノ規定ニ從フ
第百三十九條 期間ヲ定ムルニ時ヲ以テシタルトキハ即時ヨリ起算ス
第百四十條 期間ヲ定ムルニ日、週、月又ハ年ヲ以テシタルトキハ期間ノ初
 日ハ之ヲ算入セス但其期間カ午前零時ヨリ始マルトキハ此限ニ在ラス
第百四十一條 前條ノ場合ニ於テハ期間ノ末日ノ終了ヲ以テ期間ノ滿了トス第百四十二條 期間ノ末日カ大祭日、日曜日其他ノ休日ニ當タルトキハ其日
 ニ取引ヲ為ササル慣習アル場合ニ限リ期間ハ其翌日ヲ以テ滿了ス
第百四十三條 期間ヲ定ムルニ週、月又ハ年ヲ以テシタルトキハ暦ニ從ヒテ
 之ヲ算ス

週、月又ハ年ノ始ヨリ期間ヲ起算セサルトキハ其期間ハ最後ノ週、月又ハ年ニ於テ其起算日ニ應當スル日ノ前日ヲ以テ滿了ス但月又ハ年ヲ以テ期間ヲ定メタル場合ニ於テ最後ノ月ニ應當日ナキトキハ其月ノ末日ヲ以テ滿期日トス

 

第六章 時効

第一節 總則 
第百四十四條 時効ノ効力ハ其起算日ニ遡ル
第百四十五條 時効ハ當事者カ之ヲ援用スルニ非サレハ裁判所之ニ依リテ裁
 判ヲ為スコトヲ得ス

第百四十六條 時効ノ利益ハ豫メ之ヲ抛棄スルコトヲ得ス

第百四十七條 時効ハ左ノ事由ニ因リテ中斷ス

一 請求

二 差押、假差押又ハ假處分

三 承認

第百四十八條 前條ノ時効中斷ハ當事者及ヒ其承繼人ノ間ニ於テノミ其効力
 ヲ有ス
第百四十九條 裁判上ノ請求ハ訴ノ却下又ハ取下ノ場合ニ於テハ時効中斷ノ
 効力ヲ生セス
第百五十條 支拂命令ハ權利拘束カ其効力ヲ失フトキハ時効中斷ノ効力ヲ生
 セス
第百五十一條 和解ノ為メニスル呼出ハ相手方カ出頭セス又ハ和解ノ調ハサ
 ルトキハ一个月内ニ訴ヲ提起スルニ非サレハ時効中斷ノ効力ヲ生セス任意
 出頭ノ場合ニ於テ和解ノ調ハサルトキ亦同シ
第百五十二條 破産手續参加ハ債權者カ之ヲ取消シ又ハ請求カ却下セラレタ
 ルトキハ時効中斷ノ効力ヲ生セス
第百五十三條 催告ハ六个月内ニ裁判上ノ請求、和解ノ為メニスル呼出若ク
 ハ任意出頭 破産手續参加、差押、假差押又ハ假處分ヲ為スニ非サレハ時
 効中斷ノ効力ヲ生セス
第百五十四條 差押、假差押及ヒ假處分ハ權利者ノ請求ニ因リ又ハ法律ノ規
 定ニ從ハサルニ因リテ取消サレタルトキハ時効中斷ノ効力ヲ生セス
第百五十五條 差押、假差押及ヒ假處分ハ時効ノ利益ヲ受クル者ニ對シテ之
 ヲ為ササルトキハ之ヲ其者ニ通知シタル後ニ非サレハ時効中斷ノ効力ヲ生
 セス
第百五十六條 時効中斷ノ効力ヲ生スヘキ承認ヲ為スニハ相手方ノ權利ニ付
 キ處分ノ能力又ハ權限アルコトヲ要セス
第百五十七條 中斷シタル時効ハ其中斷ノ事由カ終了シタル時ヨリ更ニ其進
 行ヲ始ム
 裁判上ノ請求ニ因リテ中斷シタル時効ハ裁判ノ確定シタル時ヨリ更ニ其進
 行ヲ始ム
第百五十八條 時効ノ期間滿了前六个月内ニ於テ未成年者又ハ禁治産者カ法
 定代理人ヲ有セサリシトキハ其者カ能力者ト為リ又ハ法定代理人カ就職シ
 タル時ヨリ六个月内ハ之ニ對シテ時効完成セス
第百五十九條 無能力者カ其財産ヲ管理スル父、母又ハ後見人ニ對シテ有ス
 ル權利ニ付テハ其者カ能力者ト為リ又ハ後任ノ法定代理人カ就職シタル時
 ヨリ六个月内ハ時効完成セス
 妻カ夫ニ對シテ有スル權利ニ付テハ婚姻解消ノ時ヨリ六个月内亦同シ
第百六十條 相續財産ニ關シテハ相續人ノ確定シ、管理人ノ選任セラレ又ハ
 破産ノ宣告アリタル時ヨリ六个月内ハ時効完成セス
第百六十一條 時効ノ期間滿了ノ時ニ當タリ天災其他避クヘカラサル事變ノ
 為メ時効ヲ中斷スコト能ハサルトキハ其妨碍ノ止ミタル時ヨリ二週間内ハ
 時効完成セス

 第二節 取得時効

第百六十二條 二十年間所有ノ意思ヲ以テ平穩且公然ニ他人ノ物ヲ占有シタ
 ル者ハ其所有權ヲ取得ス
 十年間所有ノ意思ヲ以テ平穩且公然ニ他人ノ不動産ヲ占有シタル者カ其占
 有ノ始善意ニシテ且過失ナカリシトキハ其不動産ノ所有權ヲ取得ス
第百六十三條 所有權以外ノ財産權ヲ自己ノ為メニスル意思ヲ以テ平穩且公
 然ニ行使スル者ハ前條ノ區別ニ從ヒ二十年又ハ十年ノ後其權利ヲ取得ス
第百六十四條 第百六十二條ノ時効ハ占有者カ任意ニ其占有ヲ中止シ又ハ他
 人ノ為ニ之ヲ奪ハレタルトキハ中斷ス
第百六十五條 前條ノ規定ハ第百六十三條ノ場合ニ之ヲ準用ス

 

第三節 消滅時効

 

第百六十六條 消滅時効ハ權利ヲ行使スルコトヲ得ル時ヨリ進行ス

前項ノ規定ハ始期附又ハ停止條件附權利ノ目的物ヲ占有スル第三者ノ為メニ其占有ノ時ヨリ取得時効ノ進行スルコトヲ妨ケス但權利者ハ其時効ヲ中斷スル為メ何時ニテモ占有者ノ承認ヲ求ムルコトヲ得

第百六十七條 債權ハ十年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
 債權又ハ所有權ニ非サル財産權ハ二十年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
第百六十八條 定期金ノ債權ハ第一囘ノ辨濟期ヨリ二十年間之ヲ行ハサルニ
 因リテ消滅ス
 最後ノ辨濟期ヨリ十年間之ヲ行ハサルトキ亦同シ
 定期金ノ債權者ハ時効中斷ノ證ヲ得ル為メ何時ニテモ其債務者ノ承認書ヲ
 求ムルコトヲ
第百六十九條 年又ハ之ヨリ短キ時期ヲ以テ定メタル金錢其他ノ物ノ給付ヲ
 目的トスル債權ハ五年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
第百七十條 左ニ掲ケタル債權ハ三年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス
  一 醫師、産婆及ヒ藥劑師ノ治術、勤勞及ヒ調劑ニ關スル債權
  二 技師 棟梁及ヒ請負人ノ工事ニ關スル債權但此時効ハ其負擔シタル
   工事終了ノ時ヨリ之ヲ起算ス
第百七十一條 辨護士ハ事件終了ノ時ヨリ公證人及ヒ執達吏ハ其職務執行ノ
 時ヨリ三年ヲ経過シタルトキハ其職務ニ關シテ受取リタル書類ニ付キ其責
 ヲ免ル
第百七十二條 辨護士、公證人及ヒ執達吏ノ職務ニ關スル債權ハ其原因タル
 事件カ終了ノ時ヨリ二年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス但其事件中ノ各事
 項終了ノ時ヨリ五年ヲ経過シタルトキハ右ノ期間内ト雖モ其事項ニ關スル
 債權ハ消滅ス

第百七十三條 左ニ掲ケタル債權ハ二年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス

一 生産者、卸賣商人及ヒ小賣商人カ賣却シタル産物及ヒ商品ノ代價

二 居職人及ヒ製造人ノ仕事ニ關スル債權
三 生徒及ヒ習業者ノ教育、衣食及ヒ止宿ノ代料ニ關スル校主、塾
 主、教師及ヒ師匠ノ債權

第百七十四條 左ニ掲ケタル債權ハ一年間之ヲ行ハサルニ因リテ消滅ス

一 月又ハ之ヨリ短キ時期ヲ以テ定メタル雇人ノ給料

二 勞力者及ヒ藝人ノ賃金竝ニ其供給シタル物ノ代價

三 運送賃
四 旅店、料理店、貸席及ヒ娯遊場ノ宿泊料、飲食料、席料、木戸
 錢、入場料、消費物代價竝ニ立替金

五 動産ノ損料

 

第二編 物權
 第一章 總則

 

第百七十五條 物權ハ本法其他ノ法律ニ定ムルモノノ外之ヲ創設スルコトヲ
 得ス
第百七十六條 物權ノ設定及ヒ移轉ハ當事者ノ意思表示ノミニ因リテ其効力
 ヲ生ス
第百七十七條 不動産ニ關スル物權ノ得喪及ヒ變更ハ登記法ノ定ムルトコロニ從ヒ其登記ヲ為スニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第百七十八條 動産ニ關スル物權ノ譲渡ハ其動産ノ引渡アルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第百七十九條 同一物ニ付キ所有權及ヒ他ノ物權カ同一人ニ歸シタルトキハ其物權ハ消滅ス但其物又ハ其物權カ第三者ノ權利ノ目的タルトキハ此限ニ在ラス

所有權以外ノ物權及ヒ之ヲ目的トスル他ノ權利カ同一人ニ歸シタルトキハ其權利ハ消滅ス此場合ニ於テハ前項但書ノ規定ヲ準用ス

前二項ノ規定ハ占有權ニハ之ヲ適用セス
 
第二章 占有權
 第一節  占有權の取得
 
第百八十條 占有權ハ自己ノ為メニスル意思ヲ以テ物ヲ所持スルニ因リテ
 ヲ取得
第百八十一條 占有權ハ代理人ニ依リテ之ヲ取得スルコトヲ得
第百八十二條 占有權ノ譲渡ハ占有物ノ引渡シニ因リテ之ヲ為ス
 譲受人又ハ其代理人カ現ニ占有物ヲ所持スル場合ニ於イテハ占有權ノ譲渡
 ハ當事者ノ意思表示ノミニ因リテナスコトヲ得
第百八十三條 代理人カ自己ノ占有物ヲ爾後本人ノ為メニ占有スヘキ意思ヲ
 表示シタルトキハ本人ハコレニ因リテ占有權ヲ取得ス
第百八十四條 代理人ニ因リテ占有ヲ為ス場合ニ於テ本人カ其代理人ニ對シ
 爾後第三者ノ為メニ其物ヲ占有スヘキ旨ヲ命シ第三者之ヲ承諾シタルトキ
 ハ其第三者ハ占有權ヲ取得ス
第百八十五條 權原ノ性質上占有者ニ所有ノ意思ナキモノトスル場合ニ於イ
 テハ其占有者カ自己ニ占有ヲ為サシメタル者ニ對シ所有ノ意思アルコトヲ
 表示シ又ハ新權原ニ因リ更ニ所有ノ意思ヲ以テ占有ヲ始ムルニ非サレハ占
 有ハ其性質ヲ變セス
第百八十六條 占有者ハ所有ノ意思ヲ以テ善意、平穩且公然ニ占有ヲ為スモ
 ノト推定ス
 前後両時ニ於テ占有ヲ為シタル證拠アルトキハ占有ハ其間繼續シタルモノ
 ト推定ス
第百八十七條 占有者ノ承繼人ハ其選擇ニ從ヒ自己ノ占有ノミヲ主張シ又ハ
 自己ノ占有ニ前主ノ占有ヲ併セテ之ヲ主張スルコトヲ得 

前主ノ占有ヲ併セテ主張スル場合ニ於テハ其瑕疵ヲモ承繼ス

 

第二節 占有權ノ効力

 

第百八十八條 占有者カ占有物ノ上ニ行使スル權利ハ之ヲ適法ニ有スルモノト推定ス

第百八十九條 善意ノ占有者ハ占有物ヨリ生スル果實ヲ取得ス
善意ノ占有者カ本權ノ訴ニ於テ敗訴シタルトキハ其起訴ノ時乃ヨリ悪意ノ占有者ト看做ス
第百九十條 悪意ノ占有者ハ果實ヲ返還シ且既ニ消費シ、過失ニ因リテ毀損シ又ハ収取ヲ怠リタル果實ノ代價ヲ償還スル義務ヲ負フ
前項ノ規定ハ強暴又ハ隱祕ニ因ル占有者ニ之ヲ準用ス
第百九十一條 占有物カ占有者ノ責ニ歸スヘキ事由ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ悪意ノ占有者ハ其囘復者ニ對シ其損害ノ全部ノ賠償ヲスル義務ヲ負ヒ善意ノ占有者ハ其滅失又ハ毀損ニ因リテ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テ賠償ヲ為ス義務ヲ負フ但所有ノ意思ナキ占有者ハ其善意ナルトキト雖モ全部ノ賠償ヲ為スコトヲ要ス
第百九十二條 平穩且公然ニ動産ノ占有ヲ始メタル者カ善意ニシテ且過失ナキトキハ即時ニ其動産ノ上ニ行使スル權利ヲ取得ス
第百九十三條 前條ノ場合ニ於テ占有物カ盗品又ハ遺失物ナルトキハ被害者又ハ遺失主ハ盗難又ハ遺失ノ時ヨリ二年間占有者ニ對シテ其物ノ囘復ヲ請求スルコトヲ得
第百九十四條 占有者カ盗品又ハ遺失物ヲ競賣若クハ公ノ市場ニ於テ又ハ其物ト同種ノ物ヲ販賣スル商人ヨリ善意ニテ買受ケタルトキハ被害者又ハ遺失主ハ占有者カ拂ヒタル代價ヲ辨償スルニ非サレハ其物ヲ囘復スルコトヲ得ス第百九十五條 他人カ飼養セシ家畜外ノ動物ヲ占有スル者ハ其占有ノ始善意ニシテ且逃失ノ時ヨリ一个月内ニ飼養主ヨリ囘復ノ請求ヲ受ケサルトキハ其動物ノ上ニ行使スル權利ヲ取得ス
第百九十六條 占有者カ占有物ヲ返還スル場合ニ於テハ其物ノ保存ノ為メニ費シタル金額其他ノ必要費ヲ囘復者ヨリ償還セシムルコトヲ得但占有者カ果實ヲ取得シタル場合ニ於テハ通常ノ必要費ハ其負擔ニ歸ス
占有者カ占有物ノ改良ノ為メニ費シタル金額其他ノ有益費ニ付テハ其價格ノ増加カ現存スル場合ニ限リ囘復者ノ選擇ニ從ヒ其費シタル金額又ハ増價額ヲ償還セシムルコトヲ得但悪意ノ占有者ニ對シテハ裁判所ハ囘復者ノ請求ニ因リ之ニ相當ノ期限ヲ許與スルコトヲ得
第百九十七條 占有者ハ後五條ノ規定ニ從ヒ占有ノ訴ヲ提起スルコトヲ得他人ノ為メニ占有ヲ為ス者亦同シ
第百九十八條 占有者カ其占有ヲ妨害セラレタルトキハ占有保持ノ訴ニ依リ其妨害ノ停止及ヒ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得
第百九十九條 占有者カ其占有ヲ妨害セラルル虞アルトキハ占有保全ノ訴ニ依リ其妨害ノ豫防又ハ損害賠償ノ擔保ヲ請求スルコトヲ得
第二百條 占有者カ其占有ヲ奪ワレタルトキハ占有囘収ノ訴ニ依リ其物ノ返還及ヒ損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得
占有囘収ノ訴ハ侵奪者ノ特定承繼人ニ對シテ提起スルコトヲ得ス但其承繼人カ侵奪ノ事實ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス
第二百一條 占有保持ノ訴ハ妨害ノ存スル間又ハ其止ミタル後一年内ニ之ヲ提起スルコト要ス但工事ニ因リ占有物ニ損害ヲ生シタル場合ニ於テ其工事着手ノ時ヨリ一年ヲ経過シ又ハ其工事ノ竣成シタルトキハ之ヲ提起スルコトヲ得ス
占有保全ノ訴ハ妨害ノ危険ノ存スル間ハ之ヲ提起スルコトヲ得但工事ニ因リ占有物ニ損害ヲ生スル虞アルトキハ前項但書ノ規定ヲ準用ス
占有囘収ノ訴ハ侵奪ノ時ヨリ一年内ニ之ヲ提起スルコトヲ要ス

第二百二條 占有ノ訴ハ本權ノ訴ト互ニ相妨クルコトナシ

占有ノ訴ハ本權ニ關スル理由ニ基キテ之ヲ裁判スルコトヲ得ス

 

第三節 占有權ノ消滅

 

第二百三條 占有權ハ占有者カ占有ノ意思ヲ抛棄シ又ハ占有物ノ所持ヲ失フ
 ニ因リテ消滅ス但占有者カ占有囘収ノ訴ヲ提起シタルトキハ此限ニ在ラス
第二百四條 代理人ニ依リテ占有ヲ為ス場合ニ於テハ占有權ハ左ノ事由ニ因
 リテ消滅ス
  一 本人カ代理人ヲシテ占有ヲ為サシムル意思ヲ抛棄シタルコト
  二 代理人カ本人ニ對シ爾後自己又ハ第三者ノ為メニ占有物ヲ所持スヘ
   キ意思ヲ表示シタルコト
  三 代理人カ占有物ノ所持ヲ失ヒタルコト占有權ハ代理權ノ消滅ノミニ
   因リテ消滅セス
第四節 準占有
第二百五條 此章ノ規定ハ自己ノ為メニスル意思ヲ以テ財産權ノ行使ヲ為ス
 場合ニ之ヲ準用ス

 

第三章 所有權
第一節 所有權ノ限界

第二百六條 所有者ハ法令ノ制限内ニ於テ自由ニ其所有物ノ使用、収益及

ヒ處分ヲ為ス權利ヲ有ス

第二百七條 土地ノ所有權ハ法令ノ制限内ニ於テ其土地ノ上下ニ及フ
第二百八條 數人ニテ一棟ノ建物ヲ區分シ各其一部ヲ所有スルトキハ建物及ヒ其附屬物ノ共用部分ハ其共有ニ屬スルモノト推定ス
共用部分ノ修繕費其他ノ負擔ハ各自ノ所有部分ノ價格ニ應シテ之ヲ分ツ
第二百九條 土地ノ所有者ハ疆界又ハ其近傍ニ於テ牆壁若クハ建物ヲ築造シ又ハ之ヲ修繕スル為メ必要ナル範囲内ニ於テ隣地ノ使用ヲ請求スルコトヲ得但隣人ノ承諾アルニ非サレハ其住家ニ立チ入ルコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ隣人カ損害ヲ受ケタルトキハ其償金ヲ請求スルコトヲ得
第二百十條 或土地ガ他ノ土地ニ囲繞セラレテ公路ニ通セサルトキハ其土地ノ所有者ハ公公路ニ至ル為メ囲繞地ヲ通行スルコトヲ得
池沼、河渠若クハ海洋ニ由ルニ非サレハ他ニ通スルコト能ハス又ハ崖岸アリテ土地ト公路ト著シキ高低ヲ為ストキ亦同シ
第二百十一條 前條ノ場合ニ於テ通行ノ場所及ヒ方法ハ通行權ヲ有スル者ノ為メニ必要ニシテ且囲繞地ノ為メニ損害最モ少ナキモノヲ選フコトヲ要ス
通行權ヲ有スル者ハ必要アルトキハ通路ヲ開設スルコトヲ得
第二百十二條 通行權ヲ有スル者ハ其通行地ノ損害ニ對シテ償金ヲ拂フコヲ要ス但通路開設ノ為メニ生シタル損害ニ對スルモノヲ除ク外一年毎ニ其償金ヲ拂ウコトヲ得
第二百十三條 分割ニ因リ公路ニ通セサル土地カ生シタルトキハ其土地ノ所有者ハ公路ニ至ル為メ他ノ分割者ノ所有地ノミヲ通行スルコトヲ得此場合ニ於テハ償金ヲ拂ウコトヲ要セス
前項ノ規定ハ土地ノ所有者カ其土地ノ一部ヲ譲渡シタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百十四條 土地ノ所有者ハ隣地ヨリ水ノ自然ニ流レ來ルヲ妨クルコトヲ得ス
第二百十五條 水流カ事變ニ因リ低地ニ於テ阻塞シタルルトキハ高地ノ所有者ハ自費ヲ以テ其疎通ニ必要ナル工事ヲ為スコトヲ得
第二百十六條 甲地ニ於テ貯水、排水又ハ引水ノ為メニ設ケタル工作物ノ破潰又ハ阻塞ニ因リテ乙地ニ損害ヲ及ホシ又ハ及ホス虞アルトキハ乙地ノ所有者ハ甲地ノ所有者ヲシテ修繕若クハ疎通ヲ為サシメ又必要アルトキハ豫防工事ヲ為サシムルコトヲ得
第二百十七條 前二條ノ場合ニ於テ費用ノ負擔ニ付キ別段ノ慣習アルトキハ其慣習ニ從フ
第二百十八條 土地ノ所有者ハ直チニ雨水ヲ隣地ニ注瀉セシムヘキ屋根其他ノ工作物ヲ設クルコトヲ得ス
第二百十九條 溝渠其他ノ水流地ノ所有者ハ對岸ノ土地カ他人ノ所有ニ屬スルトキハ其水路又ハ幅員ヲ變スルコトヲ得ス
両岸ノ土地カ水流地ノ所有者ニ屬スルトキハ其所有者ハ水路及ヒ幅員ヲ變スルコトヲ得但下口ニ於テ自然ノ水路ニ復スルコトヲ要ス
前二項ノ規定ニ異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ從フ
第二百二十條 高地ノ所有者ハ浸水地ヲ乾カス為メ又ハ家用若クハ農工業用ノ餘水ヲ排泄スル為メ公路、公流又ハ下水道ニ至ルマテ低地ニ水ヲ通過セシムルコトヲ得但低地ノ為メニ損害最モ少キ場所及ヒ方法ヲ選フコトヲ要ス
第二百二十一條 土地ノ所有者ハ其所有地ノ水ヲ通過セシムル為メ高地又ハ低地ノ所有者カ設ケタル工作物ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ他人ノ工作物ヲ使用スル者ハ其利益ヲ受クル割合ニ應シテ工作物ノ設置及ヒ保存ノ費用ヲ分擔スルコトヲ要ス
第二百二十二條 水流地ノ所有者ハ堰ヲ設クル需要アルトキハ其堰ヲ對岸ニ附着セシムルコトヲ得但之ニ因リテ生シタル損害ニ對シテ償金ヲ拂ウコトヲ要ス
對岸ノ所有者ハ水流地ノ一部カ其所有ニ屬スルトキハ右ノ堰ヲ使用スルコトヲ得但前條ノ規定ニ從ヒ費用ヲ分擔スルコトヲ要ス
第二百二十三條 土地ノ所有者ハ隣地ノ所有者ト共同ノ費用ヲ以テ疆界ヲ標示スヘキ物ヲ設クルコトヲ得
第二百二十四條 界標ノ設置及ヒ保存ノ費用ハ相隣者平分シテ之ヲ負擔ス但測量ノ費用ハ其土地ノ廣狹ニ應シテ之ヲ分擔ス
第二百二十五條 二棟ノ建物カ其所有者ヲ異ニシ且其間ニ空地アルトキハ各所有者ハ他ノ所有者ト共同ノ費用ヲ以テ其疆界ニ囲障ヲ設クルコトヲ得
當事者ノ協調ハサルトキハ前項ノ囲障ハ板塀又ハ竹垣ニシテ高サ六尺タルコトヲ要ス
第二百二十六條 囲障ノ設置及ヒ保存ノ費用ハ相隣者平分シテ之ヲ負擔ス
第二百二十七條 相隣者ノ一人ハ第二百二十五條第二項ニ定メタル材料ヨリ良好ナルモノヲ用ヰ又ハ高サヲ増シテ囲障ヲ設クルコトヲ得但之ニ因リテ生スル費用ノ増額ヲ負擔スルコトヲ要ス
第二百二十八條 前三條ノ規定ト異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ從フ
第二百二十九條 疆界線上ニ設ケタ界標、囲障、牆壁及ヒ溝渠ハ相隣者ノ共有ニ屬スルモノト推定ス
第二百三十條 一棟ノ建物ノ部分ヲ成ス疆界線上ノ牆壁ニハ前條ノ規定ヲ適用セス
高サノ不同ナル二棟ノ建物ヲ隔ツル牆壁ノ低キ建物ヲ踰ユル部分亦同シ但防火牆壁ハ此限ニ在ラス

第二百三十一條 相隣者ノ一人ハ共有ノ牆壁ノ高サヲ増スコトヲ得但其牆壁カ此工事ニ耐エサルトキハ自費ヲ以テ工作ヲ加ヘ又ハ其牆壁ヲ改築スルコトヲ要ス

前項ノ規定ニ依リテ牆壁ノ高サヲ増シタル部分ハ其工事ヲ為シタル者ノ専有ニ屬ス

第二百三十二條 前條ノ場合ニ於テ隣人カ損害ヲ受ケタルトキハ其償金ヲ請求スルコトヲ
第二百三十三條 隣地ノ竹木ノ枝カ疆界線ヲ踰ユルトキハ其竹木ノ所有者ヲシテ其枝ヲ剪除セシムルコトヲ得
隣地ノ竹木ノ根カ疆界線ヲ踰ユルトキハ之ヲ截取スルコトヲ得
第二百三十四條 建物ヲ築造スルニハ疆界線ヨリ一尺五寸以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス
前項ノ規定ニ違ヒテ建築ヲ為サントスル者アルトキハ隣地ノ所有者ハ其建築ヲ廢止シ又ハ之ヲ變更セシムルコトヲ得但建築著手ノ時ヨリ一年ヲ経過シ又ハ其建物ノ竣成シタル後ハ損害賠償ノ請求ノミヲ為スコトヲ得
第二百三十五條 疆界線ヨリ三尺未滿ノ距離ニ於テ他人ノ宅地ヲ観望スヘキ窓又ハ椽側ヲ設クル者ハ目隱ヲ附スルコトヲ要ス
前項ノ距離ハ窓又ハ椽側ノ最モ隣地ニ近キ點ヨリ直角線ニテ疆界線ニ至ルマテヲ測算スル
第二百三十六條 前二條ノ規定ニ異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ從フ
第二百三十七條 井戸、用水溜、下水溜又ハ肥料溜ヲ穿ツニハ疆界線ヨリ六尺以上池、地窖又ハ厠坑ヲ穿ツニハ三尺以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス
水樋ヲ埋メ又ハ溝渠ヲ穿ツニハ疆界線ヨリ其深サノ半以上ノ距離ヲ存スルコトヲ要ス但三尺ヲ踰ユルコトヲ要セス

第二百三十八條 疆界線ノ近傍ニ於テ前條ノ工事ヲ為ストキハ土砂ノ崩壊又ハ水若クハ汚液ノ滲漏ヲ防クニ必要ナル注意ヲ為スコトヲ要ス

 

第二節 所有權ノ取得

 

第二百三十九條 無主ノ動産ハ所有ノ意思ヲ以テ之ヲ占有スルニ因リテ其所有權ヲ取得ス
無主ノ不動産ハ国庫ノ所有ニ屬ス
第二百四十條 遺失物ハ特別法ノ定ムルトコロニ從ヒ公告ヲ為シタル後一年内ニ其所有者ノ知レサルトキハ拾得者其所有權ヲ取得ス
第二百四十一條 埋蔵物ハ特別法ノ定ムルトコロニ從ヒ公告ヲ為シタル後六个内ニ其所有者ノ知レサルトキハ發見者其所有權ヲ取得ス但他人ノ物ノ中ニ於テ發見シタル埋蔵物ハ發見者及ヒ其物ノ所有者折半シテ其所有權ヲ取得ス
第二百四十二條 不動産ノ所有者ハ其不動産ノ從トシテ之ニ附合シタル物ノ所有權ヲ取得ス但權原ニ因リテ其物ヲ附屬セシメタル他人ノ權利ヲ妨ケス
第二百四十三條 各別ノ所有者ニ屬スル數個ノ動産カ附合ニ因リ毀損スルニ非サレハ之ヲ分離スルコト能ハサルニ至リタルトキハ其合成物ノ所有權ハ主タル動産ノ所有者ニ屬ス分離ノ為メ過分ノ費用ヲ要スルトキ亦同シ
第二百四十四條 附合シタル動産ニ附キ主從ノ區別ヲ為スコト得ハサルトキハ各動産ノ所有者ハ其附合ノ當時ニ於ケル價格ノ割合ニ應シテ合成物ヲ共有スル
第二百四十五條 前二條ノ規定ハ各別ノ所有者ニ屬スル物カ混和シテ識別スルコト能ハサルニ至リタル場合ニ之ヲ準用ス
第二百四十六條 他人ノ動産ニ工作ヲ加ヘタル者アルトキハ其加工物ノ所有權ハ材料ノ所有者ニ屬ス但工作ニ因リテ生シタル價格カ著シク材料ノ價格ニ超ユルトキハ加工者其物ノ所有權ヲ取得ス
加工者カ材料ノ一部ヲ供シタルルトキハ其價格ニ工作ニ因リテ生シタル價格ヲ加ヘタルモノカ他人ノ材料ノ價格ヲ超ユルトキニ限リ加工者其物ノ所有權ヲ取得ス
第二百四十七條 前五條ノ規定ニ依リテ物ノ所有權カ消滅シタルトキハ其物ノ上ニ存セル他ノ權利モ亦消滅ス
右ノ物ノ所有者カ合成物、混和物又ハ加工物ノ単獨所有者ト為リタルトキハ前項ノ權利ハ爾後合成物、混和物又ハ加工物ノ上ニ存シ其共有者トナリタルトキハ其持分ノ上ニ存ス
第二百四十八條 前六條ノ規定ノ適用ニ因リテ損失ヲ受ケタル者ハ第七百三條及ヒ第七百四條ノ規定ニ從ヒ償金ヲ請求スルコトヲ得

 

第三節 共有

 

第二百四十九條 各共有者ハ共有物ノ全部ニ付キ其持分ニ應シタル使用ヲ為スコトヲ得

第二百五十條 各共有者ノ持分ハ相均シキモノト推定ス
第二百五十一條 各共有者ハ他ノ共有者ノ同意アルニ非サレハ共有物ニ變更ヲ加フルコトヲ得ス
第二百五十二條 共有物ノ管理ニ關スル事項ハ前條ノ場合ヲ除ク外各共有者ノ持分ノ價格ニ從ヒ其過半數ヲ以テ之ヲ決ス但保存行為ハ各共有者之ヲ為スコトヲ得
第二百五十三條 各共有者ハ其持分ニ應シ管理ノ費用ヲ拂ヒ其他共有物ノ負擔ニ任ス
共有者カ一年内ニ前項ノ義務ヲ履行セサルトキハ他ノ共有者ハ相當ノ償金ヲ拂ヒテ其者ノ持分ヲ取得スルコトヲ得
第二百五十四條 共有者ノ一人カ共有物ニ附キ他ノ共有者ニ對シテ有スル債權ハ其特定承繼人ニ對シテモ之ヲ行フコトヲ得
第二百五十五條 共有者ノ一人カ其持分ヲ抛棄シタルトキ又ハ相續人ナクシテ死亡シタルトキハ其持分ハ他ノ共有者ニ歸屬ス
第二百五十六條 各共有者ハ何時ニテモ共有物ノ分割ヲ請求スルコトヲ得但五年ヲ超エサル期間内分割ヲ為ササル契約ヲ為スコトヲ妨ケス
此契約ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ五年ヲ超ユルコトヲ得ス
第二百五十七條 前條ノ規定ハ第二百二十九條及ヒ第二百二十九條ニ掲ケタル共有物ニハ之ヲ適用セス
第二百五十八條 分割ハ共有者ノ協議調ハサルトキハ之ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ現物ヲ以テ分割スルコト能ハサルトキ又ハ分割ニ因リテ著シク其價格ヲ損スル虞アルトキハ裁判所ハ其競賣ヲ命スルコトヲ得
第二百五十九條 共有者ノ一人カ他ノ共有者ニ對シテ共有ニ關スル債權ヲ有スルトキハ分割ニ際シ債務者ニ歸スヘキ共有物ノ部分ヲ以テ其辨濟ヲ為サシムルコトヲ得
債權者ハ右ノ辨濟ヲ受クル為メ債務者ニ歸スヘキ共有物ノ部分ヲ賣却スル必要アルトキハ其賣却ヲ請求スルコトヲ得
第二百六十條 共有物ニ付キ權利ヲ有スル者及ヒ各共有者ノ債權者ハ自己ノ費用ヲ以テ分割ニ参加スルコトヲ得
前項ノ規定ニ依リテ参加ノ請求アリタルニ拘ハラス其参加ヲ待タスシテ分割ヲ為シタルトキハ其分割ハ之ヲ以テ参加ヲ請求シタル者ニ對抗スルコトヲ得ス
第二百六十一條 各共有者ハ他ノ共有者カ分割ニ因リテ得タル物ニ付キ賣主ト同シク其持分ニ應シテ擔保ノ責ニ任ス
第二百六十二條 分割カ結了シタルトキハ各分割者ハ其受ケタル物ニ關スル證書ヲ保存スルコトヲ要ス
共有者一同又ハ其中ノ數人ニ分割シタル物ニ關スル證書ハ其物ノ最大部分ヲ受ケタル者之ヲ保存スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ最大ノ部分ヲ受ケタル者ナキトキハ分割者ノ協議ヲ以テ證書ノ保存者ヲ定ム若シ協議調ハサルトキハ裁判所之ヲ指定ス
證書ノ保存者ハ他ノ分割者ノ請求ニ應シテ其證書ヲ使用セシムルコトヲ要ス
第二百六十三條 共有ノ性質ヲ有スル入會權ニ付テハ各地方ノ慣習ニ從フ外本節ノ規定ヲ適用ス

第二百六十四條 本節ノ規定ハ數人ニテ所有權以外ノ財産權ヲ有スル場合ニ之ヲ準用ス但法令ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス

 

第四章 地上權  
第二百六十五條 地上權者ハ他人ノ土地ニ於テ工作物又ハ竹木ヲ所有スル為メ其土地ヲ使用スル權利ヲ有ス
第二百六十六條 地上權者カ土地ノ所有者ニ定期ノ地代ヲ拂フヘキトキハ第二百七十四乃至第二百七十六條ノ規定ヲ準用ス
此他地代ニ付テハ賃貸借ニ關スル規定ヲ準用ス
第二百六十七條 第二百九條乃至第二百三十八条ノ規定ハ地上權者間又ハ地上權者ト土地ノ所有者トノ間ニ之ヲ準用ス但第二百二十九條ノ推定ハ地上權設定後ニ為シタル工事ニ付テノミ之ヲ地上權者ニ準用ス
第二百六十八條 設定行為ヲ以テ地上權ノ存續期間ヲ定メサリシ場合ニ於テ別段ノ慣習カナキトキハ地上權者ハ何時ニテモ其權利ヲ抛棄スルコトヲ得但地代ヲ拂フヘキトキハ一年前ニ豫告ヲ為シ又ハ未タ期限ノ至ラサル一年分ノ地代ヲ拂フコトヲ要ス
地上權者カ前項ノ規定ニ依リテ其權利ヲ抛棄セサルトキハ裁判所ハ當事者ノ請求ニ因リ 
二十年以上五十年以下ノ範囲内ニ於テ工作物又ハ竹木ノ種類及ヒ状況其他地上權設定當時ノ事情ヲ斟酌シテ其存續期間ヲ定ム
第二百六十九條 地上權者ハ其權利消滅ノ時土地ヲ原状ニ復シテ其工作物及ヒ竹木ヲ収去スルコトヲ得但土地ノ所有者カ時價ヲ提供シテ之ヲ買取ルヘキ旨ヲ通知シタルトキハ地上權者ハ正當ノ理由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス

前項ノ規定ト異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ從フ

 

第五章 永小作

 

第二百七十條 永小作人ハ小作料ヲ拂ヒテ他人ノ土地ニ耕作又ハ牧畜ヲ為ス權利ヲ有ス

第二百七十一條 永小作人ハ土地ニ永久ノ損害ヲ生スヘキ變更ヲ加フルコトヲ得ス
第二百七十二條 永小作人ハ其權利ヲ他人ニ譲渡シ又ハ其權利ノ存續期間内ニ於テ耕作若クハ牧畜ノ為メ土地ヲ賃貸スルコトヲ得但設定行為ヲ以テ之ヲ禁シタルトキハ此限ニ在ラス
第二百七十三條 永小作人ノ義務ニ付テハ本章ノ規定及ヒ設定行為ヲ以テ定メタルモノノ外賃貸借ニ關スル規定ヲ準用ス
第二百七十四條 永小作人ハ不可抗力ニ因リ収益ニ付キ損失ヲ受ケタルトキト雖モ小作料ノ免除又ハ減額ヲ請求スルコトヲ得ス
第二百七十五條 永小作人カ不可抗力ニ因リ引續キ三年以上全ク収益ヲ得ス又ハ五年以上小作料ヨリ少キ収益ヲ得タルトキハ其權利ヲ抛棄スルコトヲ得
第二百七十六條 永小作人カ引續キ二年以上小作料ノ支拂ヲ怠リ又ハ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ地主ハ永小作權ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得
第二百七十七條 前六條ノ規定ニ異ナリタル慣習アルトキハ其慣習ニ從フ
第二百七十八條 永小作權ノ存續期間ハ二十年以上五十年以下トス若シ五十年ヨリ長キ期間ヲ以テ永小作權ヲ設定シタルトキハ其期間ハ之ヲ五十年ニ短縮ス
永小作權ノ設定ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ五十年ヲ超ユルコトヲ得ス
設定行為ヲ以テ永小作權ノ存續期間ヲ定メサリシトキハ其期間ハ別段ノ慣習アル場合ヲ除ク外之ヲ三十年トス
第二百七十九條 第二百六十九條ノ規定ハ永小作權ニ之ヲ準用ス
 
第六章 地役權
 
第二百八十條 地役權者ハ設定行為ヲ以テ定メタル目的ニ從ヒ他人ノ土地ヲ自己ノ土地ノ便益ニ供スル權利ヲ有ス但第三章第一節中ノ公ノ秩序ニ關スル規定ニ違反セサルコトヲ要ス
第二百八十一條 地役權ハ要役地ノ所有權ノ從トシテ之ト共ニ移轉シ又ハ要役地ノ上ニ存スル他ノ權利ノ目的タルモノトス但設定行為ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
地役權ハ要役地ヨリ分離シテ之ヲ譲渡シ又ハ他ノ權利ノ目的ト為スコトヲ得ス
第二百八十二條 土地ノ共有者ノ一人ハ其持分ニツキ其土地ノ為メニ又ハ其土地ノウエニ存スル地役權ヲ消滅セシムルコトヲ得ス
土地ノ分割又ハ其一部ノ譲渡ノ場合ニ於テハ地役權ハ其各部ノ為メニ又ハ其各部ノ上ニ存ス但地役權カ其性質ニ因リ土地ノ一部ノミニ關スルトキハ此限ニ在ラス
第二百八十三條 地役權ハ繼續的且表現ノモノニ限リ時効ニ因リテ之ヲ取得スルコトヲ得
第二百八十四條 土地ノ共有者ノ一人カ時効ニ因リテ地役權ヲ取得シタルトキハ他ノ共有者モ亦之ヲ取得ス
共有者ニ對スル時効中斷ハ地役權ヲ行使スル各共有者ニ對シテ之ヲ為スニ非サレハ其効力ヲ生セス
地役權ヲ行使スル共有者數人アル場合ニ於テ其一人ニ對シテ時効停止ノ原因アルモ時効ハ各共有者ノ為メニ進行ス
第二百八十五條 用水地役權ノ承役地ニ於テ水カ要役地及ヒ承役地ノ需要ノ為メニ不足ナルトキハ其各地ノ需要ニ應シ先ツ之ヲ家用ニ供シ其殘餘ヲ他ノ用ニ供スルモノトス但設定行為ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
同一ノ承役地ノ上ニ數個ノ用水地役權ヲ設定シタルトキハ後ノ地役權者ハ前ノ地役權者ノ水ノ使用ヲ妨クルコトヲ得ス
第二百八十六條 設定行為又ハ特別契約ニ因リ承役地ノ所有者カ其費用ヲ以テ地役權ノ行使ノ為メニ工作物ヲ設ケ又ハ其修繕ヲ為ス義務ヲ負擔シタルトキハ其義務ハ承役地ノ所有者ノ特定承繼人モ亦之ヲ負擔ス
第二百八十七條 承役地ノ所有者ハ何時ニテモ地役權ニ必要ナル土地ノ部分ノ所有權ヲ地役權者ニ委棄シテ前條ノ負担ヲ免ルルコトヲ得
第二百八十八條 承役地ノ所有者ハ地役權ノ行使ヲ妨ケサル範囲内ニ於テ其行使ノ為メニ承役地ノ上ニ設ケタル工作物ヲ使用スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ承役地ノ所有者ハ其利益ヲ受クル割合ニ應シテ工作物ノ設置及ヒ保存ノ費用ヲ分擔スルコトヲ要ス
第二百八十九條 承役地ノ占有者カ取得時効ニ必要ナル條件ヲ具備セル占有ヲ為シタルトキハ地役權ハコレニ因リテ消滅ス
第二百九十條 前條ノ消滅時効ハ地役權者カ其權利ヲ行使スルコトニ因リテ中斷ス
第二百九十一條 第百六十七條第二項ニ規定セル消滅時効ノ期間ハ不繼續地役權ニ付テハ最後ノ行使ノ時ヨリ之ヲ起算シ繼續地役權ニ付テハ其行使ヲ妨クヘキ事實ノ生シタル時ヨリ之ヲ起算ス
第二百九十二條 要役地カ數人ノ共有ニ屬スル場合ニ於テ其一人ノ為メニ時効ノ中斷又ハ停止アルトキハ其中斷又ハ停止ハ他ノ共有者ノ為メニモ其効力ヲ生ス
第二百九十三條 地役權者カ其權利ノ一部ヲ行使セサルトキハ其部分ノミ時効ニ因リテ消滅ス
第二百九十四條 共有ノ性質ヲ有セサル入會權ニ付テハ各地方ノ慣習ニ從フ外本章ノ規定ヲ準用ス
 
第七章 留置權
第二百九十五條 他人ノ物ノ占有者ハカ其物ニ關シテ生シタル債權ヲ有スルトキハ其債權ノ辨濟ヲ受クルマテ其物ヲ留置スルコトヲ得但其債權カ辨濟期ニ在ラサルトキハ此限ニ在ラス
前項ノ規定ハ占有カ不法行為ニ因リテ始マリタル場合ニハ之ヲ適用セス
第二百九十六條 留置權者ハ債權ノ全部ノ辨濟ヲ受クルマテハ留置物ノ全部ニ附キ其權利ヲ行使フコトヲ得
第二百九十七條 留置權者ハ留置物ヨリ生スル果實ヲ収取シ他ノ債權者ニ先チテ之ヲ其債權ノ辨濟ニ充當スルコトヲ得
前項ノ果實ハ先ツ債權ノ利息ニ充當シ尚ホ餘剰アルトキハ之ヲ元本ニ充當シ要ス
第二百九十八條 留置權者ハ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ留置物ヲ占有スルコトヲ要ス
留置權者ハ債務者ノ承諾ナクシテ留置物ノ使用シ若クハ賃貸ヲ為シ又ハ之ヲ擔保ニ供スルコトヲ得ス但其物ノ保存ニ必要ナル使用ヲ為スハ此限ニ在ラス
留置權者カ前二項ノ規定ニ違反シタルトキハ債務者ハ留置權ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得
第二百九十九條 留置權者カ留置物ニ付キ必要費ヲ出タシタルトキハ所有者ヲシテ其償還ヲセシムルコトヲ得
留置權者カ留置物ニ付キ有益費ヲ出タシタルトキハ其價格ノ増加カ現存スル場合ニ限リ所有者ノ選擇ニ從ヒ其費シタル金額又ハ増價額ヲ償還セシムルコトヲ得但裁判所ハ所有者ノ請求ニ因リ之ニ相當ノ期限ヲ許與スルコトヲ得

第三百條 留置權ノ行使ハ債權ノ消滅時効ノ進行ヲ妨ケス

第三百一條 債務者ハ相當ノ擔保ヲ供シテ留置權ノ消滅ヲ請求スルコトヲ得

第三百二條 留置權ハ占有ノ喪失ニ因リテ消滅ス但第二百九十八條第二項ノ規定ニ依リ賃貸又ハ質入ヲ為シタル場合ハ此限ニ在ラス

 

 第八章 先取特權
第一節 總則
第三百三條 先取特權者ハ本法其他ノ法律ノ規定ニ從ヒ其債務者ノ財産ニ付
 キ他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
第三百四條 先取特權ハ其目的物ノ賣却、賃貸、滅失又ハ毀損ニ因リテ債務
 者カ受クヘキ金錢其他ノ物ニ對シテモ之ヲ行フコトヲ得但先取特權者ハ
 其拂渡シ又ハ引渡前ニ差押ヲ為スコトヲ要ス
債務者カ先取特權ノ目的物ニツキ設定シタル物權ノ對價ニ付キ亦同シ
第三百五條 第二百九十六ノ規定ハ先取特權ニ之ヲ準用ス
 
第二節 先取特權ノ種類
第一款 一般ノ先取特權
第三百六條 左ニ掲ケタル原因ヨリ生シタル債權ヲ有スル者ハ債務者ノ總財産ノ上ニ先取特權ヲ有スル
一 共益ノ費用
二 葬式ノ費用
三 雇人ノ給料
四 日用品ノ供給
第三百七條 共益費用ノ先取特權ハ各債權者ノ共同利益ノ為メニ為シタル債務者ノ財産ノ保存、清算又ハ配當ニ關スル費用ニ付キ存在スル
前項ノ費用中總債權者ニ有益ナラサリシモノニ付テハ先取特權ハ其費用ノ為メ利益ヲ受ケタル債權者ニ對シテノミ存在ス
第三百八條 葬式費用ノ先取特權ハ債務者ノ身分ニ應シテ為シタル葬式ノ費用ニ付キ存在ス
前項ノ先取特權ハ債務者カ其扶養スヘキ親族又ハ家族ノ身分ニ應シテ為シタル葬式ノ費用ニ付テモ亦存在ス
第三百九條 雇人給料ノ先取特權ハ債務者ノ雇人カ受クヘキ最後ノ六个月間ノ給料ニ付キ存在ス但其金額ハ五十圓ヲ限トス
第三百十條 日用品供給ノ先取特權ハ債務者又ハ其扶養スヘキ同居ノ親族竝ニ家族及ヒ其僕婢ノ生活ニ必要ナル最後ノ六个月間ノ飲食品及ヒ薪炭油ノ供給ニ付キ存在ス

 

第二款 動産ノ先取特權
第三百十一條 左ニ掲ケタル原因ヨリ生シタル債權ヲ有スル者ハ債務者ノ特定動産ノ上ニ先取特權ヲ有ス
一 不動産ノ賃貸借
二 旅店ノ宿泊
三 旅客又ハ荷物ノ運輸
四 公吏ノ職務上ノ過失
五 動産ノ保存
六 動産ノ売買
七 種苗又ハ肥料ノ供給
八 農工業ノ勞役
第三百十二條 不動産賃貸ノ先取特權ハ其不動産ノ借借賃其他賃貸借關係ヨリ生シタル賃借人ノ債務ニ付キ賃借人ノ動産ノ上ニ存在ス
第三百十三條 土地ノ賃貸人ノ先取特權ハ賃借地又ハ其利用ノ為メニスル建物ニ備附ケタル動産、其土地ノ利用ニ供シタル動産及ヒ賃借人ノ占有ニ在ル其土地ノ果實ノ上ニ存在ス
建物ノ賃貸人ノ先取特權ハ賃借人カ其建物ニ備附ケタル動産ノ上ニ存在ス
第三百十四條 賃借權ノ譲渡又ハ轉貸ノ場合ニ於テハ賃貸人ノ先取特權ハ譲受人又ハ轉借人ノ動産ニ及フ譲渡人又ハ轉貸人カ受クヘキ金額ニ付キ亦同シ
第三百十五條 賃借人ノ財産ノ總清算ノ場合ニ於テハ賃貸人ノ先取特權ハ前期、當期及ヒ次期ノ借賃其他ノ債務及ヒ前期竝ニ當期ニ於テ生シタル損害ノ賠償ニ付テノミ存在ス
第三百十六條 賃貸人ハ敷金ヲ受取リタル場合ニ於テハ其敷金ヲ以テ辨濟ヲ受ケサル債權ノ部分ニ付テノミ先取特權ヲ有ス
第三百十七條 旅店宿泊ノ先取特權ハ旅客、其從者及ヒ牛馬ノ宿泊料竝ニ飲食料ニ付キ其旅店ニ存スル手荷物ノ上ニ存在ス
第三百十八條 運輸ノ先取特權ハ旅客又ハ荷物ノ運送賃及ヒ附随ノ費用ニ付キ運送人ノ手ニ存スル荷物ノ上ニ存在ス
第三百十九條 第百九十二條乃至第百九十五條ノ規定ハ前七條ノ先取特權ニ之ヲ準用ス
第三百二十條 公吏保證金ノ先取特権ハ保證金ヲ供シタル公吏ノ職務上ノ過失ニ因リテ生シタル債權ニ付キ其保證金ノ上ニ存在ス
第三百二十一條 動産保存ノ先取特權ハ動産ノ保存費ニ付キ其動産ノ上ニ存在ス
前項ノ先取特權ハ動産ニ關スル權利ヲ保存、追認又ハ實行セシムル為メニ要シタル費用ニ付テモ亦存在ス
第三百二十二條 動産賣買ノ先取特權ハ動産ノ代價及ヒ其利息ニ付キ其動産ノ上ニ存在ス
第三百二十三條 種苗肥料供給ノ先取特權ハ種苗又ハ肥料ノ代價及ヒ其利息ニ付キ其種苗又ハ肥料ヲ用ヰタル後一年内ニ之ヲ用ヰタル土地ヨリ生シタル果實ノ上ニ存在ス
前項ノ先取特權ハ蠶種又ハ蠶ノ飼養ニ供シタル桑葉ノ供給ニ付キ其蠶種又ハ桑葉ヨリ生シタル物ノ上ニモ亦存在ス
第三百二十四條 農工業勞役ノ先取特權ハ農業ノ勞役者ニ付テハ最後ノ一年間工業ノ勞役者ニ付テハ最後ノ三个月間ノ賃金ニ付キ其勞役ニ因リテ生シタル果實又ハ製作物ノ上ニ存在ス
 
第三款 不動産ノ先取特權
第三百二十五條 左ニ掲ケタル原因ヨリ生シタル債權ヲ有スル者ハ債務者ノ特定不動産ノ上ニ先取特權ヲ有ス
一 不動産ノ保存
二 不動産ノ工事
三 不動産ノ賣買
第三百二十六條 不動産保存ノ先取特權ハ不動産ノ保存費ニ付キ其不動産ノ上ニ存在ス
三百二十一條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ準用ス
第三百二十七條 不動産工事ノ先取特權ハ工匠、技師及ヒ請負人カ債務者ノ不動産ニ關シテ為シタル工事ノ費用ニ付キ其不動産ノ上ニ存在ス
前項ノ先取特權ハ工事ニ因リテ生シタル不動産ノ増價カ現存スル場合ニ限リ其増價額ニ付テノミ存在ス
第三百二十八條 不動産賣買ノ先取特權ハ不動産ノ代價及ヒ其利息ニ付キ其不動産ノ上ニ存在ス
 
第三節 先取り特權の順位
 
第三百二十九條 一般ノ先取特權カ互ニ競合スル場合ニ於テハ其優先權ノ順位ハ第三百六條ニ掲ケタル順序ニ從フ
一般ノ先取特權ト特別ノ先取特權ト競合スル場合ニ於テハ特別ノ先取特權ハ一般ノ先取特權ニ先ツ但共益費用ノ先取特權ハ其利益ヲ受ケタル總債權者ニ對シテ優先ノ効力ヲ有ス
第三百三十條 同一ノ動産ニ付キ特別ノ先取特權カ互ニ競合スル場合ニ於テハ其優先權ノ順位左ノ如シ
第一 不動産ノ賃貸、旅店宿泊及ヒ運輸ノ先取特權
第二 動産保存ノ先取特權但數人ノ保存者アリタルトキハ後ノ保存者ハ前ノ保存者ニ先ツ
第三 動産ノ賣買、種苗肥料供給及ヒ農工業ノ勞役ノ先取特權
第一順位ノ先取特權者カ債權取得ノ當時第二又ハ第三ノ順位ノ先取特權者アルコトヲ知リタルトキハ之ニ對シテ優先權ヲ行フコトヲ得ス第一順位者ノ為メニ物ヲ保存シタル者ニ對シ亦同シ
果實ニ關シテハ第一ノ順位ハ農業ノ勞役者ニ第二ノ順位ハ種苗又ハ肥料ノ供給者ニ第三ノ順位ハ土地ノ賃貸人ニ屬ス
第三百三十一條 同一ノ不動産ニ付キ特別ノ先取特權カ互ニ競合スル場合ニ於テハ其優先權ノ順位ハ第三百二十五條ニ掲ケタル順序ニ從フ
同一ノ不動産ニ付キ逐次ノ賣買アリタルトキハ賣主相互間ノ優先權ノ順位ハ時ノ前後ニ依ル
第三百三十二條 同一ノ目的物ニ付キ同一順位ノ先取特權者數人アルトキハ各其債權額ノ割合ニ應シテ辨濟ヲ受ク
 
第四節 先取特權ノ効力
 
第三百三十三條 先取特權ハ債務者カ其動産ヲ第三取得者ニ引キ渡シタル後ハ其動産ニ付キ之ヲ行フコトヲ得ス
第三百三十四條 先取特權ト動産質權ト競合スル場合ニ於テハ動産質權者ハ第三百三十條ニ掲ケタル第一順位ノ先取特權者ト同一ノ權利ヲ有ス
第三百三十五條 一般ノ先取特權者ハ先ツ不動産以外ノ財産ニ付キ辨濟ヲ受ケ尚ホ不足アルニ非サレハ不動産ニ付キ辨濟ヲ受クルコトヲ得ス
不動産ニ付キテハ先ツ特別擔保ノ目的タラサルモノニ付キ辨濟ヲ受クルコトヲ要ス
一般ノ先取特權者カ前二項ノ規定ニ從ヒテ配當ニ加入スルコトヲ怠リタルトキハ其配當加入ニ因リテ受クヘカリシモノノ限度ニ於テハ登記ヲ為シタル第三者ニ對シテ其先取特權ヲ行フコトヲ得ス
前三項ノ規定ハ不動産以外ノ財産ノ代價ニ先チテ不動産ノ代價ヲ配當シ又ハ他ノ不動産ノ代價ニ先チテ特別擔保ノ目的タル不動産ノ代價ヲ配當スヘキ場合ニハ之ヲ適用セス
第三百三十六條 一般ノ先取特權ハ不動産ニ付キ登記ヲ為ササルモ之ヲ以テ特別擔保ヲ有セサル債權者ニ對抗スルコトヲ妨ケス但登記ヲ為シタル第三者ニ對シテハ此限ニ在ラス
第三百三十七條 不動産保存ノ先取特權ハ保存行為完了ノ後直チニ登記ヲ為スニ因リテソノ効力ヲ保存ス
第三百三十八條 不動産工事ノ先取特權ハ工事ヲ始ムル前ニ其費用ノ豫算額ヲ登記スルニ因リテ其効力ヲ保存ス但工事ノ費用カ豫算額ヲ超ユルトキハ先取特權ハ其超過額ニ付テハ存在セス
工事ニ因リテ生シタル不動産ノ増價額ハ配當加入ノ時裁判所ニ於テ選任シタル鑑定人ヲシテ之ヲ評價セシムルコトヲ要ス
第三百三十九條 前二條ノ規定ニ從ヒテ登記シタル先取特權ハ抵當權ニ先チテ之ヲ行フコトヲ得
第三四十條 不動産賣買ノ先取特權ハ賣買契約ト同時ニ未タ代價又ハ其利息ノ辨濟アラサル旨ヲ登記スルニ因リテ其効力ヲ保存ス
第三百四十一條 先取特權ノ効力ニ付テハ本節ニ定メタルモノノ外抵當權ニ關スル規定ヲ準用ス
第九章 質權
第一節 總則
第三百四十二條 質權者ハ其債權ノ擔保トシテ債務者又ハ第三者ヨリ受取リタル物ヲ占有シ且其物ニ付キ他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス

第三百四十三條 質權ハ譲渡スコトヲ得サル物ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得ス

第三百四十四條 質權ノ設定ハ債權者ニ其目的物ノ引渡ヲ為スニ因リテ其効力ヲ生ス
第三百四十五條 質權者ハ質權設定者ヲシテ自己ニ代ハリテ質物ノ占有ヲ為サシムルコトヲ得ス
第三百四十六條 質權ハ元本、利息、違約金、質權實行ノ費用、質物保存ノ費用及ヒ債務ノ不履行又ハ質物ノ隱レタル瑕疵ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ擔保ス但設定行為ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
第三百四十七條 質權者ハ前條ニ掲ケタル債權ノ辨濟ヲ受クルマテハ質物ヲ留置スルコトヲ得但此權利ハ之ヲ以テ自己ニ對シ優先權ヲ有スル債權者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三百四十八條 質權者ハ其權利ノ存續期間内ニ於テ自己ノ責任ヲ以テ質物ヲ轉質ト為スコトヲ得此場合ニ於テハ轉質ヲ為ササレハ生セサルヘキ不可抗力ニ因ル損失ニ付テモ亦其責ニ任ス
第三百四十九條 質權設定者ハ設定行為又ハ債務ノ辨濟期前ノ契約ヲ以テ質權者ニ辨濟トシテ質物ノ所有權ヲ取得セシメ其他法律ニ定メタル方法ニ依ラスシテ質物ヲ處分セシムルコトヲ約スルコトヲ得ス
第三百五十條 第二百九十六條乃至第三百條及ヒ第三百四條ノ規定ハ質權ニ之ヲ準用ス
第三百五十一條 他人ノ債務ヲ擔保スル為メ質權ヲ設定シタル者カ其債務ヲ辨濟シ又ハ質權ノ實行ニ因リテ質物ノ所有權ヲ失ヒタルトキハ保證債務ニ關スル規定ニ從ヒ債務者ニ對シテ求償權ヲ有ス
 
第二節 動産質
第三百五十二條 動産質權者ハ繼續シテ質物ヲ占有スルニ非サレハ其質權ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三百五十四條 動産質權者カ其債權ノ辨濟ヲ受ケサルトキハ正當ノ理由アル場合ニ限リ鑑定人ノ評價ニ從ヒ質物ヲ以テ直チニ辨濟ニ充ツルコトヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ質權者ハ豫メ債務者ニ其請求ヲ通知スルコトヲ要ス
第三百五十五條 數個ノ債權ヲ擔保スル為メ同一ノ動産ニ付キ質權ヲ設定シタルトキハ其質權ノ順位ハ設定ノ前後ニ依ル

 

第三節 不動産質
 
第三百五十六條 不動産質權者ハ質權ノ目的タル不動産ノ用方ニ從ヒ其使用及ヒ収益ヲ為スコトヲ得

第三百五十七條 不動産質權者ハ管理ノ費用ヲ拂ヒ其他不動産ノ負擔ニ任ス

第三百五十八條 不動産質權者ハ其債權ノ利息ヲ請求スルコトヲ得ス
第三百五十九條 前三條ノ規定ハ設定行為ニ別段ノ定アルトキハ之ヲ適用セス
第三百六十條 不動産質ノ存續期間ハ十年ヲ超ユルコトヲ得ス若シ之ヨリ長キ期間ヲ以テ不動産質ヲ設定シタルトキハ其期間ハ之ヲ十年ニ短縮ス
不動産質ノ設定ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間ハ更新ノ時ヨリ十年ヲ超ユルコトヲ得ス
第三百六十一條 不動産質ニハ本節ノ規定ノ外次章ノ規定ヲ準用ス
 
第四節 權利質

 

第三百六十二條 質權ハ財産權ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得
前項ノ質權ニハ本節ノ規定ノ外前前三節ノ規定ヲ準用ス
第三百六十三條 債權ヲ以テ質權ノ目的ト為ス場合ニ於テ其債權ノ證書アルトキハ質權ノ設定ハ其證書ノ交附ヲ為スニ因リテ其効力ヲ生ス
第三百六十四條 指名債權ヲ以テ質權ノ目的ト為シタルトキハ第四百六十七條ノ規定ニ從ヒ第三債務者ニ質權ノ設定ヲ通知シ又ハ第三債務者カ之ヲ承諾スルニ非サレハ之ヲ以テ第三債務者其他ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
前項ノ規定ハ記名ノ株式ニハ之ヲ適用セス
第三百六十五條 記名ノ社債ヲ以テ質權ノ目的ト為シタルトキハ社債ノ譲渡ニ關スル規定ニ從ヒ会社ノ帳簿ニ質権ノ設定ヲ記入スルニ非サレハ之ヲ以テ會社其他ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三百六十六條 指図債權ヲ以テ質權ノ目的ト為シタルトキハ其證書ニ質權ノ設定ヲ裏書スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三百六十七條 質權者ハ質權ノ目的タル債權ヲ直接ニ取立ツルコトヲ得
債權ノ目的物カ金錢ナルトキハ質權者ハ自己ノ債權額ニ對スル部分ニ限リ之ヲ取立ツルコトヲ得
右ノ債權ノ辨濟期カ質權者ノ債權ノ辨濟期前ニ到來シタルトキハ質權者ハ第三債務者ヲシテ其辨濟金額ヲ供託セシムルコトヲ得此場合ニ於テハ質權ハ其供託金ノ上ニ存在ス
債權ノ目的物カ金錢ニ非ラサルトキハ質權者ハ辨濟トシテ受ケタル物ノ上ニ質權ヲ有ス
第三百六十八條 質權者ハ前條ノ規定ニ依ル外民事訴訟法ニ定ムル執行方法ニ依リテ質權ノ實行ヲ為スコトヲ得

 

第十章 抵當權
第一節 總則
第三百六十九條 抵當權者ハ債務者又ハ第三者カ占有ヲ移サスシテ債務ノ擔保ニ供シタル不動産ニ付キ他ノ債權者ニ先チテ自己ノ債權ノ辨濟ヲ受クル權利ヲ有ス
地上權及ヒ永小作權モ亦之ヲ抵當權ノ目的ト為スコトヲ得此場合ニ於テハ本章ノ規定ヲ準用ス
第三百七十條 抵當權ハ抵當地ノ上ニ存スル建物ヲ除ク外其目的タル不動産ニ附加シテ之ト一體ヲ成シタル物ニ及フ但設定行為ニ別段ノ定メアルトキ及ヒ第四百二十四條ノ規定ニ依リ債權者カ債務者ノ行為ヲ取消スコトヲ得ル場合ハ此限ニ在ラス
第三百七十一條 前條ノ規定ハ果實ニハ之ヲ適用セス但抵當不動産ノ差押アリタル後又ハ第三取得者カ第三百八十一條ノ通知ヲ受ケタル後ハ此限ニ在ラス
第三取得者カ第三百八十一條ノ通知ヲ受ケタルトキハ其後一年内ニ抵當不動産ノ差押アリタル場合ニ限リ前項但書ノ規定ヲ適用ス
第三百七十二條 第二百九十六條第三百四條及ヒ第三百五十一條ノ規定ハ抵當權ニ之ヲ準用ス
 
第二節 抵當權ノ効力
 
第三百七十三條 數個ノ債權ヲ擔保スル為メ同一ノ不動産ニ付キ抵當權ヲ設定シタルトキハ其抵當權ノ順位ハ登記ノ前後ニ依ル
第三百七十四條 抵當權者カ利息其他ノ定期金ヲ請求スル權利ヲ有スルトキハ其滿期ト為リタル最後ノ二年分ニ付テノミ其抵當權ヲ行フコトヲ得但其以前ノ定期金ニ付テモ滿期後特別ノ登記ヲ為シタルトキハ其登記ノ時ヨリ之ヲ行フコトヲ妨ケス
第三百七十五條 抵當權者ハ其抵當權ヲ以テ他ノ債權ノ擔保ト為シ又同一ノ債務者ニ對スル他ノ債權者ノ利益ノ為メ其抵當權若クハ其順位ヲ譲渡シ又ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ抵當權者カ數人ノ為メニ其抵當權ノ處分ヲ為シタルトキハ其處分ノ利益ヲ受タル者ノ權利ノ順位ハ抵當權ノ登記ニ附記ヲ為シタル前後ニ依ル
第三百七十六條 前條ノ場合ニ於テハ第四百六十七條ノ規定ニ從ヒ主タル債務者ニ抵當權ノ處分ヲ通知シ又ハ主タル債務者カ之ヲ承諾スルニ非サレハ之ヲ以テ主タル債務者、保證人、抵當權設定者及ヒ其承繼人ニ對抗スルコトヲ得ス
主タル債務者カ前項ノ通知ヲ受ケ又ハ承諾ヲ為シタルトキハ抵當權ノ處分ノ利益ヲ受クル者ノ承諾ナクシテ為シタル辨濟ハ之ヲ以テ其受益者ニ對抗スルコトヲ得ス
第三百七十七條 抵當不動産ニ付キ所有權又ハ地上權ヲ買受ケタル第三者カ抵當權者ノ請求ニ應シテ之ニ其代價ヲ辨濟シタルトキハ抵當權ハ其第三者ノ為メニ消滅ス
第三百七十八條 抵當不動産ニ付キ所有權、地上權又ハ永小作權ヲ取得シタル第三者ハ第三百八十二條乃至第三百八十四條ノ規定ニ從ヒ抵當權者ニ提供シテ其承諾ヲ得タル金額ヲ拂渡シ又ハ之ヲ供託シテ抵當權ヲ滌除スルコトヲ得
第三百七十九條 主タル債務者、保證人及ヒ其承繼人ハ抵當權ノ滌除ヲ為スコトヲ得ス
第三百八十條 抵當不動産ノ停止條件附第三取得者ハ條件ノ成否未定ノ間ハ抵當權ノ滌除ヲ為スコトヲ得ス
第三百八十一條 抵當權者カ其抵當權ヲ實行セント欲スルトキハ豫メ第三百七十八ニ掲ケタル第三取得者ニ其旨ヲ通知スルコトヲ要ス
第三百八十二條 第三取得者ハ前條ノ通知ヲ受クルマテハ何時ニテモ抵當權ノ滌除ヲ為スコトヲ得
第三取得者カ前條ノ通知ヲ受ケタルトキハ一个月内ニ次條ノ送達ヲ為スニ非サレハ抵當權ノ滌除ヲ為スコトヲ得ス
前條ノ通知アリタル後ニ第三百七十八條ニ掲ケタル權利ヲ取得シタル第三者ハ前項ノ第三取得者カ滌除ヲ為スコトヲ得ル期間内ニ限リ之ヲ為スコトヲ得第三百八十三條 第三取得者カ抵當權ヲ滌除セント欲スルトキハ登記ヲ為シタル各債權者ニ左ノ書面ヲ送達スルコトヲ要ス
一 取得ノ原因、年月日、譲渡人及ヒ取得者ノ氏名、住所、抵當不動産ノ性質、所在、 代價其他取得者ノ負擔ヲ記載シタル書面
二 抵當不動産ニ關スル登記簿ノ謄本但既ニ消滅シタル權利ニ關スル登記ハ之ヲ掲クルコトヲ要セス
三 債權者カ一个月内ニ次條ノ規定ニ従ヒ増價競賣ヲ請求セサルトキハ第三取得者ハ第一號ニ掲ケタル代價又ハ特ニ指定為シタル金額ヲ債權ノ順位ニ從ヒテ辨濟又ハ供託スヘキ旨ヲ記載シタル書面
第三百八十四條 債權者カ前條ノ送達ヲ受ケタル後一个月内ニ増價競賣ヲ請求セサルトキハ第三取得者ノ提供ヲ承諾シタルモノト看做ス
増價競賣ハ若シ競賣ニ於テ第三取得者カ提供シタル金額ヨリ十分ノ一以上高價ニ抵當不動産ヲ賣却スルコト能ハサルトキハ十分ノ一ノ増價ヲ以テ自ラ其不動産ヲ買受クヘキ旨ヲ附言シ第三取得者ニ對シテ之ヲ請求スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テハ債權者ハ代價及ヒ費用ニ付キ擔保ヲ供スルコトヲ要ス
第三百八十五條 債權者カ増價競賣ヲ請求スルトキハ前條ノ期間内ニ債務者及ヒ抵當不動産ノ譲渡人ニ之レヲ通知スルコトヲ要ス
第三百八十六條 増價競賣ヲ請求シタル債權者ハ登記ヲ為シタル他ノ債權者ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ其請求ヲ取消スコトヲ得ス
第三百八十七條 抵當權者カ第三百八十二條ニ定メタル期間内ニ第三取得者ヨリ債務ノ辨濟又ハ滌除ヲ通知ヲ受ケサルトキハ抵當不動産ノ競賣ヲ請求スルコトヲ得
第三百八十八條 土地及ヒ其上ニ存スル建物カ同一ノ所有者ニ屬スル場合ニ於テ其土地又ハ建物ノミヲ抵當ト為シタルトキハ抵當權設定者ハ競賣ノ場合ニ付キ地上権ヲ設定シタルモノト看做ス但地代ハ當事者ノ請求ニ因リ裁判所之ヲ定ム
第三百八十九條 抵當權設定ノ後其設定者カ抵當地ニ建物ヲ築造シタルトキハ抵當權者ハ土地ト共ニ之ヲ競賣スルコトヲ得但其優先權ハ土地ノ代價ニ付テノミ之ヲ行フコトヲ得
第三百九十條 第三取得者ハ競賣人ト為ルコトヲ得
第三百九十一條 第三取得者カ抵當不動産ニ付キ必要費又ハ有益費ヲ出タシタルトキハ第百九十六條ノ區別ニ從ヒ不動産ノ代價ヲ以テ最モ先ニ其償還ヲ受クルコトヲ得
第三百九十二條 債權者カ同一ノ債權ノ擔保トシテ數個ノ不動産ノ上ニ抵當權ヲ有スル場合ニ於テ同時ニ其代價ヲ配當スヘキトキハ其各不動産ノ價額ニ準シテ其債權ノ負擔ヲ分ツ
或不動産ノ代價ノミヲ配當スヘキトキハ抵當權者ハ其代價ニ付キ債權ノ全部ノ辨濟ヲ受クルコトヲ得此場合ニ於テハ次ノ順位ニ在ル抵當權者ハ前項ノ規定ニ從ヒ右ノ抵當權者カ他ノ不動産ニ付キ辨濟ヲ受クヘキ金額ニ満ツルマデ之ニ代位シテ抵當權ヲ行フコトヲ得
第三百九十三條 前條ノ規定ニ從ヒ代位ニ因リテ抵當權ヲ行フ者ハ其抵當權ノ登記ニ其代位ヲ附記スルコトヲ得
第三百九十四條 抵當權者ハ抵當不動産ノ代價ヲ以テ辨濟ヲ受ケサル債權ノ部分ニ付テノミ他ノ財産ヲ以テ辨濟ヲ受クルコトヲ得
前項ノ規定ハ抵當不動産ノ代價ニ先チテ他ノ財産ノ代價ヲ配當スヘキ場合ニハ之ヲ適用セス但他ノ各債權者ハ抵當權者ヲシテ前項ノ規定ニ從ヒ辨濟ヲ受ケシムル為メ之ニ配當スヘキ金額ノ供託ヲ請求スルコトヲ得
第三百九十五條 第六百二條ニ定メタル期間ヲ超エサル賃貸借ハ抵當權ノ登記後ニ登記シタルモノト雖モ之ヲ以テ抵當權者ニ対抗スルコトヲ得但其賃貸借カ抵當權者ニ損害ヲ及ホストキハ裁判所ハ抵當權者ノ請求ニ因リ其解除ヲ命スルコトヲ得

 

第三節 抵當權ノ消滅
 
第三百九十六條 抵當權ハ債務者及ヒ抵當權設定者ニ對シテハ其擔保スル債權ト同時ニ非サレハ時効ニ因リテ消滅セス
第三百九十七條 債務者又ハ抵當權設定者ニ在ラサル者カ抵當不動産ニ付キ取得時効ニ必要ナル條件ヲ具備セル占有ヲ為シタルトキハ抵當權ハ之ニ因リテ消滅ス
第三百九十八條 地上權又ハ永小作權ヲ抵當ト為シタル者カ其權利ヲ抛棄シタルモ之ヲ以テ抵當權者ニ對抗スルコトヲ得ス
 
第三編 債權
第一章 總則
第一節 債權ノ目的
第三百九十九條 債權ハ金錢ニ見積モルコトヲ得サルモノト雖モ之ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得
第四百條 債權ノ目的カ特定物ノ引渡ナルトキハ債務者ハ其引渡ヲ為スマテ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ其物ヲ保存スルコトヲ要ス
第四百一條 債權ノ目的物ヲ指示スルニ種類ノミヲ以テシタル場合ニ於テ法律行為ノ性質又ハ當事者ノ意思ニ依リテ其品質ヲ定ムルコト能ハサルトキハ債務者ハ中等ノ品質ヲ有スルモノヲ給付スルコトヲ要ス
前項ノ場合ニ於テ債務者カ物ノ給付ヲ為スニ必要ナル行為ヲ完了シ又ハ債權者ノ同意ヲ得テ其給付スヘキ物ヲ指定シタルトキハ爾後其物ヲ以テ債權ノ目的物トス
第四百二條 債權ノ目的物カ金錢ナルトキハ債務者ハ其選擇ニ從ヒ各種ノ通貨ヲ以テ辨濟ヲ為スコトヲ得但特種ノ通貨ノ給付ヲ以テ債權ノ目的ト為シタルトキハ此限ニ在ラス
債權ノ目的物タル特種ノ通貨カ辨濟期ニ於テ強制通用ノ効力ヲ失ヒタルトキハ債務者ハ他ノ通貨ヲ以テ辨濟ヲ為スコトヲ要ス
前二項ノ規定ハ外国ノ通貨ノ給付ヲ以テ債權ノ目的ト為シタル場合ニ之ヲ準用ス
第四百三條 外国ノ通貨ヲ以テ債權額ヲ指定シタルトキハ債務者ハ履行地ニ於ケル為替相場ニ依リ日本ノ通貨ヲ以テ辨濟ヲ為スコトヲ得
第四百四條 利息ヲ生スヘキ債權ニ附キ別段ノ意思表示ナキトキハ其利率ハ年五分トス
第四百五條 利息カ一年分以上延滯シタル場合ニ於テ債權者ヨリ催告ヲ為スモ債務者カ其利息ヲ拂ハサルトキハ債權者ハ之ヲ元本ニ組ミ入ルルコトヲ得
第四百六條 債權ノ目的カ數個ノ給付中選擇ニ依リテ定マルヘキトキハ其選擇權ハ債務者ニ屬ス
第四百七條 前條ノ選擇權ハ相手方ニ對スル意思表示ニ依リテ之ヲ行フ
前項ノ意思表示ハ相手方ノ承諾アルニ非サレハ之ヲ取消スコトヲ得ス
第四百八條 債權カ辨濟期ニアル場合ニ於テ相手方ヨリ相當ノ期間ヲ定メテ催告為スモ選擇權ヲ有スル當事者カ其期間内ニ選擇ヲ為ササルトキハ其選擇權ハ相手方ニ屬ス
第四百九條 第三者カ選擇ヲ為スヘキ場合ニ於テハ其選擇ハ債權者又ハ債務者ニ對スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス
第三者カ選擇ヲ為スコト能ハス又ハ之ヲ欲セサルトキハ選擇權ハ債務者ニ移轉ス
第四百十條 債權ノ目的タルヘキ給付中初ヨリ不能ナルモノ又ハ後ニ至リテ不能ト為リタルモノアルトキハ債權ハ其殘存スルモノニ付キ存在ス
選擇權ヲ有セサル當事者ノ過失ニ因リテ給付カ不能ト為リタルトキハ前項ノ規定ヲ適用セス
第四百十一條 選擇ハ債權發生ノ時ニ遡リテ其効力ヲ生ス但第三者ノ權利ヲ害スルコトヲ得ス
 
第二節 債權ノ効力
第四百十二條 債務ノ履行ニ付キ確定期限アルトキハ債務者ハ其期限ノ到來シタル時ヨリ遅滯ノ責ニ任ス
債務ノ履行ニ付キ不確定期限アルトキハ債務者ハ其期限ノ到來シタルコトヲ知リタル時ヨリ遅滯ノ責ニ任ス
債務ノ履行ニ付キ期限ヲ定メサリシトキハ債務者ハ履行ノ請求ヲ受ケタル時ヨリ遅滯ノ責ニ任ス
第四百十三條 債權者カ債務ノ履行ヲ受クルコトヲ拒ミ又ハ之ヲ受クルコト能ハサルトキハ其債權者ハ履行ノ提供カアリタル時ヨリ遅滯ノ責ニ任ス
第四百十四條 債務者カ任意ニ債務ノ履行ヲ為ササルトキハ債權者ハ其強制履行ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但債務ノ性質カ之ヲ許ササルトキハ此限ニ在ラス
債務ノ性質カ強制履行ヲ許ササル場合ニ於テ其債務カ作為ヲ目的トスルトキハ債權者ハ債務者ノ費用ヲ以テ第三者ニ之ヲ為サシムルコトヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但法律行為ヲ目的トスル債務ニ付テハ裁判ヲ以テ債務者ノ意思表示ニ代フルコトヲ得
不作為ヲ目的トスル債務ニ付テハ債務者ノ費用ヲ以テ其為シタルモノヲ除却シ又ハ将來ノ為メ適當ノ處分ヲ為スコトヲ請求スルコトヲ得
前三項ノ規定ハ損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
第四百十五條 債務者カ其債務ノ本旨ニ從ヒタル履行ヲ為ササルトキハ債權者ハ其損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得債務者ノ責ニ歸スヘキ事由ニ因リテ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキ亦同シ
第四百十六條 損害賠償ノ請求ハ債務ノ不履行ニ因リテ通常生スヘキ損害ノ賠償ヲ為サシムルヲ以テ其目的トス
特別ノ事情ニ因リテ生シタル損害ト雖モ當事者カ其事情ヲ豫見シ又ハ豫見スルコトヲ得ヘカリシトキハ債權者ハ其賠償ヲ請求スルコトヲ得

第四百十七條 損害賠償ハ別段ノ意思表示ナキトキハ金錢ヲ以テ其額ヲ定ム

第四百十八條 債務ノ不履行ニ關シ債權者ニ過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ責任及ヒ其金額ヲ定ムルニ付キ之ヲ斟酌ス
第四百十九條 金錢ヲ目的トスル債務ノ不履行ニ付テハ其損害賠償ノ額ハ法定利率ニ依リテ之ヲ定ム但約定利率カ法定利率ニ超ユルトキハ約定利率ニ依ル
前項ノ損害賠償ニ付テハ債權者ハ損害ノ證明ヲ為スコトヲ要セス又債務者ハ不可抗力ヲ以テ抗辨ト為スコトヲ得ス
第四百二十條 當事者ハ債務ノ不履行ニ付キ損害賠償ノ額ヲ豫定スルコトヲ得此場合ニ於テハ裁判所ハ其額ヲ増減スルコトヲ得ス
賠償額ノ豫定ハ履行又ハ解除ノ請求ヲ妨ケス
違約金ハ之ヲ賠償額ノ豫定ト推定ス
第四百二十一條 前條ノ規定ハ當事者カ金錢ニ非サルモノヲ以テ損害ノ賠償ニ充ツヘキ旨ヲ豫定シタル場合ニ之ヲ準用ス
第四百二十二條 債權者カ損害賠償トシテ其債權ノ目的タル物又ハ權利ノ價額ノ全部ヲ受ケタルトキハ債務者ハ其物又ハ權利ニ付キ當然債權者ニ代位ス
第四百二十三條 債權者ハ自己ノ債權ヲ保全スル為メ其債務者ニ屬スル權利ヲ行フコトヲ得但債務者ノ一身ニ専屬スル權利ハ此限ニ在ラス
債權者ハ其債權ノ期限カ到來セサル間ハ裁判上ノ代位ニ依ルニ非サレハ前項ノ權利ヲ行フコトヲ得ス但保存行為ハ此限ニ在ラス
第四百二十四條 債權者ハ債務者カ其債權者ヲ害スルコトヲ知リテ為シタル法律行為ノ取消ヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但其行為ニ因リテ利益ヲ受ケタル者又ハ轉得者カ其行為又ハ轉得ノ當時債權者ヲ害スヘキ事實ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス
前項ノ規定ハ財産權ヲ目的トセサル法律行為ニハ之ヲ適用セス
第四百二十五條 前條ノ規定ニ依リテ為シタル取消ハ總債權者ノ利益ノ為メニ其効力ヲ生ス
第四百二十六條 第四百二十四條ノ取消權ハ債權者カ取消ノ原因ヲ覺知シタル時ヨリ二年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス行為ノ時ヨリ二十年ヲ経過シタルトキ亦同シ
第三節 多數當事者ノ債權及ヒ債務
第一款 總則
第四百二十七條 數人ノ債權者又ハ債務者アル場合ニ於テ別段ノ意思表示ナキトキハ各債權者又ハ各債務者ハ平等ノ割合ヲ以テ權利ヲ有シ又ハ義務ヲ負フ
第二款 不可分債務
第四百二十八條 債權ノ目的カ其性質上又ハ當事者ノ意思表示ニ因リテ不可分ナル場合ニ於テ數人ノ債權者アルトキハ各債權者ハ總債權者ノ為メニ履行ヲ請求シ又債務者ハ總債權者ノ為メ各債權者ニ對シテ履行ヲ為スコトヲ得
第四百二十九條 不可分債權者ノ一人ト其債務者トノ間ニ更改又ハ免除アリタル場合ニ於テモ他ノ債權者ハ債務ノ全部ノ履行ヲ請求スルコトヲ得其一人ノ債權者カ其權利ヲ失ハサレハ之ニ分與スヘキ利益ヲ債務者ニ償還スルコトヲ要ス
此他不可分債權者ノ一人ノ行為又ハ一人ニ付キ生シタル事項ハ他ノ債權者ニ對シテ其効力ヲ生セス
第四百三十條 數人カ不可分債務ヲ負擔スル場合ニ於テハ前條ノ規定及ヒ連帯債務ニ關スル規定ヲ準用ス但第四百三十四條乃至第四百四十條ノ規定ハ此限ニ在ラス
第四百三十一條 不可分債務カ可分債務ト變シタルトキハ各債權者ハ自己ノ部分ニ付テノミ履行ヲ請求スルコトヲ得又各債務者ハ其負擔部分ニ付テノミ履行ノ責ニ任ス
第三款 連帯債務
四百三十二條 數人カ連帯債務ヲ負擔スルトキハ債權者ハ其債務者ノ一人ニ對シ又ハ同時若クハ順次ニ總債務者ニ對シテ全部又ハ一部ノ履行ヲ請求スルコトヲ得
第四百三十三條 連帯債務者ノ一人ニ付キ法律行為ノ無効又ハ取消ノ原因ノ存スル為メ 他ノ債務者ノ債務ノ効力ヲ妨クルコトナシ
第四百三十四條 連帯債務者ノ一人ニ對スル履行ノ請求ハ他ノ債務者ニ對シテモ其ノ効力ヲ生ス
第四百三十五條 連帯債務者ノ一人ト債權者トノ間ニ更改アリタルトキハ債權ハ總債務者ノ利益ノ為メニ消滅ス
第四百三十六條 連帯債務者ノ一人カ債權者ニ對シテ債權ヲ有スル場合ニ於テ其債務者カ相殺ヲ援用シタルトキハ債權ハ總債務者ノ利益ノ為メニ消滅ス
右ノ債權ヲ有スル債務者カ相殺ヲ援用セサル間ハ其債務者ノ負擔部分ニ付テノミ他ノ債務者ニ於テ相殺ヲ援用スルコトヲ得
第四百三十七條 連帯債務者ノ一人ニ對シテ為シタル債務ノ免除ハ其債務者ノ負擔部分ニ付テノミ他ノ債務者ノ利益ノ為メニモ其効力ヲ生ス
第四百三十八條 連帯債務者ノ一人ト債權者トノ間ニ混同アリタルトキハ其債務者ハ辨濟ヲ為シタルモノト看做ス
第四百三十九條 連帯債務者ノ一人ノ為メニ時効カ完成シタルトキハ其債務者ノ負擔部分ニ付テハ他ノ債務者モ亦其義務ヲ免ル
第四百四十條 前六條ニ掲ケタル事項ヲ除ク外連帯債務者ノ一人ニ付キ生シタル事項ハ 他ノ債務者ニ對シテ其効力ヲ生セス
第四百四十一條 連帯債務者ノ全員又ハ其中ノ數人カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ債權者ハ其債權ノ全額ニ付キ各財團ノ配當ニ加入スルコトヲ得
第四百四十二條 連帯債務者ノ一人カ債務ヲ辨濟シ其他自己ノ出捐ヲ以テ共同ノ免責ヲ得タルトキハ他ノ債務者ニ對シ其各自ノ負擔部分ニ付キ求償權ヲ有ス
前項ノ求償ハ辨濟其他免責アリタル日以後ノ法定利息及ヒ避クルコトヲ得サリシ費用其他ノ損害ノ賠償ヲ包含ス
第四百四十三條 連帯債務者ノ一人カ債權者ヨリ請求ヲ受ケタルコトヲ他ノ債務者ニ通知セスシテ辨濟ヲ為シ其他自己ノ出捐ヲ以テ共同ノ免責ヲ得タル場合ニ於テ他ノ債務者カ債權者ニ對抗スルコトヲ得ヘキ事由ヲ有セシトキハ其負擔部分ニ付キ之ヲ以テ其債務者ニ對抗スルコトヲ得但相殺ヲ以テ之ニ對抗シタルトキハ過失アル債務者ハ債權者ニ對シ 相殺ニ因リテ消滅スヘカリシ債務ノ履行ヲ請求スルコトヲ得
連帯債務者ノ一人カ辨濟其他自己ノ出捐ヲ以テ共同ノ免責ヲ得タルコトヲ他ノ債務者ニ通知スルコトヲ怠リタルニ因リ他ノ債務者カ善意ニテ債權者ニ辨濟ヲ為シ其他有償ニ免責ヲ得タルトキハ其債務者ハ自己ノ辨濟其他免責ノ行為ヲ有効ナリシモノト看做スコトヲ得
第四百四十四條 連帯債務者中ニ償還ヲ為ス資力ナキ者アルトキハ其償還スルコト能ハサル部分ハ求償者及ヒ他ノ資力アル者ノ間ニ其各自ノ負擔部分ニ應シテ之ヲ分割ス但求償者ニ過失アルトキハ他ノ債務者ニ對シテ分擔ヲ請求スルコトヲ得ス
第四百四十五條 連帯債務者ノ一人カ連帯ノ免除ヲ得タル場合ニ於テ他ノ債務者中ニ辨濟ノ資力ナキ者アルトキハ債權者ハ其無資力者カ辨濟スルコト能ハサル部分ニ付キ連帯ノ免除ヲ得タル者カ負擔スヘキ部分ヲ負擔ス
 
第四款 保證債務
第一目 總則
第四百四十六條 保證人ハ主タル債務者カ其債務ヲ履行セサル場合ニ於テ其履行ヲ為ス責ニ任ス
第四百四十七條 保證債務ハ主タル債務ニ關スル利息、違約金、損害賠償其他總テ其債務ニ從タルモノヲ包含ス
保證人ハ其保證債務ニ付テノミ違約金又ハ損害賠償ノ額ヲ約定スルコトヲ得第四百四十八條 保證人ノ負擔カ債務ノ目的又ハ體様ニ付キ主タル債務ヨリ重キトキハ 之ヲ主タル債務ノ限度ニ減縮ス
第四百四十九條 無能力ニ因リテ取消スコトヲ得ヘキ債務ヲ保證シタル者カ保證契約ノ當時其取消ノ原因ヲ知リタルトキハ主タル債務者ノ不履行又ハ其債務ノ取消ノ場合ニ付キ同一ノ目的ヲ有スル獨立ノ債務ヲ負擔シタルモノト推定ス
第四百五十條 債務者カ保證人ヲ立ツル義務ヲ負フ場合ニ於テハ其保證人ハ左ノ條件ヲ具備スル者タルコトヲ要ス
一 能力者タルコト
二 辨濟ノ資力ヲ有スルコト
三 債務ノ履行地ヲ管轄スル控訴院ノ管轄内ニ住所ヲ有シ又ハ假住所ヲ定メタルコト
保證人カ前項第二號又ハ第三號ノ條件ヲ缺クニ至リタルトキハ債權者ハ前項ノ條件ヲ具備スル者ヲ以テ之ニ代フルコトヲ請求スルコトヲ得
前二項ノ規定ハ債權者カ保證人ヲ指名シタル場合ニハ之ヲ適用セス
第四百五十一條 債務者カ前條ノ條件ヲ具備スル保證人ヲ立ツルコト能ハサルトキハ他ノ擔保ヲ供シテ之ニ代フルコトヲ得
第四百五十二條 債權者カ保證人ニ債務ノ履行ヲ請求シタルトキハ保證人ハ先ツ主タル債務者ニ催告ヲ為スヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得但主タル債務者カ破産ノ宣告ヲ受ケ又ハ其行方カ知レサルトキハ此限ニ在ラス
第四百五十三條 債權者カ前條ノ規定ニ從ヒ主タル債務者ニ催告ヲ為シタル後ト雖モ保證人カ主タル債務者ニ辨濟ノ資力アリテ且執行ノ容易ナルコトヲ證明シタルトキハ債權者ハ先ツ主タル債務者ノ財産ニ付キ執行ヲ為スコトヲ要ス
第四百五十四條 保證人カ主タル債務者ト連帯シテ債務ヲ負擔シタルトキハ前二條ニ定メタル權利ヲ有セス
第四百五十五條 第四百五十二條及ヒ第四百五十三條ノ規定ニ依リ保證人ノ請求アリタルニ拘ハラス債權者カ催告又ハ執行ヲ為スコトヲ怠リ其後主タル債務者ヨリ全部ノ辨濟ヲ得サルトキハ保證人ハ債權者カ直チニ催告又ハ執行ヲ為セハ辨濟ヲ得ヘカリシ限度ニ於テ其義務ヲ免ル
第四百五十六條 數人ノ保證人アル場合ニ於テハ其保證人カ各別ノ行為ヲ以テ債務ヲ負擔シタルトキト雖モ第四百二十七條ノ規定ヲ適用ス
第四百五十七條 主タル債務者ニ對スル履行ノ請求其他時効ノ中斷ハ保證人ニ對シテモ 其効力ヲ生ス
保證人ハ主タル債務者ノ債權ニ依リ相殺ヲ以テ債權者ニ對抗スルコトヲ得
第四百五十八條 主タル債務者カ保證人ト連帯シテ債務ヲ負擔スル場合ニ於テハ第四百三十四條乃至第四百四十條ノ規定ヲ適用ス
第四百五十九條 保證人カ主タル債務者ノ委託ヲ受ケテ保證ヲ為シタル場合ニ於テ過失ナクシテ債權者ニ辨濟スヘキ裁判言渡ヲ受ケ又ハ主タル債務者ニ代ハリテ辨濟ヲ為シ其他自己ノ出捐ヲ以テ債務ヲ消滅セシムヘキ行為ヲ為シタルトキハ其保證人ハ主タル債務者ニ對シテ求償權ヲ有ス
第四百四十二條第二項ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四百六十條 保證人カ主タル債務者ノ委託ヲ受ケテ保證ヲ為シタルトキハ其保證人ハ 左ノ場合ニ於テ主タル債務者ニ對シテ豫メ求償權ヲ行フコトヲ得
 主タル債務者カ破産ノ宣告ヲ受ケ且債權者カ其財團ノ配當ニ加入セサルトキ
二 債務カ辨濟期ニアルトキ但保證契約ノ後債權者カ主タル債務者ニ許與シタル期限ハ之ヲ以テ保證人ニ對抗スルコトヲ得ス
三 債務ノ辨濟期カ不確定ニシテ且其最長期ヲモ確定スルコト能ハサル場合ニ於テ 保證契約ノ後十年ヲ経過シタルトキ
第四百六十一條 前二條ノ規定ニ依リ主タル債務者カ保證人ニ對シテ賠償ヲ為ス場合ニ於テ債權者カ全部ノ辨濟ヲ受ケサル間ハ主タル債務者ハ保證人ヲシテ擔保ヲ供セシメ又ハ之ニ對シテ自己ニ免責ヲ得セシムヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得
右ノ場合ニ於テ主タル債務者ハ供託ヲ為シ、擔保ヲ供シ又ハ保證人ニ免責ヲ得セシメテ 其賠償ノ義務ヲ免ルルコトヲ得
第四百六十二條 主タル債務者ノ委託ヲ受ケスシテ保證ヲ為シタル者カ債務ヲ辨濟シ其他自己ノ出捐ヲ以テ主タル債務者ニ其債務ヲ免レシメタルトキハ主タル債務者ハ其當時利益ヲ受ケタル限度ニ於テ賠償ヲ為スコトヲ要ス
主タル債務者ノ意思ニ反シテ保證ヲ為シタル者ハ主タル債務者カ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テノミ求償權ヲ有ス但主タル債務者カ求償ノ日以前ニ相殺ノ原因ヲ有セシコトヲ主張スルトキハ保證人ハ債權者ニ對シ其相殺ニ因リテ消滅スヘカリシ債務ノ履行ヲ請求スルコトヲ得
第四百六十三條 第四百四十三條ノ規定ハ保證人ニ之ヲ準用ス
保證人カ主タル債務者ノ委託ヲ受ケテ保證ヲ為シタル場合ニ於テ善意ニテ辨濟其他免責ノ為メニスル出捐ヲ為シタルトキハ第四百四十三ノ規定ハ主タル債務者ニモ亦之ヲ準用ス
第四百六十四條 連帯債務者又ハ不可分債務者ノ一人ノ為メニ保證ヲ為シタル者ハ他ノ債務者ニ對シテ其負擔部分ノミニ付キ求償權ヲ有ス
第四百六十五條 數人ノ保證人アル場合ニ於テ主タル債務カ不可分ナル為メ又ハ各保證人カ全額ヲ辨濟スヘキ特約アル為メ一人ノ保証人カ全額其他自己ノ負擔部分ヲ超ユル額ヲ辨濟シタルトキハ第四百四十二條乃至第四百四十四條ノ規定ヲ準用ス
前項ノ場合ニ非スシテ互ニ連帯セサル保證人ノ一人カ全額其他自己ノ負擔部分ヲ超ユル額ヲ辨濟シタルルトキハ第四百六十二條ノ規定ヲ準用ス
 
第四節 債權ノ譲渡
 
第四百六十六條 債權ハ之ヲ譲渡スコトヲ得但其性質カ之ヲ許ササルトキハ此限ニ在ラス
前項ノ規定ハ當事者カ反對ノ意思ヲ表示シタル場合ニハ之ヲ適用セス但其意思表示ハ 善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四百六十七條 指名債權ノ譲渡ハ譲渡人カ之ヲ債務者ニ通知ヲシ又ハ債務者カ承諾ヲ非サレハ之ヲ以テ債務者其他ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
前項ノ通知又ハ承諾ハ確定日附アル證書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ以テ債務者以外ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四百六十八條 債務者カ異議ヲ留メスシテ前條ノ承諾ヲ為シタルトキハ譲渡人ニ對抗スルコトヲ得ヘカリシ事由アルモ之ヲ以テ譲受人ニ對抗スルコトヲ得ス但債務者カ其債務ヲ消滅セシムル為メ譲渡人ニ拂渡シタルモノアルトキハ之ヲ取リ返シ又譲渡人ニ對シテ負擔シタル債務アルトキハ之ヲ成立セサルモノト看做スコトヲ妨ケス
譲渡人カ譲渡ノ通知ヲ為シタルニ止マルトキハ債務者ハ其通知ヲ受クルマテニ譲渡人ニ對シテ生シタル事由ヲ以テ譲受人ニ對抗スルコトヲ得
第四百六十九條 指圖債權ノ譲渡ハ其證書ニ譲渡ノ裏書ヲ為シテ之ヲ譲受人ニ交附スルニ非サレハ之ヲ以テ債務者其他ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第四百七十條 指圖債權ノ債務者ハ其證書ノ所持人及ヒ其署名、捺印ノ眞偽ヲ調査スル權利ヲ有スルモ其義務ヲ負フコトナシ但債務者ニ悪意又ハ重大ナル過失アルトキハ其辨濟ハ無効トス
第四百七十一條 前條ノ規定ハ證書ニ債權者ヲ指名シタルモ其證書ノ所持人ニ辨濟スヘキ旨ヲ附記シタル場合ニ之ヲ準用ス
第四百七十二條 指圖債權ノ債務者ハ其證書ニ記載シタル事項及ヒ其證書ノ性質ヨリ當然ニ生スル結果ヲ除ク外原債權者ニ對抗スルコトヲ得ヘカリシ事由ヲ以テ善意ノ譲受人ニ對抗スルコトヲ得ス
第四百七十三條 前條ノ規定ハ無記名債權ニ之ヲ準用ス
 
第五節 債權ノ消滅
第一款 辨濟
第四百七十四條 債務ノ辨濟ハ第三者之ヲ為スコトヲ得但其債務ノ性質カ之ヲ許ササルトキ又ハ當事者カ反對ノ意思ヲ表示為シタルトキハ此限ニ在ラス 
利害ノ關係ヲ有セサル第三者ハ債務者ノ意思ニ反シテ辨濟ヲ為スコトヲ得ス
第四百七十五條 辨濟者カ他人ノ物ヲ引キ渡シタルトキハ更ニ有効ナル辨濟ヲ為スニ非サレハ其物ヲ取リ戻スコトヲ得ス
第四百七十六條 譲渡ノ能力ナキ所有者カ辨濟トシテ物ノ引渡ヲ為シタル場合ニ於テ其辨濟ヲ取消シタルトキハ其所有者ハ更ニ有効ナル辨濟ヲ為スニ非サレハ其物ヲ取リ戻スコトヲ得ス
第四百七十七條 前二條ノ場合ニ於テ債權者カ辨濟トシテ受ケタル物ヲ善意ニテ消費シ 又ハ譲渡シタルトキハ其辨濟ハ有効トス但債權者カ第三者ヨリ賠償ノ請求ヲ受ケタルトキハ辨濟者ニ對シテ求償ヲ為スコトヲ妨ケス
第四百七十八條 債權ノ準占有者ニ為シタル辨濟ハ辨濟者カ善意ナリシトキニ限リ其効力ヲ有ス
第四百七十九條 前條ノ場合ヲ除ク外辨濟受領ノ權限ヲ有セサル者ニ為シタル辨濟ハ債權者カコレニ因リテ利益ヲ受ケタル限度ニ於テノミ其効力ヲ有ス
第四百八十條 受取證書ノ持参人ハ辨濟受領ノ權限アルモノト看做ス但辨濟者カ其權限ナキコトヲ知リタルトキ又ハ過失ニ因リテ之ヲ知ラサリシトキハ此限ニ在ラス
第四百八十一條 支拂ノ差止ヲ受ケタル第三債務者カ自己ノ債權者ニ辨濟ヲ為シタルトキハ差押債權者ハ其受ケタル損害ノ限度ニ於テ更ニ辨濟ヲ為スヘキ旨ヲ第三債務者ニ請求スルコトヲ得
前項ノ規定ハ第三債務者ヨリ其債權者ニ對スル求償權ノ行使ヲ妨ケス
第四百八十二條 債務者カ債權者ノ承諾ヲ以テ其負擔シタル給付ニ代ヘテ他ノ給付ヲ為シタルトキハ其給付ハ辨濟ト同一ノ効力ヲ有ス
第四百八十三條 債權ノ目的カ特定物ノ引渡シナルトキハ辨濟者ハ其引渡シヲ為スヘキ時ノ現状ニテ其物ヲ引キ渡スコトヲ要ス
第四百八十四條 辨濟ヲ為スヘキ場所ニ付キ別段ノ意思表示ナキトキハ特定物ノ引渡シハ債權發生ノ當時其物ノ存在セシ場所ニ於テ之ヲ為シ其他ノ辨濟ハ債權者ノ現時ノ住所ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
第四百八十五條 辨濟ノ費用ニ付キ別段ノ意思表示ナキトキハ其費用ハ債務者之ヲ負擔ス 但債權者カ住所ノ移轉其他ノ行為ニ因リテ辨濟ノ費用ヲ増加シタルトキハ其増加額ハ債權者之ヲ負擔ス
第四百八十六條 辨濟者ハ辨濟受領者ニ對シテ受取證書ノ交附ヲ請求スルコトヲ得
第四百八十七條 債權ノ證書アル場合ニ於テ辨濟者カ全部ノ辨濟ヲ為シタルトキハ其證書ノ返還ヲ請求スルコトヲ得
第四百八十八條 債務者カ同一ノ債權者ニ對シテ同種ノ目的ヲ有スル數個ノ債務ヲ負擔スル場合ニ於テ辨濟トシテ提供シタル給付カ總債務ヲ消滅セシムルニ足ラサルトキハ辨濟者ハ給付ノ時ニ於テ其辨濟ヲ充當スヘキ債務ヲ指定スルコトヲ得
辨濟者カ前項ノ指定ヲ為ササルトキハ辨濟受領者ハ其受領ノ時ニ於テ其辨濟ノ充當ヲ為スコトヲ得但辨濟者カ其充當ニ對シテ直チニ異議ヲ述ヘタルトキハ此限ニ在ラス
前二項ノ場合ニ於テ辨濟ノ充當ハ相手方ニ對スル意思表示ニ因リテ之ヲ為ス
第四百八十九條 當時者カ辨濟ノ充當ヲ為ササルトキハ左ノ規定ニ從ヒ其辨濟ヲ充當ス
一 總債務中辨濟期ニ在ルモノト辨濟期ニ在ラサルモノトアルトキハ辨濟期ニアルモノヲ先ニス
二 總債務カ辨濟期ニ在ルトキ又ハ辨濟期ニ在ラサルトキハ債務者ノ為メニ辨濟ノ利益多キモノヲ先ニス
三 債務者ノ為メニ辨濟ノ利益相同シキトキハ辨濟期ノ先ツ至リタルモノ又ハ先ツ至ヘキモノヲ先ニス
四 前二號ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ債務ノ辨濟ハ各債務ノ額ニ應シテ之ヲ充當ス
第四百九十條 一個ノ債務ノ辨濟トシテ數個ノ給付ヲ為スヘキ場合ニ於テ辨濟者カ其債務ノ全部ヲ消滅セシムルニ足ラサル給付ヲ為シタルトキハ前二條ノ規定ヲ準用ス
第四百九十一條 債務者カ一個又ハ數個ノ債務ニ付キ元本ノ外利息及ヒ費用ヲ拂フヘキ場合ニ於テ辨濟者カ其債務ノ全部ヲ消滅セシムルニ足ラサル給付ヲ為シタルトキハ之ヲ以テ順次ニ費用、利息及ヒ元本ニ充當スルコトヲ要ス第四百八十九條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
第四百九十二條 辨濟ノ提供ハ其提供ノ時ヨリ債務不履行ニ因リテ生スヘキ一切ノ責任ヲ免レシム
第四百九十三條 辨濟ノ提供ハ債務ノ本旨ニ從ヒテ現實ニ之ヲ為スコトヲ要ス但債權者カ豫メ其受領ヲ拒ミ又ハ債務ノ履行ニ付キ債權者ノ行為ヲ要スルトキハ辨濟ノ準備ヲ為シタルコトヲ通知シテ其受領ヲ催告スルヲ以テ足ル
第四百九十四條 債權者カ辨濟ノ受領ヲ拒ミ又ハ之ヲ受領スルコト能ハサルトキハ辨濟者ハ債權者ノ為メニ辨濟ノ目的物ヲ供託シテ其債務ヲ免ルルコトヲ得辨濟者ノ過失ナクシテ債權者ヲ確知スルコト能ハサルトキ亦同シ
第四百九十五條 供託ハ債務履行地ノ供託所ニ之ヲ為スコトヲ要ス
供託所ニ付キ法令ニ別段ノ定ナキ場合ニ於テハ裁判所ハ辨濟者ノ請求ニ因リ供託所ノ指定及ヒ供託物保管者ノ選任ヲ為スコトヲ要ス
供託者ハ遅滯ナク債權者ニ供託ノ通知ヲ為スコトヲ要ス
第四百九十六條 債權者カ供託ヲ受諾セス又ハ供託ヲ有効ト宣告シタル判決カ確定セサル間ハ辨濟者ハ供託物ヲ取リ戻スコトヲ得此場合ニ於テハ供託ヲ為ササリシモノト看做ス
前項ノ規定ハ供託ニ因リテ質權又ハ抵當權カ消滅シタル場合ニハ之ヲ適用セス
第四百九十七條 辨濟ノ目的物カ供託ニ適セス又ハ其物ニ付キ滅失若クハ毀損ノ虞アルトキハ辨濟者ハ裁判所ノ許可ヲ得テ之ヲ競賣シ其代價ヲ供託スルコトヲ得其物ノ保存ニ付キ過分ノ費用ヲ要スルトキ亦同シ
第四百九十八條 債務者カ債權者ノ給付ニ對シテ辨濟ヲ為スヘキ場合ニ於テハ債權者ハ 其給付ヲ為スニ非サレハ供託物ヲ受取ルコトヲ得ス
第四百九十九條 債務者ノ為メニ辨濟ヲ為シタル者ハ其辨濟ト同時ニ債權者ノ承諾ヲ得テ 之ニ代位スルコトヲ得
第四百六十七條ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス

第五百條 辨濟ヲ為スニ付キ正當ノ利益ヲ有スル者ハ辨濟ニ因リテ當然債權者ニ代位ス

第五百一條 前二條ノ規定ニ依リテ債權者ニ代位シタル者ハ自己ノ權利ニ基キ求償ヲ為スコトヲ得ヘキ範囲内ニ於テ債權ノ効力及ヒ擔保トシテ其債權者カ有セシ一切ノ權利ヲ行フコトヲ得但左ノ規定ニ從フコトヲ要ス
一 保證人ハ豫メ先取特權、不動産質權又ハ抵當權ノ登記ニ其代位ヲ附記シタルニ非サレハ其先取特權、不動産質權又ハ抵當權ノ目的タル不動産ノ第三取得者ニ對シテ債權者ニ代位セス
二 第三取得者ハ保證人ニ對シテ債權者ニ代位セス
三 第三取得者ノ一人ハ各不動産ノ價格ニ應スルニ非サレハ他ノ第三取得者ニ對シテ債權者ニ代位セス
四 前號ノ規定ハ自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ擔保ニ供シタル者ノ間ニ準用ス
五 保證人ト自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ擔保ニ供シタル者トノ間ニ於テハ其頭數ニ應スルニ非サレハ債權者ニ代位セス但自己ノ財産ヲ以テ他人ノ債務ノ擔保ニ供シタル者數人アルトキハ保證人ノ負擔部分ヲ除キ其殘額ニ付キ各財産ノ價格ニ應スルニ非サレハ之ニ對シテ代位ヲ為スコトヲ得ス
右ノ場合ニ於テ其財産カ不動産ナルトキハ第一號ノ規定ヲ準用ス
第五百二條 債權ノ一部ニ付キ代位辨濟アリタルトキハ代位者ハ其辨濟シタル價額ニ應シテ債權者ト共ニ其權利ヲ行フ
前項ノ場合ニ於テ債務ノ不履行ニ因ル契約ノ解除ハ債權者ノミ之ヲ請求スルコトヲ得 但代位者ニ其辨濟シタル價額及ヒ其利息ヲ償還スルコトヲ要ス
第五百三條 代位辨濟ニ因リテ全部ノ辨濟ヲ受ケタ債權者ハ債權ニ關スル證書及ヒ其占有ニ在ル擔保物ヲ代位者ニ交附スルコトヲ要ス
債權ノ一部ニ付キ代位辨濟アリタル場合ニ於テハ債權者ハ債權證書ニ其代位ヲ記入シ 且代位者ヲシテ其占有ニ在ル擔保物ノ保存ヲ監督セシムルコトヲ要ス
第五百四條 第五百條ノ規定ニ依リテ代位ヲ為スヘキ者アル場合ニ於テ債權者カ故意又ハ懈怠ニ因リテ其擔保ヲ喪失又ハ減少セシメタルトキハ其代位ヲ為スヘキ者ハ其喪失又ハ減少ニ因リ償還ヲ受クルコト能ハサルニ至リタル限度ニ於テ其責任ヲ免レル
 
二款 相殺
第五百五條 二人カ互ニ同種ノ目的ヲ有スル債務ヲ負擔スル場合ニ於テ雙方ノ債務カ辨濟期ニアルトキハ各債務者ハ其對當額ニ付キ相殺ニ因リテ其債務ヲ免ルルコトヲ得但債務ノ性質カ之ヲ許ササルトキハ此限ニ在ラス
前項ノ規定ハ當事者カ反對ノ意思ヲ表示シタル場合ニハ之ヲ適用セス但其意思表示ハ 之ヲ以テ善意ノ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第五百六條 相殺ハ當事者ノ一方ヨリ其相手方ニ對スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス但其意思表示ニハ條件又ハ期限ヲ附スルコトヲ得ス
前項ノ意思表示ハ雙方ノ債務カ互ニ相殺ヲ為スニ適シタル始ニ遡リテ其効力ヲ生ス
第五百七條 相殺ハ雙方ノ債務ノ履行地カ異ナリタルトキト雖モ之ヲ為スコトヲ得但相殺ヲ為ス當事者ハ其相手方ニ對シ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スルコトヲ要ス
第五百八條 時効ニ因リテ消滅シタル債權カ其消滅以前ニ相殺ニ適シタル場合ニ於テハ 其債權者ハ相殺ヲ為スコトヲ得
第五百九條 債務カ不法行為ニ因リテ生シタルトキハ其債務者ハ相殺ヲ以テ債權者ニ對抗スルコトヲ得ス
第五百十條 債權カ差押ヲ禁シタルモノナルトキハ其債務者ハ相殺ヲ以テ債權者ニ對抗スルコトヲ得ス
第五百十一條 支拂ノ差止ヲ受ケタル第三債務者ハ其後ニ取得シタル債權ニ依リ相殺ヲ以テ差押債權者ニ對抗スルコトヲ得ス
第五百十二條 第四百八十八條乃至第四百九十一條ノ規定ハ相殺ニ之ヲ準用ス
第三款 更改
第五百十三條 當事者カ債務ノ要素ヲ變更スル契約ヲ為シタルトキハ其債務ハ更改ニ因リテ消滅スル
條件附債務ヲ無條件債務トシ、無條件債務ニ條件ヲ附シ又ハ條件ヲ變更スルハ債務ノ要素ヲ變更為スルモノト看做ス債務ノ履行ニ代ヘテ為替手形ヲ發行スル亦同シ
第五百十四條 債務者ノ交替ニ因ル更改ハ債權者ト新債務者トノ契約ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得但舊債務者ノ意思ニ反シテ之ヲ為スコトヲ得ス

第五百十五條 債權者ノ交替ニ因ル更改ハ確定日附アル證書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス

第五百十六條 第四百六十八條第一項ノ規定ハ債權者ノ交替ニ因ル更改ニ之ヲ準用ス
第五百十七條 更改ニ因リテ生シタル債務カ不法ノ原因ノ為メ又ハ當事者ノ知ラサル事由ニ因リテ成立セス又ハ取消サレタルトキハ舊債務ハ消滅セス
第五百十八條 更改ノ當事者ハ舊債務ノ目的ノ限度ニ於テ其債務ノ擔保ニ供シタル質權又ハ抵當權ヲ新債務ニ移スコトヲ得但第三者カ之ヲ供シタル場合ニ於テハ其承諾ヲ得ルコトヲ要ス
 
第四款 免除
第五百十九條 債權者カ債務者ニ對シテ債務ヲ免除スル意思ヲ表示シタルトキハ其債權ハ 消滅ス
 
第五款 混同
第五百二十條 債權及ヒ債務カ同一人ニ歸シタルトキハ其債權ハ消滅ス但其債權カ第三者ノ權利ノ目的タルトキハ此限ニ在ラス
 
第二章 契約
 第一節 總則
  第一款 契約ノ成立

 

第五百二十一條 承諾ノ期間ヲ定メテ為シタル契約ノ申込ハ之ヲ取消スコトヲ得ス申込者カ前項ノ期間内ニ承諾ノ通知ヲ受ケサルトキハ申込ハ其効力ヲ失フ
第五百二十二條 承諾ノ通知カ前條ノ期間後ニ到達シタルモ通常ノ場合ニ於テハ其期間内ニ到達スヘカリシ時ニ發送為シタルモノナルコトヲ知リ得ヘキトキハ申込者ハ遅滯ナク 相手方ニ對シテ其延著ノ通知ヲ發スルコトヲ要ス但其到達前ニ遅延ノ通知ヲ發シタルトキハ此限ニ在ラス
申込者カ前項ノ通知ヲ怠リタルトキハ承諾ノ通知ハ延著セサリシモノト看做ス
第五百二十三條 遅延シタル承諾ハ申込者ニ於テ之ヲ新ナル申込ト看做スコトヲ得
第五百二十四條 承諾ノ期間ヲ定メスシテ隔地者ニ為シタル申込ハ申込者カ承諾ノ通知ヲ受クルニ相當ナル期間之ヲ取消スコトヲ得ス
第五百二十五條 第九十七條第二項ノ規定ハ申込者カ反對ノ意思ヲ表示シ又ハ其相手方カ死亡若クハ能力喪失ノ事實ヲ知リタル場合ニハ之ヲ適用セス
第五百二十六條 隔地者間ノ契約ハ承諾ノ通知ヲ發シタル時ニ成立ス
申込者ノ意思表示又ハ取引上ノ慣習ニ依リ承諾ノ通知ヲ必要トセサル場合ニ於テハ契約ハ承諾ノ意思表示ト認ムヘキ事實アリタル時ニ成立ス
第五百二十七條 申込ノ取消ノ通知カ承諾ノ通知ヲ發シタル後ニ到達シタルモ通常ノ場合ニ於テハ其前ニ到達スヘカリシ時ニ發送シタルモノナルコトヲ知リ得ヘキトキハ承諾者ハ遅滯ナク申込者ニ對シテ其延著ノ通知ヲ發スルコトヲ要ス
承諾者カ前項ノ通知ヲ怠リタルトキハ契約ハ成立セサリシモノト看做ス
第五百二十八條 承諾者カ申込ニ條件ヲ附シ其他變更ヲ加ヘテ之ヲ承諾シタルトキハ其申込ノ拒絶ト共ニ新ナル申込ヲ為シタルモノト看做ス
第五百二十九條 或行為ヲ為シタル者ニ一定ノ報酬ヲ與フヘキ旨ヲ廣告シタル者ハ其行為ヲ為シタル者ニ對シテ其報酬ヲ與フル義務ヲ負フ
第五百三十條 前條ノ場合ニ於テ廣告者ハ其指定シタル行為ヲ完了スル者ナキ間ハ前ノ廣告ト同一ノ方法ニ依リテ其廣告ヲ取消スコトヲ得但其廣告中ニ取消ヲナササル旨ヲ表示シタルトキハ此限ニ在ラス
前項ニ定メタル方法ニ依リテ取消ヲ為スコト能ハサル場合ニ於テハ他ノ方法ニ依リテ之ヲ為スコトヲ得但其取消ハ之ヲ知リタル者ニ對シテノミ其効力ヲ有ス
廣告者カ其指定シタル行為ヲ為スヘキ期間ヲ定メタルトキハ其取消權ヲ抛棄シタルモノト推定ス
第五百三十一條 廣告ニ定メタル行為ヲ為シタル者數人アルトキハ最初ニ其行為ヲ為シタル者ノミ報酬ヲ受クル權利ヲ有ス
數人カ同時ニ右ノ行為ヲ為シタル場合ニ於テハ各平等ノ割合ヲ以テ報酬ヲ受クル權利ヲ有ス但報酬カ其性質上分割ニ不便ナルトキ又ハ廣告ニ於テ一人ノミ之ヲ受クヘキモノトシタルトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ受クヘキ者ヲ定ム
前二項ノ規定ハ廣告中ニ之ニ異ナリタル意思ヲ表示シタルトキハ之ヲ適用セス
第五百三十二條 廣告ニ定メタル行為ヲ為シタル者數人アル場合ニ於テ其優等者ノミニ報酬ヲ與フヘキトキハ其廣告ハ應募ノ期間ヲ定メタルトキニ限リ其効力ヲ有ス
前項ノ場合ニ於テ應募者中何人ノ行為カ優等ナルカハ廣告中ニ定メタル者之ヲ判定ス若シ廣告中ニ判定者ヲ定メサリシトキハ廣告者之ヲ判定ス
應募者ハ前項ノ判定ニ對シテ異議ヲ述フルコトヲ得ス
數人ノ行為カ同等ト判定セラレタルトキハ前條第二項ノ規定ヲ準用ス
 
第二款 契約ノ効力
第五百三十三條 雙務契約當事者ノ一方ハ相手方カ其債務ノ履行ヲ提供スルマテハ自己ノ債務ノ履行ヲ拒ムコトヲ得但相手方ノ債務カ辨濟期ニ在ラサルトキハ此限ニ在ラス
第五百三十四條 特定物ニ關スル物權ノ設定又ハ移轉ヲ以テ雙務契約ノ目的ト為シタル場合ニ於テ其物カ債務者ノ責ニ歸スヘカラサル事由ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ 其滅失又ハ毀損ハ債權者ノ負擔ニ歸ス
不特定物ニ關スル契約ニ付テハ第四百一條第二項ノ規定ニ依リテ其物カ確定シタル時ヨリ前項ノ規定ヲ適用ス
第五百三十五條 前條ノ規定ハ停止條件附雙務契約ノ目的物カ條件ノ成否未定ノ間ニ於テ滅失シタル場合ニハ之ヲ適用セス
物カ債務者ノ責ニ歸スヘカラサル事由ニ因リテ毀損シタルトキハ其毀損ハ條件ノ負擔ニ歸ス
物カ債務者ノ責ニ歸スヘキ事由ニ因リテ毀損シタルトキハ債權者ハ條件成就ノ場合ニ於テ其選擇ニ從ヒ契約ノ履行又ハ其解除ヲ請求スルコトヲ得但損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
第五百三十六條 前二條ニ掲ケタル場合ヲ除ク外當事者雙方ノ責ニ歸スヘカラサル事由ニ因リテ債務ヲ履行スルコト能ハサルニ至リタルトキハ債務者ハ反對給付ヲ受クル權利ヲ有セス
債權者ノ責ニ歸スヘキ事由ニ因リテ債務ヲ履行ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキハ 債務者ハ反對給付ヲ受クル權利ヲ失ハス但自己ノ債務ヲ免レタルコトニ因リテ利益ヲ得タルトキハ之ヲ債權者ニ償還スルコトヲ要ス
第五百三十七條 契約ニ依リ當事者ノ一方カ第三者ニ對シテ或ル給付ヲ為スヘキコトヲ約シタルトキハ其第三者ハ債務者ニ對シテ直接ニ其給付ヲ請求スル權利ヲ有ス
前項ノ場合ニ於テ第三者ノ權利ハ其第三者カ債務者ニ對シテ契約ノ利益ヲ享受スル意思ヲ表示シタル時ニ發生ス
第五百三十八條 前條ノ規定ニ依リテ第三者ノ權利カ發生シタル後ハ當事者ハ之ヲ變更シ 又ハ消滅セシムルコトヲ得ス
第五百三十九條 債務者ハ第五百三十七條ニ掲ケタル契約ニ基因スル抗辨ハ債務者之ヲ以テ其契約ノ利益ヲ受クヘキ第三者ニ對抗スルコトヲ得
 
第三款 契約ノ解除
 
第五百四十條 契約又ハ法律ノ規定ニ依リ當事者ノ一方カ解除權ヲ有スルトキハ其解除ハ 相手方ニ對スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス
前項ノ意思表示ハ之ヲ取消スコトヲ得ス
第五百四十一條 當事者ノ一方カ其債務ヲ履行セサルトキハ相手方ハ相當ノ期間ヲ定メテ其履行ヲ催告シ若シ其期間内ニ履行ナキトキハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第五百四十二條 契約ノ性質又ハ當事者ノ意思表示ニ依リ一定ノ日時又ハ一定ノ期間内ニ履行ヲ為スニ非サレハ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサル場合ニ於テ當事者ノ一方カ履行ヲ為サスシテ其時期ヲ経過シタルトキハ相手方ハ前條ノ催告ヲ為サスシテ直チニ其契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第五百四十三條 履行ノ全部又ハ一部カ債務者ノ責ニ歸スヘキ事由ニ因リテ不能ト為リタルトキハ債權者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第五百四十四條 當事者ノ一方カ數人アル場合ニ於テハ契約ノ解除ハ其全員ヨリ又ハ其全員ニ對シテノミ之ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ解除權カ當事者中ノ一人ニ付キ消滅シタルトキハ他ノ者ニ付テモ亦消滅ス
第五百四十五條 當事者ノ一方カ其解除權ヲ行使シタルトキハ各當事者ハ其相手方ヲ原状ニ復セシムル義務ヲ負フ但第三者ノ權利ヲ害スルコトヲ得ス
前項ノ場合ニ於テ返還スヘキ金錢ニハ其受領ノ時ヨリ利息ヲ附スルコトヲ要ス
解除權ノ行使ハ損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
第五百四十六條 第五百三十三條ノ規定ハ前條ノ場合ニ之ヲ準用ス
第五百四十七條 解除權ノ行使ニ付キ期間ノ定ナキトキハ相手方ハ解除權ヲ有スル者ニ對シ相當ノ期間ヲ定メ其期間内ニ解除ヲ為スヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ得 若シ其期間内ニ解除ノ通知ヲ受ケサルトキハ解除權ハ消滅ス
第五百四十八條 解除權ヲ有スル者カ自己ノ行為又ハ過失ニ因リテ著シク契約ノ目的物ヲ毀損シ若クハ返還スルコト能ハサルニ至リタルトキ又ハ加工若クハ改造ニ因リテ之ヲ他ノ種類ノ物ニ變シタルトキハ解除權ハ消滅ス
契約ノ目的物カ解除權ヲ有スル者ノ行為又ハ過失ニ因ラスシテ滅失又ハ毀損シタルトキハ解除權ハ消滅セス
 
第二節 贈與
第五百四十九條 贈與ハ當事者ノ一方カ自己ノ財産ヲ無償ニテ相手方ニ與フル意思ヲ表示シ相手方カ受諾ヲ為スコトニ因リテ其効力ヲ生ス
第五百五十條 書面ニヨラサル贈與ハ各當事者之ヲ取消スコトヲ得但履行ノ終ハリタル部分ニ付テハ此限ニ在ラス
第五百五十一條 贈與者ハ贈與ノ目的タル物又ハ權利ノ瑕疵又ハ欠缺ニ付キ其責ニ任セス但贈與者カ其瑕疵又ハ欠缺ヲ知リテ之ヲ受贈者ニ告ケサリシトキハ此限ニ在ラス
負擔附贈與ニ付テハ贈與者ハ其負擔ノ限度ニ於テ賣主ト同シク擔保ノ責ニ任ス
第五百五十二條 定期ノ給付ヲ目的トスル贈與ハ贈與者又ハ受贈者ノ死亡ニ因リテ其効力ヲ失フ

第五百五十三條 負擔附贈與ニ付テハ本節ノ規定ノ外雙務契約ニ關スル規定ヲ適用ス

第五百五十四條 贈與者ノ死亡ニ因リテ効力ヲ生スヘキ贈與ハ遺贈ニ關スル規定ニ從フ
 
第三節 賣買
第一款 總則
第五百五十五條 賣買ハ當事者ノ一方カ或財産權ヲ相手方ニ移轉スルコトヲ約シ相手方カ之ニ其代金ヲ拂フコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
第五百五十六條 賣買ノ一方ノ豫約ハ相手方カ賣買ヲ完結スル意思ヲ表示シタル時ヨリ 賣買ノ効力ヲ生ス
前項ノ意思表示ニ付キ期間ヲ定メサリシトキハ豫約者ハ相當ノ期間ヲ定メ其期間内ニ賣買ヲ完結スルヤ否ヤヲ確答スヘキ旨ヲ相手方ニ催告スルコトヲ得若シ相手方カ其期間内ニ確答ヲ為ササルトキハ豫約ハ其効力ヲ失フ
第五百五十七條 買主カ賣主ニ手附ヲ交附シタルトキハ當事者ノ一方カ契約ノ履行ニ著手スルマテハ買主ハ其手附ヲ抛棄シ賣主ハ其倍額ヲ償還シテ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第五百四十五條第三項ノ規定ハ前項ノ場合ニハ之ヲ適用セス
第五百五十八條 賣買契約ニ關スル費用ハ當事者雙方平分シテ之ヲ負擔ス
第五百五十九條 本節ノ規定ハ賣買以外ノ有償契約ニ之ヲ準用ス但其契約ノ性質カ之ヲ許ササルトキハ此限ニ在ラス
 
第二款 賣買ノ効力
第五百六十條 他人ノ權利ヲ賣買ノ目的ト為シタルトキハ賣主ハ其權利ヲ取得シテ之ヲ買主ニ移轉スル義務ヲ負フ
第五百六十一條 前條ノ場合ニ於テ賣主カ其賣却シタル權利ヲ取得シテ之ヲ買主ニ移轉スルコト能ハサルトキハ買主ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但契約ノ當時其權利ノ賣主ニ屬セサルコトヲ知リタルトキハ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得ス
第五百六十二條 賣主カ契約ノ當時其賣却シタル權利ノ自己ニ屬セサルコトヲ知ラサリシ場合ニ於テ其權利ヲ取得シテ之ヲ買主ニ移轉スルコト能ハサルトキハ賣主ハ損害ヲ賠償シテ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ買主カ契約ノ當時其買受ケタル權利ノ賣主ニ屬セサルコトヲ知リタルトキハ賣主ハ買主ニ對シ單ニ其賣却シタル權利ヲ移轉スルコト能ハサル旨ヲ通知シテ 契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第五百六十三條 賣買ノ目的タル權利ノ一部カ他人ニ屬スルニ因リ賣主カ之ヲ買主ニ移轉スルコト能ハサルトキハ買主ハ其足ラサル部分ノ割合ニ應シテ代金ノ減額ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ殘存スル部分ノミナレハ買主カ之ヲ買受ケサルヘカリシトキハ善意ノ買主ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
代金減額ノ請求又ハ契約ノ解除ハ善意ノ買主カ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ妨ケス
第五百六十四條 前條ニ定メタル權利ハ買主カ善意ナリシトキハ事實ヲ知リタル時ヨリ 悪意ナリシトキハ契約ノ時ヨリ一年内ニ之ヲ行使スルコトヲ要ス
第五百六十五條 數量ヲ指示シテ賣買シタル物カ不足ナル場合及ヒ物ノ一部カ契約ノ當時既ニ滅失シタル場合ニ於テ買主カ其不足又ハ滅失ヲ知ラサリシトキハ前二條ノ規定ヲ準用ス
第五百六十六條 賣買ノ目的物カ地上權、永小作權、地役權、留置權又ハ質權ノ目的タル場合ニ於テ買主カ之ヲ知ラサリシトキハ之カ為メニ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサル場合ニ限リ買主ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得其他ノ場合ニ於テハ損害賠償ノ請求ノミヲ為スコトヲ得
前項ノ規定ハ賣買ノ目的タル不動産ノ為メニ存セリト称セシ地役權カ存セサリシトキ及ヒ其不動産ニ付キ登記シタル賃貸借アリタル場合ニ之ヲ準用ス
前二項ノ場合ニ於テ契約ノ解除又ハ損害賠償ノ請求ハ買主カ事實ヲ知リタル時ヨリ一年内ニ之ヲ為スコトヲ要ス
第五百六十七條 賣買ノ目的タル不動産ノ上ニ存シタル先取特權又ハ抵當權ノ行使ニ因リ買主カ其所有權ヲ失ヒタルトキハ其買主ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
買主ガ出捐ヲ為シテ其所有權ヲ保存シタルトキハ賣主ニ對シテ其出捐ノ償還ヲ請求スルコトヲ得
右孰レノ場合ニ於テモ買主カ損害ヲ受ケタルトキハ其賠償ヲ請求スルコトヲ得
第五百六十八條 強制競賣ノ場合ニ於テハ競落人ハ前七條ノ規定ニ依リ債務者ニ對シテ契約ノ解除ヲ為シ又ハ代金ノ減額ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ債務者カ無資力ナルトキハ競落人ハ代金ノ配當ヲ受ケタル債權者ニ對シテ其代金ノ全部又ハ一部ノ返還ヲ請求スルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ債務者カ物又ハ權利ノ欠缺ヲ知リテ之ヲ申出テス又ハ債權者カ之ヲ知リテ競賣ヲ請求シタルトキハ競落人ハ其過失者ニ對シテ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得
第五百六十九條 債權ノ賣主カ債務者ノ資力ヲ擔保シタルトキハ契約ノ當時ニ於ケル資力ヲ擔保シタルモノト推定ス
辨濟期ニ至ラサル債權ノ賣主カ債務者ノ将來ノ資力ヲ擔保シタルトキハ辨濟ノ期日ニ於ケル資力ヲ擔保シタルモノト推定ス
第五百七十條 賣買ノ目的物ニ隱レタル瑕疵アリタルトキハ第五百六十六條ノ規定ヲ準用ス但強制競賣ノ場合ハ此限ニ在ラス
第五百七十一條 第五百三十三條ノ規定ハ第五百六十三條乃至第五百六十六條及ヒ前條ノ場合ニ之ヲ準用ス
第五百七十二條 賣主ハ前十二條ニ定メタル擔保ノ責任ヲ負ハサル旨ヲ特約シタルトキト雖モ其知リテ告ケサリシ事實及ヒ自ラ第三者ノ為メニ設定シ又ハ之ニ譲渡シタル權利ニ付テハ其責ヲ免ルルコトヲ得ス
第五百七十三條 賣買ノ目的物ノ引渡ニ付キ期限アルトキハ代金ノ支拂ニ付テモ亦同一ノ期限ヲ附シタルモノト推定ス五百七十四條 賣買ノ目的物ノ引渡ト同時ニ代金ヲ拂フヘキトキハ其引渡ノ場所ニ於テ之ヲ拂フコトヲ要ス
第五百七十五條 未タ引渡ササル賣買ノ目的物カ果實ヲ生シタルトキハ其果實ハ賣主ニ屬ス
買主ハ引渡ノ日ヨリ代金ノ利息ヲ拂フ義務ヲ負フ但代金ノ支拂ニ付キ期限アルトキハ 其期限ノ到來スルマテハ利息ヲ拂フコトヲ要セス
第五百七十六條 賣買ノ目的ニ付キ權利ヲ主張スル者アリテ買主カ其買受ケタル權利ノ全部又ハ一部ヲ失フ虞アルトキハ買主ハ其危険ノ限度ニ應シ代金ノ全部又ハ一部ノ支拂ヲ拒ムコトヲ得但賣主カ相當ノ擔保ヲ供シタルトキハ此限ニ在ラス
第五百七十七條 買受ケタル不動産ニ付キ先取特權、質權又ハ抵當權ノ登記アルトキハ買主ハ滌除ノ手續ヲ終ハルマテ其代金ノ支拂ヲ拒ムコトヲ得但賣主ハ買主ニ對シテ遅滯ナク滌除ヲ為スヘキ旨ヲ請求スルコトヲ得
第五百七十八條 前二條ノ場合ニ於テ賣主ハ買主ニ對シテ代金ノ供託ヲ請求スルコトヲ得
 
第三款 買戻
 
第五百七十九條 不動産ノ賣主ハ賣買契約ト同時ニ為シタル買戻ノ特約ニ依リ買主カ拂ヒタル代金及ヒ契約ノ費用ヲ返還シテ其賣買ノ解除ヲ為スコトヲ得但當事者カ別段ノ意思ヲ表示セサリシトキハ不動産ノ果實ト代金ノ利息トハ相殺シタルモノト看做ス
第五百八十條 買戻ノ期間ハ十年ヲ超ユルコトヲ得ス若シ之ヨリ長キ期間ヲ定メタルトキハ之ヲ十年ニ短縮ス
買戻ニ付キ期間ヲ定メタルトキハ後日之ヲ伸長スルコトヲ得ス
買戻ニ付キ期間ヲ定メサリシトキハ五年内ニ之ヲ為スコトヲ要ス
第五百八十一條 賣買契約ト同時ニ買戻ノ特約ヲ登記シタルトキハ買戻ハ第三者ニ對シテモ其効力ヲ生ス
登記ヲ為シタル賃借人ノ權利ハ其殘期一年間ニ限リ之ヲ以テ賣主ニ對抗スルコトヲ得 但賣主ヲ害スル目的ヲ以テ賃貸借ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス
第五百八十二條 賣主ノ債權者カ第四百二十三條ノ規定ニ依リ賣主ニ代ハリテ買戻ヲ為サント欲スルトキハ買主ハ裁判所ニ於テ選任シタル鑑定人ノ評價ニ從ヒ不動産ノ現時ノ價額ヨリ賣主カ返還スヘキ金額ヲ控除シタル殘額ニ達スルマテ賣主ノ債務ヲ辨濟シ尚ホ餘剰アルトキハ之ヲ賣主ニ返還シテ買戻權ヲ消滅セシムルコトヲ得
第五百八十三條 賣主ハ期間内ニ代金及ヒ契約ノ費用ヲ提供スルニ非サレハ買戻ヲ為スコトヲ得ス
買主又ハ轉得者カ不動産ニ付キ費用ヲ出タシタルトキハ賣主ハ第百九十六條ノ規定ニ從ヒ之ヲ償還スルコトヲ要ス但有益費ニ付テハ裁判所ハ賣主ノ請求ニ因リ之ニ相當ノ期限ヲ許與スルコトヲ得
第五百八十四條 不動産ノ共有者ノ一人カ買戻ノ特約ヲ以テ其持分ヲ賣却シタル後其不動産ノ分割又ハ競賣アリタルトキハ賣主ハ買主カ受ケタル若クハ受クヘキ部分又ハ代金ニ付キ買戻ヲ為スコトヲ得但賣主ニ通知セスシテ為シタル分割及ヒ競賣ハ之ヲ以テ賣主ニ對抗スルコトヲ得ス
第五百八十五條 前條ノ場合ニ於テ買主カ不動産ノ競落人ト為リタルトキハ賣主ハ競賣ノ代金及ヒ第五百八十三條ニ掲ケタル費用ヲ拂ヒテ買戻ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ賣主ハ其不動産ノ全部ノ所有權ヲ取得ス
他ノ共有者ヨリ分割ヲ請求シタルニ因リ買主カ競落人ト為リタルトキハ賣主ハ其持分ノミニ付キ買戻ヲ為スコトヲ得ス
 
第四節 交換
第五百八十六條 交換ハ當事者カ互ニ金錢ノ所有權ニ非サル財産權ヲ移轉スルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
當事者ノ一方カ他ノ權利ト共ニ金錢ノ所有權ヲ移轉スルコトヲ約シタルトキハ其金錢ニ付テハ賣買ノ代金ニ關スル規定ヲ準用ス
 
第五節 消費貸借
第五百八十七條 消費貸借ハ當事者ノ一方カ種類、品等及ヒ數量ノ同シキ物ヲ以テ返還ヲ為スコトヲ約シテ相手方ヨリ金錢其他ノ物ヲ受取ルニ因リテ其効力ヲ生ス
第五百八十八條 消費貸借ニ因ラスシテ金錢其他ノ物ヲ給付スル義務ヲ負フ者アル場合ニ於テ當事者カ其物ヲ以テ消費貸借ノ目的ト為スコトヲ約シタルトキハ消費貸借ハ之ニ因リテ成立シタルモノト看做ス
第五百八十九條 消費貸借ノ豫約ハ爾後當事者ノ一方カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ其効力ヲ失フ
第五百九十條 利息付キノ消費貸借ニ於テ物ニ隱レタル瑕疵アリタルトキハ貸主ハ瑕疵カナキ物ヲ以テ之ニ代フルコトヲ要ス但損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
無利息ノ消費貸借ニ於テハ借主ハ瑕疵アル物ノ價額ヲ返還スルコトヲ得但貸主カ其瑕疵ヲ知リテ之ヲ借主ニ告ケサリシトキハ前項ノ規定ヲ準用ス
第五百九十一條 當事者カ返還ノ時期ヲ定メサリシトキハ貸主ハ相當ノ期間ヲ定メテ返還ノ催告ヲ為スコトヲ得
借主ハ何時ニテモ返還ヲ為スコトヲ得
第五百九十二條 借主カ第五百八十七條ノ規定ニ依リテ返還ヲ為スコト能ハサルニ至リタルトキハ其時ニ於ケル物ノ價額ヲ償還スルコトヲ要ス但第四百二條第二項ノ場合ハ此限ニ在ラス
 
第六節 使用貸借
 
第五百九十三條 使用貸借ハ當事者ノ一方カ無償ニテ使用及ヒ収益ヲ為シタル後返還ヲ為スコトヲ約シテ相手方ヨリ或物ヲ受取ルコトニ因リテ其効力ヲ生ス
第五百九十四條 借主ハ契約又ハ其目的物ノ性質ニ因リテ定マリタル用方ニ從ヒ其物ノ使用及ヒ収益ヲ為スコトヲ要ス
借主ハ貸主ノ承諾アルニ非サレハ第三者ヲシテ借用物ノ使用又ハ収益ヲ為サシムルコトヲ得ス
借主カ前二項ノ規定ニ反スル使用又ハ収益ヲ為シタルトキハ貸主ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第五百九十五條 借主ハ借用物ノ通常ノ必要費ヲ負擔ス
此他ノ費用ニ付テハ第五百八十三條第二項ノ規定ヲ準用ス

第五百九十六條 第五百五十一條ノ規定ハ使用貸借ニ之ヲ準用ス

第五百九十七條 借主ハ契約ニ定メタル時期ニ於テ借用物ノ返還ヲ為スコトヲ要ス
當事者カ返還ノ時期ヲ定メサリシトキハ借主ハ契約ニ定メタル目的ニ從ヒ使用及ヒ収益ヲ終ハリタル時ニ於テ返還ヲ為スコトヲ要ス但其以前ト雖モ使用及ヒ収益ヲ為スニ足ルヘキ期間ヲ経過シタルトキハ貸主ハ直チニ返還ヲ請求スルコトヲ得
當事者カ返還ノ時期又ハ使用及ヒ収益ノ目的ヲ定メサリシトキハ貸主ハ何時ニテモ返還ヲ請求スルコトヲ得

第五百九十八條 借主ハ借用物ヲ原状ニ復シテ之ニ附屬セシメタル物ヲ収去スルコトヲ得

第五百九十九條 使用貸借ハ借主ノ死亡ニ因リテ其効力ヲ失フ
第六百條 契約ノ本旨ニ反スル使用又ハ収益ニ因リテ生シタル損害ノ賠償及ヒ借主カ出タシタル費用ノ償還ハ貸主カ返還ヲ受ケタル時ヨリ一年内ニ之ヲ請求スルコトヲ要ス
 
第七節 賃貸借
第一款 總則
第六百一條 賃貸借ハ 當事者ノ一方カ相手方ニ或物ノ使用及ヒ収益ヲ為サシムルコトヲ約シ相手方カ之ニ其賃金ヲ拂フコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百二條 處分ノ能力又ハ權限ヲ有セサル者カ賃貸借ヲ為ス場合ニ於テハ其賃貸借ハ左ノ期間ヲ超ユルコトヲ得ス
一 樹木ノ栽植又ハ伐採ヲ目的トスル山林ノ賃貸借ハ十年
二 其他ノ土地ノ賃貸借ハ五年
三 建物ノ賃貸借ハ三年
四 動産ノ賃貸借六个月
第六百三條 前條ノ期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得但其期間滿了前土地ニ付テハ一年内建物ニ付テハ三个月内動産ニ付テハ一个月内ニ其更新ヲ為スコトヲ要ス
第六百四條 賃貸借ノ存續期間ハ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス若シコレヨリ長キ期間ヲ以テ賃貸借ヲ為シタルトキハ其期間ハ之ヲ二十年ニ短縮ス
前項ノ期間ハ之ヲ更新スルコトヲ得但更新ノ時ヨリ二十年ヲ超ユルコトヲ得ス
 
第二款 賃貸借ノ効力
第六百五條 不動産ノ賃貸借ハ之ヲ登記シタルトキハ爾後其不動産ニ付キ物權ヲ取得シタル者ニ對シテモ其効力ヲ生ス
第六百六條 賃貸人ハ賃貸物ノ使用及ヒ収益ニ必要ナル修繕ヲ為ス義務ヲ負フ
賃貸人カ賃貸物ノ保存ニ必要ナル行為ヲ為サント欲スルトキハ賃借人ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第六百七條 賃貸人カ賃借人ノ意思ニ反シテ保存行為ヲ為サント欲スル場合ニ於テ之カ為メ賃借人カ賃借ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百八條 賃借人カ賃借物ニ付キ賃貸人ノ負擔ニ屬スル必要費ヲ出タシタルトキハ賃貸人ニ對シテ直チニ其償還ヲ請求スルコトヲ得
賃借人カ有益費ヲ出タシタルトキハ賃貸人ハ賃貸借終了ノ時ニ於テ第百九十六條第二項ノ規定ニ從ヒ其償還ヲ為スコトヲ要ス但裁判所ハ賃貸人ノ請求ニ因リ之ニ相當ノ期限ヲ許與スルコトヲ得
第六百九條 収益ヲ目的トスル土地ノ賃借人カ不可抗力ニ因リ借賃ヨリ少キ収益ヲ得タルトキハ其収益ノ額ニ至ルマテ借賃ノ減額ヲ請求スルコトヲ得但宅地ノ賃貸借ニ付テハ此限ニ在ラス
第六百十條 前條ノ場合ニ於テ賃借人カ不可抗力ニ因リ引續キ二年以上借賃ヨリ少キ収益ヲ得タルトキハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百十一條 賃借物ノ一部カ賃借人ノ過失ニ因ラスシテ滅失シタルトキハ賃借人ハ其滅失シタル部分ノ割合ニ應シテ借賃ノ減額ヲ請求スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ殘存スル部分ノミニテハ賃借人カ賃借ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ賃借人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百十二條 賃借人ハ賃貸人ノ承諾アルニ非サレハ其權利ヲ譲渡シ又ハ賃借物ヲ轉貸スルコトヲ得ス
賃借人カ前項ノ規定ニ反シ第三者ヲシテ賃借物ノ使用又ハ収益ヲ為サシメタルトキハ 賃貸人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百十三條 賃借人カ適法ニ賃借物ヲ轉貸シタルトキハ轉借人ハ賃貸人ニ對シテ直接ニ義務ヲ負フ此場合ニ於テハ借賃ノ前拂ヲ以テ賃貸人ニ對抗スルコトヲ得ス
前項ノ規定ハ賃貸人カ賃借人ニ對シテ其權利ヲ行使スルコトヲ妨ケス
第六百十四條 借賃ハ動産、建物及ヒ宅地ニ付テハ毎月末ニ其他ノ土地ニ付テハ毎年末ニ之ヲ拂フコトヲ要ス但収穫季節アルモノニ付テハ其季節後遅滯ナク之ヲ拂フコトヲ要ス
第六百十五條 賃借物カ修繕ヲ要シ又ハ賃借物ニ付キ權利ヲ主張スル者アルトキハ賃借人ハ遅滯ナク之ヲ賃貸人ニ通知スルコトヲ要ス但賃貸人カ既ニ之ヲ知レルトキハ此限ニ在ラス
第六百十六條 第五百九十四條第一項、第五百九十七條第一項及ヒ第五百九十八條ノ規定ハ賃貸借ニ之ヲ準用ス
 
第三款 賃貸借ノ終了
第六百十七條 當事者カ賃貸借ノ期間ヲ定メサリシトキハ各當事者ハ何時ニテモ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ賃貸借ハ解約申入ノ後左ノ期間ヲ経過シタルニ因リテ終了ス
一 土地ニ付テハ一年
二 建物ニ付テハ三个月
三 貸席及ヒ動産ニ付テハ一日
収穫季節アル土地ノ賃貸借ニ付テハ其季節後次ノ耕作ニ著手スル前ニ解約ノ申入ヲ為スコトヲ要ス
第六百十八條 當事者カ賃貸借ノ期間ヲ定メタルモ其一方又ハ各自カ其期間内ニ解約ヲ為ス權利ヲ留保シタルトキハ前條ノ規定ヲ準用ス
第六百十九條 賃貸借ノ期間カ滿了ノ後賃借人カ賃借物ノ使用又ハ収益ヲ繼續スル場合ニ於テ賃貸人カ之ヲ知リテ異議ヲ述ヘサルトキハ前賃貸借ト同一ノ條件ヲ以テ更ニ賃貸借ヲ為シタルモノト推定ス但各當事者ハ第六百十七條ノ規定ニ依リテ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得
前賃貸借ニ付キ當事者カ擔保ヲ供シタルトキハ其擔保ハ期間ノ滿了ニ因リテ消滅ス但 敷金ハ此限ニ在ラス
第六百二十條 賃貸借ヲ解除シタル場合ニ於テハ其解除ハ将來ニ向テノミ其効力ヲ生ス但 當事者ノ一方ニ過失アリタルトキハ之ニ對スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
第六百二十一條 賃借人カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ賃貸借ニ期間ノ定アルトキト雖モ賃貸人又ハ破産管財人ハ第六百十七條ノ規定ニ依リテ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ各當事者ハ相手方ニ對シ解約ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ス
第六百二十二條 第六百條ノ規定ハ賃貸借ニ之ヲ準用ス
 
第八節 雇傭
 
第六百二十三條 雇傭ハ當事者ノ一方カ相手方ニ對シテ勞務ニ服スルコトヲ約シ相手方カ之ニ其報酬ヲ與フルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百二十四條 勞務者ハ其約シタル勞務ヲ終ハリタル後ニ非サレハ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス
期間ヲ以テ定メタル報酬ハ其期間ノ経過シタル後之ヲ請求スルコトヲ得
第六百二十五條 使用者ハ勞務者ノ承諾アルニ非サレハ其權利ヲ第三者ニ譲渡スコトヲ得ス
勞務者ハ使用者ノ承諾アルニ非サレハ第三者ヲシテ自己ニ代ハリテ勞務ニ服セシムルコトヲ得ス
勞務者カ前項ノ規定ニ反シ第三者ヲシテ勞務ニ服セシメタルトキハ使用者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百二十六條 雇傭ノ期間カ五年ヲ超過シ又ハ當事者ノ一方若クハ第三者ノ終身間繼續スヘキトキハ當事者ノ一方ハ五年ヲ経過シタル後何時ニテモ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得 但此期間ハ商工業見習者ノ雇傭ニ付テハ之ヲ十年トス
前項ノ規定ニ依リテ契約ノ解除ヲ為サント欲スルトキハ三个月前ニ其豫告ヲ為スコトヲ要ス
第六百二十七條 當事者カ雇傭ノ期間ヲ定メサリシトキハ各當事者ハ何時ニテモ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ雇傭ハ解約申入ノ後二週間ヲ経過シタルニ因リテ終了スル
期間ヲ以テ報酬ヲ定メタル場合ニ於テハ解約ノ申入ハ次期以後ニ對シテ之ヲ為スコトヲ得但其申入ハ當期ノ前半ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス
六个月以上ノ期間ヲ以テ報酬ヲ定メタル場合ニ於テハ前項ノ申入ハ三个月前ニ之ヲ為スコトヲ要ス
第六百二十八條 當事者カ雇傭ノ期間ヲ定メタルトキト雖モ已ムコトヲ得サル事由アルトキハ各當事者ハ直チニ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但其事由カ當事者ノ一方ノ過失ニ因リテ生シタルトキハ相手方ニ對シテ損害賠償ノ責ニ任ス
第六百二十九條 雇傭ノ期間滿了ノ後勞務者カ引續キ其勞務ニ服スル場合ニ於テ使用者カ之ヲ知リテ異議ヲ述ヘサルトキハ前雇傭ト同一ノ條件ヲ以テ更ニ雇傭ヲ為シタルモノト推定ス但各當事者ハ第六百二十七條ノ規定ニ依リテ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得
前雇傭ニ付キ當事者カ擔保ヲ供シタルトキハ其擔保ハ期間ノ滿了ニ因リテ消滅ス但身元保證金ハ此限ニ在ラス
第六百三十條 第六百二十條ノ規定ハ雇傭ニ之ヲ準用ス
第六百三十一條 使用者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ雇傭ニ期間ノ定アルトキト雖モ 勞務者又ハ破産管財人ハ第六百二十七條ノ規定ニ依リテ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ各當事者ハ相手方ニ對シ解約ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ス
 
第九節 請負
 
第六百三十二條 請負ハ當事者ノ一方カ或仕事ヲ完成スルコトヲ約シ相手方カ其仕事ノ結果ニ對シテ之ニ報酬ヲ與フルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百三十三條 報酬ハ仕事ノ目的物ノ引渡ト同時ニ之ヲ與フルコトヲ要ス但物ノ引渡ヲ要セサルトキハ第六百二十四條第一項ノ規定ヲ準用ス
第六百三十四條 仕事ノ目的物ニ瑕疵アルトキハ注文者ハ請負人ニ對シ相當ノ期限ヲ定メテ其瑕疵ノ修補ヲ請求スルコトヲ得但瑕疵カ重要ナラサル場合ニ於テ其修補カ過分ノ費用ヲ要為スルトキハ此限ニ在ラス
注文者ハ瑕疵ノ修補ニ代ヘ又ハ其修補ト共ニ損害賠償ノ請求ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ第五百三十三條ノ規定ヲ準用ス
第六百三十五條 仕事ノ目的物ニ瑕疵アリテ之カ為メニ契約ヲ為シタル目的ヲ達スルコト能ハサルトキハ注文者ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但建物其他土地ノ工作物ニ付テハ此限ニ在ラス
第六百三十六條 前二條ノ規定ハ仕事ノ目的物ノ瑕疵カ注文者ヨリ供シタル材料ノ性質又ハ注文者ノ與ヘタル指圖ニ因リテ生シタルトキハ之ヲ適用セス但請負人カ其材料又ハ指圖ノ不適當ナルコトヲ知リテ之ヲ告ケサリシトキハ此限ニ在ラス
第六百三十七條 前三條ニ定メタル瑕疵修補又ハ損害賠償ノ請求及ヒ契約ノ解除ハ仕事ノ目的物ヲ引キ渡為シタル時ヨリ一年内ニ之ヲ為スコトヲ要ス
仕事ノ目的物ノ引渡ヲ要セサル場合ニ於テハ前項ノ期間ハ仕事終了ノ時ヨリ之ヲ起算ス
第六百三十八條 土地ノ工作物ノ請負人ハ其工作物又ハ地盤ノ瑕疵ニ付テハ引渡シノ後五年間其擔保ノ責ニ任ス但此期間ハ石造、土造、煉瓦造又ハ金屬造ノ工作物ニ付テハ之ヲ十年トス
工作物カ前項ノ瑕疵ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ注文者ハ其滅失又ハ毀損ノ時ヨリ一年内ニ第六百三十四條ノ權利ヲ行使スルコトヲ要ス
第六百三十九條 第六百三十七條及ヒ前條第一項ノ期間ハ普通ノ時効期間内ニ限リ契約ヲ以テ之ヲ伸長スルコトヲ得
第六百四十條 請負人ハ第六百三十四條及ヒ第六百三十五條ニ定メタル擔保ノ責任ヲ負ハサル旨ヲ特約シタルトキト雖モ其知リテ告ケサリシ事實ニ付テハ其責ヲ免ルルコトヲ得ス
第六百四十一條 請負人カ仕事ヲ完成セサル間ハ注文者ハ何時ニテモ損害ヲ賠償シテ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得
第六百四十二條 注文者カ破産ノ宣告ヲ受ケタルトキハ請負人又ハ破産管財人ハ契約ノ解除ヲ為スコトヲ得此場合ニ於テハ請負人ハ其既ニ為シタル仕事ノ報酬及ヒ其報酬中ニ包含セサル費用ニ付キ財團ノ配當ニ加入スルコトヲ得前項ノ場合ニ於テハ各當事者ハ相手方ニ對シ解約ニ因リテ生シタル損害ノ賠償ヲ請求スルコトヲ得ス
 
第十節 委任
第六百四十三條 委任ハ當事者ノ一方カ法律行為ヲ為スコトヲ相手方ニ委託シ相手方カ之ヲ承諾スルコトニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百四十四條 受任者ハ委任ノ本旨ニ從ヒ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ委任事務ヲ處理スル義務ヲ負フ
第六百四十五條 受任者ハ委任者ノ請求アルトキハ何時ニテモ委任事務處理ノ状況ヲ報告シ委任終了ノ後ハ遅滯ナク其顛末ヲ報告スルコトヲ要ス
第六百四十六條 受任者ハ委任事務ヲ處理スルニ當リテ受取リタル金錢其他ノ物ヲ委任者ニ引渡スコトヲ要ス其収取シタル果實亦同シ
受任者カ委任者ノ為メニ自己ノ名ヲ以テ取得シタル權利ハ之ヲ委任者ニ移轉スルコトヲ要ス
第六百四十七條 受任者カ委任者ニ引渡スヘキ金額又ハ其利益ノ為メニ用ユヘキ金額ヲ自己ノ為メニ消費シタルトキハ其消費シタル日以後ノ利息ヲ拂フコトヲ要ス尚ホ損害アリタルトキハ其賠償ノ責ニ任ス
第六百四十八條 受任者ハ特約アルニ非サレハ委任者ニ對シテ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス
受任者カ報酬ヲ受クヘキ場合ニ於テハ委任履行ノ後ニ非サレハ之ヲ請求スルコトヲ得ス 但期間ヲ以テ報酬ヲ定メタルトキハ第六百二十四條第二項ノ規定ヲ準用ス
委任カ受任者ノ責ニ歸スヘカラサル事由ニ因リ其履行ノ中途ニ於テ終了シタルトキハ 受任者ハ其既ニ為シタル履行ノ割合ニ應シテ報酬ヲ請求スルコトヲ得
第六百四十九條 委任事務ヲ處理スルニ付キ費用ヲ要スルトキハ委任者ハ受任者ノ請求ニ因リ其前拂ヲ為スコトヲシ要ス
第六百五十條 受任者カ委任事務ヲ處理スルニ必要ト認ムヘキ費用ヲ出タシタルトキハ委任者ニ對シテ其費用及ヒ支出ノ日以後ニ於ケル其利息ノ償還ヲ請求スルコトヲ得
受任者カ委任事務ヲ處理スルニ必要ト認ムヘキ債務ヲ負擔シタルトキハ委任者ヲシテ自己ニ代ハリテ其辨濟ヲ為サシメ又其債務カ辨濟期ニ在ラサルトキハ相當ノ擔保ヲ供セシムルコトヲ得
受任者カ委任事務ヲ處理スル為メ自己ニ過失ナクシテ損害ヲ受ケタルトキハ委任者ニ對シテ其賠償ヲ請求スルコトヲ得
第六百五十一條 委任ハ各當事者ニ於テ何時ニテモ之ヲ解除スルコトヲ得
當事者ノ一方カ相手方ノ為メニ不利ナル時期ニ於テ委任ヲ解除シタルトキハ其損害ヲ賠償スルコトヲ要ス但已ムコトヲ得サル事由アリタルトキハ此限ニ在ラス
第六百五十二條 第六百二十條ノ規定ハ委任ニ之ヲ準用ス
第六百五十三條 委任ハ委任者又ハ受任者ノ死亡又ハ破産ニヨリテ終了ス受任者カ禁治産ノ宣告ヲ受ケタルトキ亦同シ
第六百五十四條 委任終了ノ場合ニ於テ急迫ノ事情アルトキハ受任者又、其相續人又ハ法定代理人ハ委任者、其相續人又ハ法定代理人カ委任事務ヲ處理スルコトヲ得ルニ至ルマテ必要ナル處分ヲ為スコトヲ要ス
第六百五十五條 委任終了ノ事由ハ其委任者ニ出テタルト受任者ニ出テタルトヲ問ハス之ヲ相手方ニ通知シ又ハ相手方カ之ヲ知リタルトキニ非サレハ之ヲ以テ其相手方ニ對抗スルコトヲ得ス
第六百五十六條 本節ノ規定ハ法律行為ニ非サル事務ノ委託ニ之ヲ準用ス
 
第十一節 寄託
第六百五十七條 寄託ハ當事者ノ一方カ相手方ノ為メニ保管ヲ為スコトヲ約シテ或物ヲ受取ルニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百五十八條 受寄者ハ寄託者ノ承諾アルニ非サレハ受寄物ヲ使用シ又ハ第三者ヲシテ之ヲ保管セシムルコトヲ得ス
受寄者カ第三者ヲシテ受寄物ヲ保管セシムルコトヲ得ル場合ニ於テハ第百五條及ヒ第百七條第二項ノ規定ヲ準用ス
第六百五十九條 無報酬ニテ寄託ヲ受ケタル者ハ受寄物ノ保管ニ付キ自己ノ財産ニ於ケルト同一ノ注意ヲ為ス責ニ任ス
第六百六十條 受寄物ニ付キ權利ヲ主張スル第三者カ受寄者ニ對シテ訴ヲ提起シ又ハ差押 ヲ為シタルトキハ受寄者ハ遅滯ナク其事實ヲ寄託者ニ通知スルコトヲ要ス
第六百六十一條 寄託者ハ受寄物ノ性質又ハ瑕疵ヨリ生シタル損害ヲ受寄者ニ賠償スルコトヲ要ス但寄託者カ過失ナクシテ其性質若クハ瑕疵ヲ知ラサリシトキ又ハ受寄者カ之ヲ知リタルトキハ此限ニ在ラス
第六百六十二條 當事者カ寄託物返還ノ時期ヲ定メタルトキト雖モ寄託者ハ何時ニテモ其返還ヲ請求スルコトヲ得
第六百六十三條 當事者カ寄託物返還ノ時期ヲ定メサリシトキハ受寄者ハ何時ニテモ其返還ヲ為スコトヲ得
返還時期ノ定アルトキハ受寄者ハ已ムコトヲ得サル事由アルニ非サレハ其期限前ニ返還ヲ為スコトヲ得ス
第六百六十四條 寄託物ノ返還ハ其保管ヲ為スヘキ場所ニ於テ之ヲ為スコトヲ要ス但受寄者カ正當ノ事由ニ因リテ其物ヲ轉置シタルトキハ其現在ノ場所ニ於テ之ヲ返還スルコトヲ得
第六百六十五條 第六百四十六條乃至第六百四十九條及ヒ第六百五十條第一項、第二項ノ規定ハ寄託ニ之ヲ準用ス
第六百六十六條 受寄者カ契約ニ依リ受寄物ヲ消費スルコトヲ得ル場合ニ於テハ消費貸借ニ關スル規定ヲ準用ス但契約ニ返還ノ時期ヲ定メサリシトキハ寄託者ハ何時ニテモ返還ヲ請求スルコトヲ得
 
第十二節 組合
 
第六百六十七條 組合契約ハ各當事者カ出資ヲ為シテ共同ノ事業ヲ營ムコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
出資ハ勞務ヲ以テ其目的ト為スコトヲ得
第六百六十八條 各組合員ノ出資其他ノ組合財産ハ總組合員ノ共有ニ屬ス
第六百六十九條 金錢ヲ以テ出資ノ目的ト為シタル場合ニ於テ組合員カ其出資ヲ為スコトヲ怠リタルトキハ其利息ヲ拂フ外尚ホ損害ノ賠償ヲ為スコトヲ要ス
第六百七十條 組合ノ業務執行ハ組合員ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
組合契約ヲ以テ業務ノ執行ヲ委任シタル者數人アルトキハ其過半數ヲ以テ決ス
組合ノ常務ハ前二項ノ規定ニ拘ハラス各組合員又ハ各業務執行者之ヲ専行スルコトヲ得 但其結了前ニ他ノ組合員又ハ業務執行者カ異議ヲ述ヘタルトキハ此限ニ在ラス
第六百七十一條 組合ノ業務ヲ執行スル組合員ニハ第六百四十四條乃至第六百五十條ノ規定ヲ準用ス
第六百七十二條 組合契約ヲ以テ一人又ハ數人ノ組合員ニ業務ノ執行ヲ委任シタルトキハ 其組合員ハ正當ノ事由アルニ非サレハ辭任ヲナスコトヲ得ス又解任セラルルコトナシ
正當ノ事由ニ因リテ解任ヲ為スニハ他ノ組合員ノ一致アルコトヲム要ス
第六百七十三條 各組合員ハ組合ノ業務ヲ執行スル權利ヲ有セサルトキト雖モ其業務及ヒ組合財産ノ状況ヲ検査スルコトヲ得
第六百七十四條 當事者カ損益分配ノ割合ヲ定メサリシトキハ其割合ハ各組合員ノ出資ノ價額ニ應シテ之ヲ定ム
利益又ハ損失ニ付テノミ分配ノ割合ヲ定メタルトキハ其割合ハ利益及ヒ損失ニ共通ナルモノト推定ス
第六百七十五條 組合ノ債權者ハ其債權ノ發生ノ當時組合員ノ損失分擔ノ割合ヲ知ラサリシトキハ各組合員ニ對シ均一部分ニ付キ其權利ヲ行フコトヲ得
第六百七十六條 組合員カ組合財産ニ付キ其持分ヲ處分シタルトキハ其處分ハ之ヲ以テ組合及ヒ組合ト取引ヲ為シタル第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
組合員ハ清算前ニ組合財産ノ分割ヲ求ムルコトヲ得ス
第六百七十七條 組合ノ債務者ハ其債務ト組合員ニ對スル債權トヲ相殺スルコトヲ得ス
第六百七十八條 組合契約ヲ以テ組合ノ存續期間ヲ定メサリシトキ又ハ或組合員ノ終身間組合ノ存續スヘキコトヲ定メタルトキハ各組合員ハ何時ニテモ脱退ヲ為スコトヲ得但已ムコトヲ得サル事由アル場合ヲ除ク外組合ノ為メ不利ナル時期ニ於テ之ヲ為スコトヲ得ス
組合ノ存續期間ヲ定メタルトキト雖モ各組合員ハ已ムコトヲ得サル事由アルトキハ脱退ヲ為スコトヲ得
第六百七十九條 前條ニ掲ケタル場合ノ外組合員ハ左ノ事由ニ因リテ脱退ス
一 死亡
二 破産
三 禁治産
四 除名
第六百八十條 組合員ノ除名ハ正當ノ事由アル場合ニ限リ他ノ組合員ノ一致ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得但除名シタル組合員ニ其旨ヲ通知スルニ非サレハ之ヲ以テ其組合員ニ對抗スルコトヲ得ス
第六百八十一條 脱退シタル組合員ト他ノ組合員トノ間ノ計算ハ脱退ノ當時ニ於ケル組合財産ノ状況ニ從ヒ之ヲ為スコトヲ要ス
脱退シタル組合員ノ持分ハ其出資ノ種類如何ヲ問ハス金錢ヲ以テ之ヲ拂戻スコトヲ得
脱退ノ當時ニ於テ未タ結了セサル事項ニ付テハ其結了後ニ計算ヲ為スコトヲ得
第六百八十二條 組合ハ其目的タル事業ノ成功又ハ其成功ノ不能ニ因リテ解散ス
第六百八十三條 已ムコトヲ得サル事由アリタルトキハ各組合員ハ組合ノ解散ヲ請求スルコトヲ得
第六百八十四條 第六百二十條ノ規定ハ組合契約ニ之ヲ準用ス
第六百八十五條 組合カ解散シタルトキハ清算ハ總組合員共同ニテ又ハ其選任シタル者ニ於テ之ヲ為ス
清算人ノ選任ハ總組合員ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス
第六百八十六條 清算人數人アルトキハ第六百七十條ノ規定ヲ準用ス
第六百八十七條 組合契約ヲ以テ組合員中ヨリ清算人ヲ選任シタルトキハ第六百七十二條ノ規定ヲ準用ス
第六百八十八條 清算人ノ職務及ヒ權限ニ付テハ第七十八條ノ規定ヲ準用ス殘餘財産ハ各組合員ノ出資ノ價額ニ應シテ之ヲ分割ス
 
第十三節 終身定期金
 
第六百八十九條 終身定期金契約ハ當事者ノ一方カ自己、相手方又ハ第三者ノ死亡ニ至ルマテ定期ニ金錢其他ノ物ヲ相手方又ハ第三者ニ給付スルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百九十條 終身定期金ハ日割リヲ以テ之ヲ計算ス
第六百九十一條 終身定期金債務者カ定期金ノ元本ヲ受ケタル場合ニ於テ其定期金ノ給付ヲ怠リ又ハ其他ノ義務ヲ履行セサルトキハ相手方ハ元本ノ返還ヲ請求スルコトヲ得但既ニ受取リタル定期金ノ中ヨリ其元本ノ利息ヲ控除シタル殘額ヲ債務者ニ返還スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
第六百九十二條 第五百三十三條ノ規定ハ前條ノ場合ニ之ヲ準用ス
第六百九十三條 死亡カ定期金債務者ノ責ニ歸スヘキ事由ニ因リテ生シタルトキハ裁判所ハ債權者又ハ其相續人ノ請求ニ因リ相當ノ期間債權ノ存續スルコトヲ宣告スルコトヲ得
前項ノ規定ハ第六百九十一條ニ定メタル權利ノ行使ヲ妨ケス
第六百九十四條 本節ノ規定ハ終身定期金ノ遺贈ニ之ヲ準用ス
 
第十四節 和解
 
第六百九十五條 和解ハ當事者カ互ニ譲歩ヲ為シテ其間ニ存スル爭ヲ止ムルコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス
第六百九十六條 當事者ノ一方カ和解ニ因リテ爭ノ目的タル權利ヲ有スルモノト認メラレ 又ハ相手方カ之ヲ有セサルモノト認メラレタル場合ニ於テ其者カ從來其權利ヲ有セサリシ確證又ハ相手方カ之ヲ有セシ確證出テタルトキハ其權利ハ和解ニ因リテ其者ニ移轉シ又ハ消滅シタルモノトス
 
第三章 事務管理
 
第六百九十七條 義務ナクシテ他人ノ為メニ事務ノ管理ヲ始メタル者ハ其事務ノ性質ニ從ヒ最モ本人ノ利益ニ適合スヘキ方法ニ依リテ其管理ヲ為スコトヲ要ス
管理者カ本人ノ意思ヲ知リタルトキ又ハ之ヲ推知スルコトヲ得ヘキトキハ其意思ニ從ヒテ管理ヲ為スコトヲ要ス
第六百九十八條 管理者カ本人ノ身體、名譽又ハ財産ニ對スル急迫ノ危害ヲ免レシムル為メニ其事務ノ管理ヲ為シタルトキハ悪意又ハ重大ナル過失アルニ非サレハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス
第六百九十九條 管理者ハ其管理ヲ始メタルコトヲ遅滯ナク本人ニ通知スルコトヲ要ス 但本人カ既ニ之ヲ知レルトキハ此限ニ在ラス
第七百條 管理者ハ本人、其相續人又ハ法定代理人カ管理ヲ為スコトヲ得ルニ至ルマテ其管理ヲ繼續スルコトヲ要ス但其管理ノ繼續カ本人ノ意思ニ反シ又ハ本人ノ為メニ不利ナルコト明カナルトキハ此限ニ在ラス
第七百一條 第六百四十五條乃至第六百四十七條ノ規定ハ事務管理ニ之ヲ準用ス
第七百二條 管理者カ本人ノ為メニ有益ナル費用ヲ出タシタルトキハ本人ニ對シテ其償還ヲ請求スルコトヲ得
管理者カ本人ノ為メニ有益ナル債務ヲ負擔シタルトキハ第六百五十條第二項ノ規定ヲ準用ス
管理者カ本人ノ意思ニ反シテ管理ヲ為シタルトキハ本人カ現ニ利益ヲ受クル限度ニ於テノミ前二項ノ規定ヲ適用ス
 
第四章 不當利得
 
第七百三條 法律上ノ原因ナクシテ他人ノ財産又ハ勞務ニ因リ利益ヲ受ケ之カ為メニ他人ニ損失ヲ及ホシタル者ハ其利益ノ存スル限度ニ於テ之ヲ返還スル義務ヲ負フ
第七百四條 悪意ノ受益者ハ其受ケタル利益ニ利息ヲ附シテ之ヲ返還スルコトヲ要ス尚ホ 損害アリタルトキハ其賠償ノ責ニ任ス
第七百五條 債務ノ辨濟トシテ給付ヲ為シタル者カ其當時債務ノ存在セサルコトヲ知リタルトキハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス
第七百六條 債務者カ辨濟期ニ在ラサル債務ノ辨濟トシテ給付ヲ為シタルトキハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス但債務者カ錯誤ニ因リテ其給付ヲ為シタルトキハ 債權者ハ之ニ因リテ得タル利益ヲ返還スルコトヲ要ス
第七百七條 債務者ニ非サル者カ錯誤ニ因リテ債務ノ辨濟ヲ為シタル場合ニ於テ債權者カ善意ニテ證書ヲ毀滅シ、擔保ヲ抛棄シ又ハ時効ニ因リテ其債權ヲ失ヒタルトキハ辨濟者ハ返還ノ請求ヲ為スコトヲ得ス
前項ノ規定ハ辨濟者ヨリ債務者ニ對スル求償權ノ行使ヲ妨ケス
第七百八條 不法ノ原因ノ為メ給付ヲ為シタル者ハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス但不法ノ原因カ受益者ニ付テノミ存シタルトキハ此限ニ在ラス
 
第五章 不法行為
 
第七百九條 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ權利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス
第七百十條 他人ノ身體、自由又ハ名譽ヲ害シタル場合ト財産權ヲ害為シタル場合トヲ問ハス前條ノ規定ニ依リテ損害賠償ノ責ニ任スル者ハ財産以外ノ損害ニ對シテモ其賠償ヲ為スコトヲ要ス
第七百十一條 他人ノ生命ヲ害シタル者ハ被害者ノ父母、配偶者及ヒ子ニ對シテハ其財産權ヲ害サレサリシ場合ニ於テモ損害ノ賠償ヲ為スコトヲ要ス
第七百十二條 未成年者カ他人ニ損害ヲ加ヘタル場合ニ於テ其行為ノ責任ヲ辨識スルニ足ルヘキ知能ヲ具ヘサリシトキハ其行為ニ付キ賠償ノ責ニ任セス
第七百十三條 心神喪失ノ間ニ他人ニ損害ヲ加ヘタル者ハ賠償ノ責ニ任セス但故意又ハ過失ニ因リテ一時ノ心神喪失ヲ招キタルトキハ此限ニ在ラス
第七百十四條 前二條ノ規定ニ依リ無能力者ニ責任ナキ場合ニ於テ之ヲ監督スヘキ法定ノ義務アル者ハ其無能力者カ第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但監督義務者カ其義務ヲ怠ラサリシトキハ此限ニ在ラス
監督義務者ニ代ハリテ無能力者ヲ監督スル者モ亦前項ノ責ニ任ス
第七百十五條 或事業ノ為メニ他人ヲ使用スル者ハ被用者カ其事業ノ執行ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但使用者カ被用者ノ選任及ヒ其事業ノ監督ニ付キ相當ノ注意ヲ為シタルトキ又ハ相當ノ注意ヲ為スモ損害カ生スヘカリシトキハ此限ニ在ラス使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者モ亦前項ノ責ニ任ス
前二項ノ規定ハ使用者又ハ監督者ヨリ被用者ニ對スル求償權ノ行使ヲ妨ケス
第七百十六條 注文者ハ請負人カ其仕事ニ付キ第三者ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス但注文又ハ指圖ニ付キ注文者ニ過失アリタルトキハ此限ニ在ラス
第七百十七條 土地ノ工作物ノ設置又ハ保存ニ瑕疵アルニ因リテ他人ニ損害ヲ生シタルトキハ其工作物ノ占有者ハ被害者ニ對シテ損害賠償ノ責ニ任ス但占有者カ損害ノ發生ヲ防止スルニ必要ナル注意ヲ為シタルトキハ其損害ハ所有者之レヲ賠償スルコトヲ要ス
前項ノ規定ハ竹木ノ栽植又ハ支持ニ瑕疵アル場合ニ之ヲ準用ス
前二項ノ場合ニ於テ損害ノ原因ニ付キ其責ニ任スヘキ者アルトキハ占有者又ハ所有者ハ 之レニ對シテ求償權ヲ行使スルコトヲ得
第七百十八條 動物ノ占有者ハ其動物カ他人ニ加ヘタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス但動物ノ種類及ヒ性質ニ從ヒ相當ノ注意ヲ以テ其保管ヲ為シタルトキハ此限ニ在ラス
占有者ニ代ハリテ動物ヲ保管スル者モ亦前項ノ責ニ任ス
第七百十九條 數人カ共同ノ不法行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキハ各自連帯ニテ其賠償ノ責ニ任ス共同行為者中ノ孰カ其損害ヲ加ヘタルカヲ知ルコト能ハサルトキ亦同シ
教唆者及ヒ幇助者ハ之ヲ共同行為者ト看做ス
第七百二十條 他人ノ不法行為ニ對シ自己又ハ第三者ノ權利ヲ防衛スル為メ已ムコトヲ得スシテ加害行為ヲ為シタル者ハ損害賠償ノ責ニ任セス但被害者ヨリ不法行為ヲ為シタル者ニ對スル損害賠償ノ請求ヲ妨ケス
前項ノ規定ハ他人ノ物ヨリ生シタル急迫ノ危難ヲ避クル為メ其物ヲ毀損シタル場合ニ之ヲ準用ス 

第七百二十一條 胎児ハ損害賠償ノ請求權ニ付テハ既ニ生マレタルモノト看做ス

第七百二十二條 第四百十七條ノ規定ハ不法行為ニ因ル損害ノ賠償ニ之ヲ準用ス
被害者ニ過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ額ヲ定ムルニ付キ之ヲ斟酌スルコトヲ得
第七百二十三條 他人ノ名譽ヲ毀損シタル者ニ對シテハ裁判所ハ被害者ノ請求ニ因リ損害賠償ニ代ヘ又ハ損害賠償ト共ニ名譽ヲ囘復スルニ適當ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第七百二十四條 不法行為ニ因ル損害賠償ノ請求權ハ被害者又ハ其法定代理人カ損害及ヒ加害者ヲ知リタル時ヨリ三年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス不法行為ノ時ヨリ二十年ヲ経過シタルトキ亦同シ
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