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講義・特殊講義

◆戦後法制史 2009年度

◇テーマ:

 戦後日本法の形成と展開――価値観をめぐる日本とアメリカの相克――


◇授業の目標:

 太平洋戦争が終わってから、日本はアメリカ軍を中心とする連合国軍によって占領された。連合国総司令部(GHQ)は、間接統治という統治形式のもとで、明治維新以来の日本の法体制の改革を実施した。
 憲法・民法・刑法・訴訟法などの基本的な法律が改革の対象とされた。戦後改革によって現代社会の基本的枠組みが設定されたのである。これらの基本的な法律が改正された経緯やその意味を学習する。


◇科目の位置づけ:

 法学部で学習する基本的な法律は、戦後改革の中で制定された。
 憲法・民法・刑法・訴訟法などの法律の解釈学を学習する上でも、これらの法律の生み出された経緯すなわち歴史を知っておくことによって合理的な学習が進む。したがって学部共通の入門科目の一つである(G1)。
 どのコースを選択する諸君も、必ず履修してほしい科目である。できるだけ1回生で履修してほしい。


◇授業の概要:

 アメリカによる日本占領の原因となった太平洋戦争のあらまし、ポツダム宣言と間接統治という占領のありかたを学習する。その上で、「民主化」を旗印とする「戦後改革」のなかで、明治以来の諸制度がどのようにして大規模に改革されたかをみていく。
 また、戦後改革の過程を、その後の高度経済成長の展開とあわせて、新旧あるいは日米の価値観の葛藤にもふれながら追跡する。具体的には、日本国憲法の制定経過、極東国際軍事裁判、農地改革、労働法と教育基本法の制定、民法と刑法の改正、冤罪事件、高度経済成長と環境・公害問題、表現の自由、国際社会と日本などを学習する。

◇授業目次

 第1回    開講にあたって    授業の内容とスケジュールを説明する。昨年度の授業の進行どを振り返りながら、戦後とはなにか、現代人にとって、戦後がどんな意味をもっているかを考える。

 第2回    敗北と占領    明治維新から太平洋戦争の敗戦にいたる経過と、連合軍総司令部(GHQ)による日本占領がどのように行われたかを検証する。

 第3回    新しい日本のかたち    ポツダム宣言の受諾から始まって憲法制定問題がどのように推移したかをみていく。そのうえで、日本国憲法草案がどのようにして作られていったかを、日本側とGHQ側の動きをみながら検証する。

 第4回    戦争を引き起こしたの誰のせい    太平洋戦争を引き起こした責任は戦前日本の指導者にあるとされ、東条英機など開戦時の政府指導者や軍の責任者が戦犯として訴追された。これらの人々が裁かれた「東京裁判」の経過を辿りながら、この裁判の歴史的意味を検証する。

 第5回    農民に土地が与えられた    戦前日本社会の発展の障害となっていた、半封建的地主制とはなにかを見る。そして、この半封建的地主制が農地改革によってどのように解体され小作人がどのようにして土地を手に入れていったかをみてゆく。さらに、この農地改革がその後の経済成長に与えた意味についても検証する。

 第6回    財閥解体    戦前日本経済の中心にあった財閥制度の内容と、その解体と再編の過程を検証する。また、独占禁止法の制定経緯にも触れていきたい。さらに、新しい財界人の誕生のいきさつについてもみていきたい。

 第7回    労働と教育改革    労働基準法・労働組合法・労働関係調整法(労働三法)と労働組合結成の動向、ならびに、教育基本法などの学校法制の制定経緯と、学校教育の再編過程を検証する。2006年秋に成立した新教育基本法についても言及する。

 第8回    民法の改正    明治31(1898)年に制定された民法第4編(親族)・第5編(相続)は新憲法の精神に則って大幅に改正された。男女平等、妻の地位の向上などなどについて改正の内容をくわしくみていく。

 第9回    刑法の改正    明治40(1907)年に制定された刑法の一部が改正された。皇室罪・不敬罪・姦通罪が廃止された経緯を検証する。また、尊属殺重罰規定がどのようにして廃止されるに至ったかをみていく。

 第10回    冤罪と刑事訴訟法の改正    いわゆる冤罪とはなにかを、重要な冤罪事件の一つをもとに、日本の刑事事件の捜査のありかたや裁判手続の特色あるいは問題点を検証する。また、刑事訴訟法の改正にも触れる。

 第11回    現代の表現の自由    戦前の表現の自由の状況と、戦後の言論・表現の自由化がどのように進められたかをみる。同時に、わいせつ罪に関する裁判をみながら、表現の自由の問題の所在を検証する。あわせて今日の情報化社会における言論・表現の自由について考えたい。

 第12回    環境・公害問題と法    四日市コンビナートの稼働(昭和30年代)とともに発生し、悪化していく四日市公害の経過をみていく。さらに1967(昭和42)年に提訴され1972(昭和47)年に地裁判決があった四日市公害裁判の推移を検証する。そのなかで、戦後復興と高度経済成長がもたらした光と影をみる。

 第13回    国際社会と戦後日本    GHQによる日本占領を国際法の観点から検証し、あわせて、1951年のサンフランシスコ平和条約以後の日本の国際的地位がどのように変化してきたかを検討する。

 第14回    現代社会と裁判    21世紀の重要な裁判を検討して、現代の法律の課題を検討する。

 第15回    まとめ    半年分の授業をまとめながら、戦後改革の全体的評価を検討し、日本の将来を考える。